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50%ほど面倒くさい確率はないと思う


ほう、こういう時にはいったいどのような言葉を発すればよいのか。

シチュエーションはこうだ。実の息子のように愛し、育ててきた部下が、一つ画面の向こうで発疹と血だらけで拘束され、休む暇もなく彼の足で蹴られ、踏み滲まれている。

通信を繋いでいる、江戸川彰誘拐事件の捜査本部でもこの状況が映され、アメリア連続殺人事件を担当していた刑事も、江戸川と仲が良かった刑事も、この状況に声一言上げず、絶句するだけだった。

沈黙が数秒流れる。


「息はしていますよ、一応。ま、すぐに抗体を打たなくては・・

死にますね。はい。」


勝手に一人でしゃべり続ける太宰。

限りなく熱く、焼けた肌に彼の限りなく冷たい手が触れる。

汗腺からあり得ない量の脂汗がにじみ出て、上っ面だけの悪寒で手足が震えている。

蹴られた衝動で胃のなかのものが胃酸と共に吐き出され、反吐を出し続ける。


「樋口警視総監。どうですか?今の御気分は。

自分お気に入りの可愛い部下が、ありえないほど劣悪な環境で今こうやって死の淵に立たされている。

どうです?答えられますか?」


見事にあおり特性満天の猫なで声が、樋口の鼓膜に響く。

自分の無力さによる悔しさのせいか、スマホを握る手の力は徐々に強くなっている。

やっと冷静さを取り戻したほかの刑事たちも、震えながらも現状を飲み込んでいた。


「太宰・・・・。」


「なんですか?樋口警視総監。」


「お前が求める感情とやらはよく分からないが、これだけは言う。

アキラに抗体を打ってくれ、見ただけだがこのままだと本当に死ぬぞ!」


「そうですねえ、それもいいかもしれませんが・・・・・、敵の言うことをやすやすと聞くのはあまりにも呆気なく、愚の骨頂と言うべきじゃありませんか?

あ!いいこと思いつきました!

樋口警視総監、ギャンブルをしましょう。

賭け代は江戸川彰の命です、つまり何が言いたいかというと、間違ったらアキラさんには抗体は打ちません、いいですか?」


ポケットの中から、抗体の入った注射器を取り出す。

一人の命がかかった命綱を手の中で弄ぶ。


「は、はあ?」


「いいですね。私は本気です。さて、あと少しで死んでしまうところなので・・・、簡単なものにしましょう。つい先日までは江戸川彰はサイコパスに誘拐されたかわいそうな被害者ではなく、法と正義の下で拷問を犯す悪徳・・・・じゃなくて、まじめな刑事として名をはせていましたよね?逮捕件数三十一件、うち強姦犯二十八件。流石の功績です、新宿風俗嬢強姦殺人事件、渋谷銀行強姦魔立てこもり事件では単身で攻め込んで犯人逮捕してましたもんね。


さてさて、そんな彼が最後に拷問を担当したのは何を言おう、あの夢野あぐりですが・・・・、あぐりが警視庁から逃走したという事実もお分かりですよね?


今、その夢野が生きているかどうか、それを充てるだけの単純なゲームです、ただの二択ですよ。

そうただのね・・・・。」


端っこで呻いている彼女の事を見ながら、笑いながらしゃべりかける。

彼自身別に嘲笑っているつもりではないけれど、刑事の耳にはそれが完全に舐められて試されているかのように聞こえていたのは間違いなかった。


「五秒、あげます。」


「・・・・・・。」


警視総監室に訛のように重い空気が流れる。

最後のアキラの取調室を見た限り、本当に死ぬかどうかの瀬戸際まで追い詰めるような拷問を繰り出していたのだろうというのはよく分かった。

でも、死ぬわけではないというのが問題だ。

強靭な身体能力と比例する体つきをしているのだろうというのは見ずにもわかることだから。

アキラも其れを理解してやっていたのだろう。

だけど、太宰が彼女の息の根を早く止めている可能性も大ありだし・・・。


でも、50%の確率で。


彼は生きることが出来るのだから・・・・。


賭けないという選択肢はない。


「人の命を天秤にかけるなんぞ、正気の沙汰ではないし、そもそも犯罪だが・・・・。

生きてる方に私は賭けようじゃないか。」


覚悟の決めた顔で、長年の刑事人生で培われた勘を信じて、その回答を口から出した。


「そうですか・・・・。


五十%、面白い確率です。」


ストックがなくなって一気に書き溜めたので遅くなりました((;^_^A

次話は三十分ごろに。


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