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性別が変わっても俺は私  作者: 蘭熊才王
第四章 風の章
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11. 思わぬ援軍

その村の総会の話は、村の一大関心事として村中で大きな話題となっている。

祈祷師ミツルさんに頼る人も居たが、ミツルさんの祈祷でもどうなるか先を見通せなかった。


唯一、御告げとしてあったのは、「別れ」の2文字だったとか。

どういう意味なのか‥‥‥。


”どういう意味なんだろうね~ 笑”


絶対楽しんでいる。性悪神様だこと‥‥‥。


”ひっどーーーい 笑”


使えない神様は放っておいて、私たちの希望は、

事情通でこの村にとって、もはやなくてはならない存在となっているシルクさんだ。


シリィーに向かう商隊に手紙を託し、そろそろ数週間経とうとしていた。


多分シリィさんの手に渡っているだろう。

私たちは落ち着かず、

いろんな場所で色んな人と色々話し合いながらも、

結局結論が出ず悶々とするというのを繰り返していた。


何かしなきゃいけない気がするのに、

何をしていいかが分からない。

魔導王国がどう出てくるか見定めるしかない。


その曖昧な不安が、村全体をじわじわと重くしていく。


誰も大声では言わないけれど、皆どこか落ち着かない。

笑っていても、仕事をしていても、胸の奥には同じ影が差しているようだった。


そんな中、一頭の早馬がフード姿の男を載せて、トンネル抜けて村に駆けて来る。


たまたま村の防備を再確認して回っていた私は、偶然その場に出くわす。


「おい、ちょ、ちょっと待て!」


村の入り口の警備をしている村人たちが、槍を構えて止めようとしていた。

ちょっと手が震えているけど 笑


フードの男は馬の手綱を思いっきり引く。


「ヒヒーーンッ!」


馬は両足を高く上げて、いななきながら急停止する!


一方の男は‥‥自分で止めたくせに、

馬が立ち上がったせいで、馬から落ちかけていた。


なぜ? 笑


どうにか馬を落ち着かせ、フードを取った顔は、

見た覚えのある犬顔!


「お、おひさしぶりです。師匠‥‥‥」


ダビだ 笑


「ダビィーー! 久しぶりぃー!!」


私は感動のあまり、

馬から降りて来た? はたまた、落ちてしりもちをついている? 笑

ダビの手を握って、

ぶんぶん上下に振りまわす。


変わらないその顔を見た途端、懐かしさと嬉しさが一気に押し寄せてきた。

もう4年ぶりぐらいになるんじゃないかな~。


「フローラは元気なの!?」


ようやく立ち上がって、

頭を左右に振りながら答えるダビ。


「おかげさまで。ディケイで街の大司教をやってます~」


大司教と言えば、タキオン教のナンバー3。

とんでもない大出世だ。


女性で、更に赤ちゃんまでいるのに、

そんな地位にいる神職者なんて聞いたことがない。


うん?

神様って子供嫌いなんだっけ?


”んな訳ないじゃーん。人間たちの勝手な解釈ね。神にとって男も女も、処女もヤリチンも関係ないわよ”


神様が処女とかヤリチンとか‥‥。

何となくだけど、言わないで欲しい‥‥‥。


”あんたが言わせたんでしょーが!!”



「じゃあ二人の子は?」

「はいっ! もう4歳で元気に走り回ってます 笑 ダーシュっていう男の子です」


ダビが魔力回路のアクセスを求めてくる。

イメージの共有を受けてその子供の姿を見せてもらうと、これまた二人に似た可愛い男の子 笑

ちょっと目の当たりとかフローラ似かな? 笑


「かわいいね~っ」

「はいっ!!!」


満面の笑みで答えるダビ。

ダビは、まるで変っていなかった。


別れ方が唐突だったので、

ちょっと身構えていたところはあったんだけど、心配することは何もなかった。

子供が出来ても、子犬のようにダビだダビだった 笑


「ガウガウッ! ガウゥゥッ!!!」


その匂いをどこで嗅ぎつけたのか、

村の方からロウが全力で駆けてきて、ダビに思いっきり飛びついていく!


「グハッ」


ロウの突進を受けて、ロウと一緒に思いっきり後ろに転がっていくダビ 笑

フードが泥まみれだ。まるで犬同士のじゃれ合い 笑


フローラとダビとロウと旅していた4年前が、ほんのちょっと前のよう。

なにも変わってないな~。

ダビの背が少し伸びて、完全に大人の男になった以外は 笑


こうしてダビとの感動の再会を終えた私は、

彼をうちの家までダビを招待する。



「はい、二人とも挨拶!」

『こに(ん)にちわー』

「こちらの女の子がエリザベスで、こちらの男の子がエリアスね。リズとエリと呼んでね」

「わー、本物の双子だー! リズ、エリ、こんにちわ~~。可愛いね~!」


ダビは二人の目線に合わせてしゃがみ込み、二人と握手を交わす。

足元ではロウが少し嫉妬しているかのように引っ付いているのが、ちょっと可愛い 笑


「で、こちらが私の旦那さんのディストル」


私は、家で子供の面倒を見ていたディストルを、手で示して紹介する。


「お邪魔してます! お初にお目にかかります。魔術師のダビです」


にっこり笑いながら手を差し出すダビ。


「ようこそわが家へ! 妻からお話は少し伺っています。お弟子さんだったとか」


ディストルも気負うことなく優しい笑みでその手を握り返す。


ふぅー‥‥‥。


な、なんで、私が緊張しないといけないのよ!?


「はい! 師匠には魔法を色々教わりました!」

「押しかけだったけどね 笑 ロウと一緒で 笑」

「師匠も容赦なかったですけどね~っ!」

「そんなことないわよ~ 笑」


懐かしさにダビと軽快なやり取りを続けていたら、

微笑むディストルの眉が、ほんの少し、ピクって動く。


ヤバッ!

ディストルが蚊帳の外。


「ディストルさんも、師匠をお嫁さんにもらえるなんて、この国一番の幸せ者ですねっ!」


ディストルの眉が緩むのを見届ける。


ダビ、ナイスフォロー!


この子は昔から、こういうところが得意だった 笑


緊張の初対面も終え、食卓に座ってもらって、

この村に来た理由を聞く。


妻と小さい子供を残して来るなんて、

挨拶だけをしに来たということはない。


楽しい再会の空気が、少し静かになった。


「シルクさんから、お願いされてしまってー」

「シルクさん!?」


突然、思いもよらぬ名が、ダビの口から出てきて拍子が外れる。


「ダビってシルクさんと交友があったの!?」

「はい。と言っても2年前ぐらいからですけどね~」


なんでも土属性の魔石も完成すべく、土の神殿への道を探していたシルクさんの使いの人が、

白羽の矢を立てたのがダビだったとか。

ダビはシルクさんの使いの人と、

もっと浅い場所で地脈が出ているところを見つけ、土の魔石作りを手伝っているとか。


「じゃあ北の港町ルート作ったのってダビなの!?」

「そうですねー。おかげでディケイとコルトラッシュ砂漠を行ったりきたりですよ」


変わってないなんて、ないじゃないっ!!

立派になってる!


今ではちゃんと、自分の足で世界の中を動いている!

あのダビが!?


少し誇らしくて、少し焦る。


「シルクさんからはなにか聞いているの?」

「いえ色々調整して向かうので、それまでの間、この村のサポートをお願いしたいとのことでした」


あのシルクさんに頼られる存在になっていることに、正直驚きを隠せない。


「男子、三日会わざれば刮目して見よ」ってことわざがあるが、まさにその通りだ。


「それで、どんな状況ですか?」


ダビが前のめりになって真剣な顔で聞いてくる。

ことの重大さは十分分かっているということね。


私は軽く経緯を説明する。

そして、これは勝手な私の見立てだけど、

魔導王国の狙いは、魔石の根絶と思われることも伝える。


ダビは、私の話を一言一句聞き逃さないように聞いたあと、


「村長の話を聞いた方が良さそうですね。師匠、紹介をお願いできますか?」


と言い出したのだった。


ダビはやっぱり昔のダビとは違う‥‥‥。

かなり、やり手になっていた‥‥。



そして私たちは村長の家にやってくるのだった。


ダビは、初対面の挨拶も早々に切り上げ、

状況の聞き取りやシルクさんからの話を、ひとしきり村長さんに話すのだった。


「分かりました」

「私に2つ提案があります」


彼は、自信ありげに村長に話しかける。


「まずフィルムッシュ王国の支援を求めましょう」

「彼らもこの村が魔導王国の手に落ちたら、一気に攻め上がられて困るはず」


村長さんの顔色がサーッと変わっていく。

ダビは気にせず話を続ける。


「そして、西のゴルドアにも協力を求めましょう」

「こちらはシルクさんの方が適任だと思うので、私からシルクさんに連絡しておきます」


もう争うこと前提の話になっていて、

村長さんはあわあわし始めるのであった。


「ど、どうにか回避する方法はないんですか? お金を納めて解決できるのならそれも検討しますので!」


「村長、彼らは手に入れたいと思ったものは全部手に入れようとする強欲の塊のような奴らです」

「今、南の街々が、もともと魔導王国に友好的だった街も含めて、どんどん併合されていっています」


村長さんは真っ青で血の気が完全になくなっている。


「村長、いま手をうたないと、待っているのは蹂躙される未来ですよ!」


少し誇張が入っているけど、概ね間違ってはいない。


あのミディエル王子は、領土拡大で人心を把握しようとしている。


そこに合理性はあまりない。

綺麗に語れば、王国としての威信ということになるが、完全に国内政治の道具にしているだけだ。


シルクさんを裏切って魔石を渡せば、今回の山は乗り越えられるかもしれない。

でもそれは自分たちの武器も失うということ。


タキオン神導国との戦いが終われば、無力になった村はあっという間に駆逐されてしまうだろう。



村長さんはその後も渋っていたが、結局ダビの提案を受け入れ、

ダビはそのまま、北のフイルムッシュ王国に向けて駆けていくのであった。


私たちのただ静かに暮らしたいという気持ちを無視して、

事態はあっという間に大きく動き出そうとしている‥‥‥。

大国の意向なんて、私たちにはどうしようもないじゃない‥‥。

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