ラスボスの悲しい過去に踊らされないのが本当のヒーローというもの
取調室から出て、一直線に刑事部第一課第8室へと向かった。
太宰のデスクがあるところである。
あいつがいたとしても、逮捕状がないから逮捕のしようがない。
だけど、話をすることぐらいはできるだろう。
・・・・それと、少し頭が痛い。
まぁ別にいい。体さえ、動けば。
案の定太宰は、パソコンに向かって書類作成をしていた。
こちらに気づいたのか、何事もなかったかのように歩み寄ってきた。
「アキラさん!取調べお疲れ様でした!
さっきはつい声を荒げてしまい申し訳ございませんでした。年下とはいえ上司に無礼なことを。」
あんな真実を聞いてしまうと、彼が喋ることすべてがまるで台本に沿っていっているように聞こえてくる。
「ーーーーー・・ーーーどうしたのですか?アキラさん?黙ってしまって、そういえば、あぐりに関しての情報取れましたか?」
「ああ。バッチリだ。
簡単に吐いてくれたよ。
ーーーーーーなあ太宰。
俺はお前を信頼した上で言ってやる。
お前がレイエなのか?」
真剣な顔で事実であってほしくない事実を伝える。
太宰は書類を持ちながら、キョトンとした顔でこちらを見つめていた。
おかしいなと言う笑いも、何言ってんだろと言う困惑もどちらも備えていない顔。
嘘をついている目も、真実を言ってる目もどちらも持っていない目。
数秒の沈黙が流れ、俺が「いやもういい」と言いかけた時だった。
「はい私がレイエの正体です。
バレちゃいましたか!結構上手く洗脳したつもりだったのですがーー、詰めが甘かったですかね?」
淡々と彼が求めていたが求めていなかった自白をしてきた。
だが、長年共に仕事をしてきた仲間が真犯人だった絶望感をはるかに勝る感情は、100%自分が犯人を見抜くことができなかった失望だった。
「あっーーーーお前が。」
「へえ!アキラさんでも動揺することはあるのですね!驚きです!
まあまあ、そう怒らないで聞いてくださいよーーー。
もう全てお話しいたします。先輩に拷問にかけられるのはさぞ辛いですからーー、さて何から話しましょう?」
太宰がこちらをにこやかな目をして隣ることを知らない勢いで喋り倒す。
自分がレイエだということをあっさり自白して、誘拐に至った経緯などを勝手に喋ろうとしている。
だが、何もわからなくなった。
いやーーー聞こえなくなった。
「ああ、やっぱりナイフは効きますねえ。」
今気づいた。
あの時、太宰が自白した時、あぐりの殺傷による右腹部の傷をピンポイントに太宰がナイフで深々刺してきたことを。
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