人殺しへの許し方
「かもしれないじゃないーーー本当に太宰暦がレイエ様の本当の姿なの!自由に操れる声を使って、今まで大量の少女を誘拐してきて、殺人や強盗を犯させてきたのよーーーー!
それに仕事場、恋人、私の前でもどれが本当の声かもわからないのよ!
こうやって自白している今も、いつ不要と見られて殺されるかわからないーーー。
刑事の皮を被って、情報のアクセスも可能。だから今まで捕まらなかったのよーーー。」
フォークのことなどお構いなしに、弾丸のようにしゃべっていく。
まあこの言霊も今の江戸川には無意味だったのだが。
江戸川は、事態のありえなさに銃で撃ち抜かれたような困惑を感じていた。
まあ無理もない話だろう。
ずっと共に仕事をしてきた相手が、ずっと追っていた殺人犯の正体だったのだから。
嫌で嫌でしょうがなくて、声帯すら震えるのを拒否していた。
だが一つだけわかった。
彼女の目はーーーー
『真実を言っている目』にしか見えなかった。
刑事人生の中で。
真実であってほしくない真実は初めてだった。
「外して」
彼女の声に我に帰ったのか、江戸川は急いでフォークを抜く。
拘束具も外して、ようやく地に足をつくことができたあぐりは永遠に続くと思っていた拷問という名の苦しみからようやく解放された安堵感と今も続く身体中の免れる事ができない痛みが混じった息を漏らしていた。
「本当に太宰がレイエの正体なんだな?」
ゆっくりと、嘘をついていたら殺すと言わんばかりの目で伝える。
「ええそうよ、今まで何十人という少女が彼の手によって操られてきた。そして殺されていった。詳しくないけど、あの人は大学で心理学を専攻していたらしいの。それもーーーストックホルム症候群について研究していたとか。」
大粒に涙を血だらけの患者服で拭いて、次々と真実を喋り倒していく。
ストックホルム症候群。言葉の意味がやっとわかったよ、
ものすごくざっくりに言うと、心理的なものです犯人に好意を抱いてしまう現象のことである。
太宰はそれを使ってヒプノシス、いわゆる洗脳を大量の少女に施してきたのか?
もしすべてが真実なら、そうなる可能性は非常に高い。
夢野アグリもその被害者の一人ーーー
ーーーーークソっ。
「もう居ても立っても居られないというら出たらーーーまあいい。逃げたら死ぬ。これだけ覚えておけ!
今から太宰に直談判してくるーーー。夢野、逃げようなんて真似するなよ?」
黒のコートを着直して、拳銃の弾を確認し、取調室から出ようとした。
その時、あぐりは何を思ったのか、いや無意識に声が出た。
さっき拷問された相手なのにレイエ様以上の信頼を感じた。
「死なないで!
私もあの人もあなたの手で殺して!」
「ーーーーーフッ。おちょくってんのかお前は。
お前も太宰も一緒に地獄の業火にでも焼かれてこい」
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