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性別が変わっても俺は私  作者: 蘭熊才王
第四章 風の章
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13. 初勝利

シルクさんが1度村に寄って、大量の魔石を置いていってくれたり、

ダビがフィルムッシュ王国との交渉状況を伝えに来たり、

色々あったけどまだ肝心の援軍は、村に到着していなかった‥‥‥。


私たち魔術師隊は、増員を重ねて、

村の大半の女性が参加するまでの規模に膨れ上がってきている。


今日も湖の近くで、みなで熱心に訓練をしているのであった。


一方の男衆は、見て見ぬふりをするかのように、

表立っては私たちに関わろうとはしてこない。


「家に帰ると、旦那がチクチク嫌みをたれるから、一喝してやったわよ 笑」

「ねー、何のためにやっているのか分かっているのかしら 笑」

「そうそう、昨日なんてね ―――」


心なしかもしれないけど、

お母さんたちの顔がたくましくなってきている気がする。


皆のために頑張っているという自負は、人を強くする。

あのクォーレ火山の鉱夫のように、皆目をきらきら輝かせていた。

口々に「魔法軍なんて、大したこと無い」って言っていたぐらい 笑



1ヶ月が過ぎた頃だろうか、

秋が大分深まり、もうすぐ冬の到来も見えてきて、

もしかしたら今年は来ないんじゃないかと期待しだした、そんな折だった。


やつらは予兆もなく姿を現した。

最初見たときは何かの間違いかと思ったくらい。



封鎖していた峠に魔法軍がやってきたと言われ、大急ぎで駆け付けたら、

王国軍ですらないどこかの私兵5,6人が門を開けろって怒鳴っていのだった。


魔術師の一人もいない。

これが魔法軍?


『ファイアボール』


空中で火の玉を見せつけたら、

そいつらは慌てて、山道を駆け降りていった。



その後駆け付けた村長さんに、


「なんてことをしてくれたんだっ! 交渉できなくなったじゃないかっ」


とこっぴどく怒られたんだけど、実際私はあんまり反省していない 笑


あんなのと交渉したって何の意味もない。

山賊と変わらないじゃない。

きっと財産だけ奪って、約束を反故にする連中だって。

まあ向こうの話を聞く気もなく、脅して追っ払ったのは事実だけど 笑


家に帰ったら、深刻な顔をしたディストルが待ち構えていて、


「イリィ‥‥‥」

「はー‥‥、次はちゃんと村長が来るまで待つんだよ」


って、怒られてしまった。


「は‥‥い‥‥、ごめんなさい」


しゅん‥‥。


信頼している旦那様にまで言われてしまうと、私も強くは返せないじゃない‥‥‥。

村長もディストルを使ってくるなんて‥‥‥ズルい。

次からは気を付けます‥‥。



そして翌日、彼らは魔術師を連れて数十人規模で戻ってきたのだった。


あら?本当に王国軍だったみたい、てへっ。

まー私は、謝るつもりないけどねっ!


私が峠を見下ろせる山上の監視所にたどり着いたときには、

村長たち男衆が既に現地についていて、

閉鎖した木の柵を挟んで交渉を開始していた。


男衆が鍬とか鎌とか、武器にもならない道具を持って、村長の周りを固めている。

ディストルの姿も見える。


あんな木の柵なんて魔術師からしたら無いも同然。

私からしたら、命知らずの痴れ者に見えてしょうがない。

何かあったらどうするの!?と、胸のざわめきが止まらない。


問題は、ほんと、魔法だけだ‥‥‥。

北の道を除けば2つしか入り口がないこの村は、天然の要塞であった。


南の峠およびその山道は狭くしているから、大量の兵士で一気に攻め込むことが出来ない。

もう一つの入り口であるトンネルの方は、『ウォータージェット』の魔石を使って、

水流で鉄門を閉める仕組みを作っておいた。


きっと今頃、門番をやっている村人が扉を閉じている頃。

子供たちも万が一に備えて、村に残ったお母さん方が避難させている。


でも魔法だけは、魔術師でないと、どうしても防げない。

この世で神の奇跡をのぞけば、魔法はそれほど圧倒的な力。



柵越しの村長さんの交渉の方だけど、

ここからじゃ話の内容まで聞こえない。

ただ、お互いの表情を見る限り、あまりうまくいっていないよう。

村長さんの険しい表情が更に険しくなっていき、

焦っているのかのように、さかんに顔の汗を拭っている。


私は万が一のときに備えて、頻繁に『マジックスキャン』で警戒・威嚇しながら、

『アンチマジック』の発動準備を整えている。

相手も『マジックスキャン』を乱発していて、

緊張の糸がピンッと張り詰めたまま、何かのきっかけで全てが解き放とうと、

場の空気が究極まで張りつめられ、震えているかのようであった。



『それじゃ、交渉にならない!』


悲鳴のような村長さんの声が、峠の山々に鳴り響く。


それを合図かのように敵のリーダーは柵を離れ、

敵の魔術師たちの魔力が魔力回路に注ぎ込まれるを感じる。


『交渉決裂! アイスアローズ放てっ!』

『アイスアローズ』


私の後ろに控えていた我が魔術師隊の女衆が、敵の集団に一斉に氷の矢を放つ!


多数の氷の矢は私の魔力の回旋の力も経て、

100m以上先にいる敵に向かって空中を走っていく。


だけど、敵の魔法の発動の方が早い!


村長さんはまだ柵近くにいて、柵の間から手を伸ばし、

去っていく敵のリーダーにすがりつこうとしていた。


敵の狙いは村長と男衆!


ディストルたちがあぶないっ!

なにしてんのっ!


『アンチマジック×ディフュージョン』


火水風、様々な属性の魔法が、敵の間近にいた男衆たちを襲う!


それは一気に全てをなぎ払おうとするが、

虹色の膜で、消えるように全てが無効化されていくの!


この魔法が発動している領域では、

全ての魔法が全て無効化される!

タキオン教やうちの双子に触発されて、私が自作した魔法イメージ!


うまくいった!

よしっ!


そして遅ればせながら、敵を襲う、

私たちの『アイスアローズ』の雨あられ。


魔術師たちは、自分の魔法が無効化されたことに驚きながらも、

急ぎウォール系の魔法を唱えて、

我々の魔術師隊の『アイスアローズ』を防ごうと試みる。


「ぎゃぁーっ」「あがっ!」


防御が間に合わなかった敵兵たちが、

数多くの矢が突き刺されていく。

氷の矢は突き刺さったところから、ピキピキっと凍り付いていき、

激しい火傷のような痛みとなって、敵の動きを封じる!


たとえ鎧で矢を受けても、その冷たさは防ぐことが出来ない。


敵にとっては極悪な攻撃だ。

敵の兵は氷の矢で凍り付いた鎧を、慌てて外そうとしているのであった。、


この隙を私は無駄にしない。


繰り返しになるが、魔法は先手必勝だ。


「やるなら最後までやりきれ」


我ら魔術師が、最初に魔法学校で学ぶ、基礎中の基礎。


『ラージウェーブ』(津波)


私の魔法に水の妖精が応え、突如柵の向こうに大量の水流がわきだす!


この水は単なる水じゃない。

土や砂を含んでおり、1度巻き込まれると、

窒息死するまで水面に浮き上がってくるのは不可能。

そんな凶悪な水流の塊が、

素早く流れるよう溶岩で固められた道の上を、走り抜けていくのだ!


私の起した津波は、鉄砲水として、あっと言う間に全員を飲み込んでいき、

数百m先の山裾まで引きずり降ろしていったのであった。


敵の姿は、一人も見当たらない。


綺麗に夕陽を反射する、

きらきらと輝く黒い山道が、

高らかに我々の勝利を宣言しているよう!


柵のこちら側では、腰を抜かした村長たち男衆が、

呆然とその光景を見つめている。



『わあああああっ!』


やったあっ! 一人の犠牲者も出さずこの村を守り切ったっ!

皆赤らんだ顔をして、目を潤ませながら、ぴょんぴょん飛び跳ねている 笑


この日、この場にいた魔術師隊の女衆は、

紛れもなく村最大の功労者で、ほとんどの人にとって、

人生で最初に勝ち取った栄誉に違いなかった。


私たちは山上のこの小さな監視所で、

この小さな、でも間違いのない勝利の余韻を、

いつまでも味わっていたのだった。



一方、そんな私たちを、はるか遠く山の中腹の岩に止まった白く巨大な鳥が、見つめているであった。

それは、なにかを見定めるような、なにかをもたらすような、深く澄んだ目をしている。


それが吉兆なのか、凶兆なのか、そのときの私は知るよしもなかった。

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