表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/69

彼女の御心次第


完全に彼女の事を舐めていた。

良すぎる、容量が良すぎる。


さっきから勉強を始めて三時間ほどたったが、こんな短期間で百文字吸収するとか‥‥。

とんでもない学習能力と容量を持ってるんだよ。

良くて二十文字、今日覚えられればいいなと思っていたが、ここまでとんとん拍子で行くとは。

これだったら一カ月で算数もいけるな。


「すげーな。ここまで頭がいいとは。脱帽だ。」

「アキラが丁寧に教えてくれるからだよ…。」


さっきまで集中していた顔はどこへやら、また照れて下を向いていた。

その目線の先にはびっしりと文字が書かれたノートに大量のけしカス。

さっき覚えれたか確認用のテストをしたが、見事に百点だった。

こりゃ二年ほど必死で勉強すれば抜かされるな。


「休憩すっか。さすがに疲れただろ。」


「もっとやれるよ」


「ダメだ。勉強し続けると頭に疲労がたまって余計できなくなるだろ?今やったことをしっかり頭が整理してくれるからさ。」


「そうだね・・・・・。」


「どうした?なんか、調子悪いか?」


「ううん。あの。もし私たちがここから脱することが出来たら、私はどうなるのかなってずっと心配で。私、アキラと一緒にいたいけど、やっぱ私殺されちゃうのかな?いっぱい悪いことしたから。」


隠しているつもりだろうけど、顔は病人のように青ざめている。

難しい話だ。

もし彼女の裁判が始まるとしたら、彼女が犯罪を故意的にやったかどうかが彼女の命の別れになるだろう。もっとも、日本には少年法というものが、十三歳での犯罪だから刑事責任、刑事裁判は認められない。少年院送検(正確に言えば女子収容施設)が一番良いが、例外中の例外で


「死刑というのは18歳以上と法で定まっている。君はまだ十三歳だから…、ねえ誕生日っていつ?」


「二カ月前に13歳になったの。」


「よかった。だったら猶予は十カ月ある。14から17だったら死刑ではなく無期刑が最高だ。

13までだったら刑事責任年齢に達していないから、刑罰は受けない。つまりお前が13歳までに俺が再逮捕して送検したら、少年院で済む。

だがな、37人はどうかわからない。もちろん犯罪の元は太宰だが、彼は率いてただけで君の殺人には間接的にしか関与していない。ああ、太宰に関しては今まで誘拐殺人監禁と犯罪を行ってきたから死刑になるのは彼自身間違いないんだけどな。

でも‥‥、君の連続殺人事件では本当にどうなるかわからない。例外として刑に処されることもあるし、通常通り判決が下ったら少年院五年ほどで済むかもしれない。

俺もできるだけ証言や情状酌量を頼みたいが、うまくいくかわからない。」


この事実を伝えるのはかなりくるしかったが、そうせざるを得なかった。

当のあぐりも俯いていた。


「だから・・・・、こんなこと言うと誤解されちまうかもしれねえけど、俺はお前を守りたいんだよ。

法じゃなくて、太宰から。」


心の底から思っているのに、なぜかいうの気恥ずかしかった。

そんな俺の気持ちと裏腹に、あぐりはクスりと笑った。

別におかしいと思っているわけでもなくて、面白いと嘲笑っているのでもなくて、ただ純粋無垢に嬉しそうな笑い声だった。


「ーーーーー、ふふっ。アキラさんは優しい人なんですね。

ちょっとほっとしました。

つい昨日はあんなに冷酷な雰囲気をしてたのに・・・・・今はなんだろ。


本当のお父さんみたい。」


「お、お前・・・・・それ以上言ったら・・・・・マジでキレるからな!!。」


「ふふふ、ちょっと短気なお父さんね。だったら。」


「警官をバカにするなよ・・・・。」


「はいはい、ごめんなさい。それより、今日のご夕飯何にする?

あら、これじゃあ娘がお父さんに料理を作ってることになっちゃうわね。」


新妻みたいなように聞いてくるあぐりに江戸川ははあとため息を吐く。

だがこんな状態も、少しは嬉しかったりするんだけどな。

それに、よく見れば結構可愛いんだよなこの子。前までは人形みたいな表情をしてたけど、少し解けばこの笑顔。そのまま言葉に出すのは流石に気がひけるが、心の中でボソリと呟いた。


「なんでもいいよ、あぐりの好きなように。」


「え〜、おかゆを抜いたら初めてなんだし、なんか好きなもの言ってよ。」


「ーーーーー強いていうなら・・・・、なんだろ。ああ、パスタとか好きかも。

あの、ほらなんだっけ。ああ、カルボナーラとか食べたい。あとサラダ、野菜は欠かすなよ?」


「わかった!じゃあお酒も用意しとくね。」


「おいコラ未成年。」


「違うよ、レイエ様に頼むだけ。ああ、なんか欲しいものとかある?伝えとくけど。」


「ああ、これを渡しておいてくれ。」


あぐりにノートの切れ端に書いたメモを渡す。

そこには独特な字でびっしりと必要なものが描かれていた。


『・中一の国語の教科書に載っている本、全部

  ・ノート五冊補充

  ・タバコ5箱

  ・なんでも良いから英語の小説と経済学の論文

  ・爪切り

  ・シャー芯(足りない)

  ・時計(電子じゃなくていい)

  ・ドライヤー(これは風呂の後に使うから返す)

  ・二日に一回冷蔵庫に一リットルのお茶を2本用意して欲しい』


あぐりが興味津々だったので、とりあえず読み上げる。

だが、その内容にあぐりは首をかしげた


「ねえそれって脱獄に関係あるものなの?」


「いや。全く。」


「え?脱獄しないの!?」


「静かにしろ。どこで聞かれてるか分からない。いいか、三ヶ月、いや二ヶ月の間は俺たちは何もしない。ただただ静かで従順なフリをするんだ。いいな?」


「良いけど、裁判間に合うの?」


「警視総監と法務大臣の御心次第だ。何安心しろ、これだったら間に合う。」


「ーーーーー分かった。」



ブックマーク、感想、評価お願いいたします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ