正直村の人間ですか?
リアナが通報した夜、江戸川は太宰が用意した食事を前に、彼にものすごい殺気を放っていた。
「どういうつもりなんだ…あれもこれも…」
「申し訳ないとは思っているんですよ?
でも、あなたが苦しむ姿が好きなんです!極限まで苦しみ抜いて、その最後の皮一枚剥がれそうな瞬間が好きなんです…。いつかは大粒の涙を流しながら私に赦しを乞う瞬間を楽しみにしていますよ?」
「このゲス野郎…」
色々な傷が身体中に重なり合い、もはや包帯や絆創膏の無い場所が見当たらない。
少しでも気を緩めば身体中に痛みが走る。
「そうです?容態は。」
「ハハッ、見ての通り最悪だよっ…昨日お前は何をした?」
「ただ、あなたの夕飯に毒を混ぜて、その姿を樋口さんに見せただけですよ。どうやら…熱は下がっているみたいですね。」
「近寄るんじゃねぇ…」
江戸川のおでこに触れる太宰を思いっきり振り払う。
彼自身、もう精神的にも肉体的にも一杯一杯であり、これ以上痛みに耐えられる自信はなかった。
「そういえば、最近嬉しいことがあったんですよ!」
「なんだ?凌辱コースの拷問の次は自慢話か?」
「いいえ。」
「じゃあ何だ…」
「アキラさんにとっては朗報かもしれません…。
多分、早ければ明日、遅くても一週間以内に警察がここを取り囲みます。」
あまりにも真剣な目でこちらに語りかける彼。
またもや揶揄われたかとため息をつく。
「バカみたいなこと言わないでくれ、どうせ四日間拷問するだけなんだろう・・・・。」
「嘘じゃないんですよ。来ますよ、警察」
「なんでだ?」
「そりゃあ、私が言ったんですよ。場所はここだって。」
「お前…いつそんなこと言ったんだ?」
「私の元カノにですよ。言わなかったら運営してるセラピー病院を潰してそのメンバーを全員殺すって脅しをかけたんです。
警察に私たちがいる場所を」
「ど、どうして・・・・。」
「欲しいものを完全に手に入れるため、処分するものを確実に処分するため・・・
ですよ?」
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同時に捜査本部ではリアナの情報を洗っていた。
何かやましいものが見つかると思われたが、
「リアナ=デ・セルバンテス・・・。33歳、スペイン出身、ニューヨークの超豪邸在住。
イエーラ大学主席卒業後、オックスフォードへ留学して経済を学んだ後、アメリカ最大の精神科病院であるニューヨーク・セルバンテス病院を設立後、院長に就任。
現時点で独身・・・・、恋人もいないようね。
大学在籍時は太宰暦、別称レイエとは一番仲が良かったらしいわね。よくバーで一緒に飲んでいたみたい。」
短時間で多くの情報を手に入れることができた。
どうやら、本当に太宰暦とは仲が良かったらしい。
警察がガヤガヤしている隣で、リアナはカフェラテを飲みながら下っ端警官に話しかける。
「いったでしょ〜マジで彼とは仲が良かったわ。
ま、今や恋愛感情もクソもないけど、まさか殺されかけるとはね・・・。
ちょっと仲良くしてやったけど、まさかこんなことになるとは・・・。
病院の連中がいなくなるとこちらも困る、情報の代わりにそれなりの報酬もらってもいいわよね?
あなた方には私たちのこと守ってもらうわよ?ああ、もちろん
・・・・マイヅルのようには行かせないわよ。」
「そう・・・・っすね。
でも、なんでリアナさんは彼と付き合ったんですか?」
「ん〜?わかんねーな。
頭良かったし、大学内では珍しい日本人だったし・・・・・、イケメンだし、普通に優しかったし、
あと・・・・ATMの如く奢ってくれるから・・・・。」
どうやら最初の方は適当にいったらしく、最後の一文はかなり強調していった。
そのときは人を殺して盗んだ金がたんまりあったためか、結構財布が温かったらしい。
「で?言ってあげたけど、みんな突入とかしに行くの?」
「まあ・・・・準備が整ったらすぐに・・・・。」
「ふうん・・・・、なにがしてぇんだろ・・・・。レイエは。」
カフェラテを一気飲みし、スマホを取り出す。
スマホには暦とのやりとりがある。
5年ぐらいブランクがあり、完全に連絡先が下の下になった時に急にやってきたメールだった。
「急でごめんなんだけど、写真送るから俺がいる場所警察に渡して来んない?」
「何?あなたは正直村にでも引っ越ししたの?」
「もし言わなきゃ一週間以内にあんたの首取りに行って、一緒にあんたの病院の医者も天国に送ってやるけどいい?」
「本当あんた変わってないね。」
ああ・・・・、つまんない男になったなお前も。
前は、結構楽しいの会話もできたし、こんなつまんないこと言う奴じゃなかったのになぁ・・・・。
「江戸川暁・・・あなたに会ってみたい。
あなたは、今、太宰暦がどう見えているの?」




