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信用しすぎではないのか


流石の美味さだ。

パスタと黒胡椒の混ぜ合わせが混ざり具合があまりにも美味しくて、自分好みの濃い味が卵黄の量とうまくマッチしている。ベーコンの焼き加減もカリカリとこんがりとしたタイプにしてくれたので、今まで食べてきたパスタの中で一番美味しいとお世辞なしで感じる。


「美味しい・・・・。」


彼女のカルボナーラに舌鼓を打ちながら、同じくカルボナーラを食べるあぐりを見る。


「さすがだな、あぐり。今まで食べてきた料理の中で一番美味しい。」


「ありがとう。あの人、料理褒めてくれることなんてなかったから、本当に嬉しい・・・・。」


美味しすぎてすぐに食べ終わってしまい、もう一品作ってくれたサラダを食べる。


「こうやって誰かと食事をするなんて・・・・、本当に久しぶりだな。

いつも上司とかそういう人たちばっかりでな。

誰かと雑談しなから手料理食べるなんて、母さんが死んでから一回もなかったか・・・・。」


「お母様?」


「ああ、他の奴らには親バカと言っている上まだ生存しているように見せかけているが、実際は亡くなっている。本当に素敵な母親だったよ。

母子家庭でさ、裕福とは到底言えなかったんだけど、母さんは俺のために日夜働いてくれてさ、名門中学に入れたのも全部母さんのおかげ。自分の生活費を抑えて、俺の進学塾のために当ててくれた。塾から帰ってきたら美味しい料理を毎日作ってくれてさ。味は言及しないけど、本当に愛情のこもった料理だった。


母さんが大好きだった。もちろん今も。こんな状況でも会いたくて仕方がない。」


いつも優しかった母さんの顔が浮かぶ。

監禁された時も、真っ先に思いついたのは樋口警視総監でもない、カフカでもない。

母さんの優しい顔だった。

そんな幻覚にとらわれてあともう少しで母さんにすがるところだった。


「湿っぽい話して悪かったな。ああ、そういえば。

食べたら風呂入って来いよ?ちょっと俺は明日からの時間割を考える。

思ったより君は頭がいいというより容量が良かったから少しペースを早くするつもりだ。」


「できるかなあ。」


「できるさ、君の頭脳には自信を持った方がいい。

その才能を無碍に扱うなよ、まあ俺が言えた噺じゃないか。」


「まあ、アキラには刑事が似合ってたと思うよ。」


「ありがとう。」


食べ終わった食器は部屋に設置されてあったなぞの洗い場で料理を作ってくれた代わりに洗っておいた。

洗剤は持ってきてくれたのでそれで一年ぶりぐらいに皿洗いというものをやった。

今までずっとカップラーメンかスーパーのお惣菜だけで済ましてたからな。


「お風呂入ってくるから。あ、あと今日は報告はしなくていいよってさ。」


「ああ、濡れたまま入ってくんじゃねえぞ。床が臭くなる。」


「アキラが髪乾かしてくれるんでしょ?お父さんなんだからそれぐらいしてよ。」


「おちょくってのかお前は。」


「顔が赤くなってるよ、アキラ。

そんなこと言わないでよ、私さ。


アキラのこと好きなんだもん。」


その、信じがたい言葉と共にあぐりは足りない7cmにも気づかず、これがどれだけ重要なことも知らずに、背伸びをしてアキラの頬に唇を近づけた。

アキラも、この状況には瞬時に対応することが出来なかった。

だけど、あと数ミリという瞬間に、アキラも我に返った。


彼女ーーーー自分が何をしようとしてるかわかんないんだな。

瞬発的に人差し指が動く。

そして今にも近づきそうだったアキラの頬と彼女の血色のいい柔らかな唇の間に、制止するかのように人差し指が入った。


「アキラ?」


急な妨ぎに、あぐりも少し困惑する。

だが、思考が止まっているのはアキラの方であった。

いやいや、キスなんて大学以降してないし、する気もなかったし。

なんでここにきて、こんな事態が発生するんだ。


「あぐり・‥‥、お前まだガキだからわかんねーかもしれねえけど。

キスっつーのは。その‥‥、


もうちょっと練習してから本番に挑まなくちゃいけないんだ。」


「練習・・・・?」


「ああ、その、なんていえばいいんだろ。そう、タイミングだ。

いいか、前も言ったが突発的なキスは別れの発端になりかねない。

だから、何時間もかけて作戦を練り込み、ここぞというときに相手の唇を奪う。

そこが大切だ。」


「―---そんなに奥深いのね。知らなかった。」

この言葉を聞いたあぐりは驚きというより真剣な顔で学習・・・していた。


「ああ、今は失敗してやり方を学んでいくのがいい。

後、これが一番重要なところなんだが、一番最初のキスというものは人生において最も大切なものの一つだから選ぶ相手を考えろよ。

俺みたいにとんでもない野蛮な男にそれを渡すなど、正気の沙汰じゃないからな。」


「アキラも素敵な人だよ。」


「フッ。おちょくってんのかお前は

つーか早く風呂入って来い。太宰に電話しろ、来てくれるだろうから。」


「うん!」


太宰に電話して、そくささと風呂に入っていった。

水が大量に手に流れ、長い袖に少し濡れてしまった。

洗剤がほんのりグレープフルーツの臭いを漂わせる。

つい一日前に拷問していた男にキスをしてくる、本当に突発的な行動が少し難な少女にしか見えないな。

だが、その年甲斐の子に少し困ったところもある。




「―------信用しすぎじゃないのか?」







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