【無敵の矛】vs【万獣使い】
何ともスッキリしない結末を迎えた二回戦第二試合。
やはり大きな破壊を伴いこそしたが、ここに至るまでのノウハウがあった為か思っていたより修繕に時間はかからず。
『大変お待たせ致しました! それでは両者入場!!』
十数分ほどが経過した今、二回戦第三試合が幕を開ける。
『大会最重量選手を薙ぎ払う圧倒的な膂力は、今大会どころか歴代最強と言っても過言ではない! その二つ名に相応しい暴虐の嵐が再び吹き荒れる! 【無敵の矛】、スターク!!』
一回戦では並び立つ者たち序列八位を殆ど己の膂力だけで凌駕し、目の肥えた観客たちを圧倒してみせた剛力無双と。
『対するは卓越した技術と美貌! 冷酷無比な機械兵へ半強制的に濃厚で情熱的な接吻を贈り、何ともロマンチックな末路を辿らせた美しき灼人! 【万獣使い】、ケイトリン!!』
純粋な戦闘力では間違いなく劣っていたが、種族特性と称号の力で機械兵を自死へと追い込んだ才色兼備が対峙する。
今、闘技場に立っているのはそんな女傑だけではなく。
『まさしく〝力〟と〝技〟のぶつかり合いというところでしょうが、この試合の鍵を握っていそうなのはやはり……?』
『えぇ、あの魔導接合個体の存在でしょうね』
ケイトリンの後ろでふわふわと浮かび、まるで今にも孵化しそうに振動する巨大な〝卵〟が彼女の命令を待っていた。
流石に卵のままで試合に参加する筈もない為、間違いなく開始時には何らかのアクションを起こすのだろうが、ハッキリ言ってスタークにはそんな事など至極どうでもよかった。
「おい、死ぬ前に一つ答えろ。 あぁ拒否権はねぇぞ」
「物騒で傲慢ね。 まぁ良いわ、何が聞きたいの?」
彼女が知りたい事は、たった一つ。
「何であの修道女を殺した? お前も並び立つ者たちだろ」
「……誤魔化す事に意味はなさそうね」
何故フェアトが殺したかのように見せかけてまで、かつての同胞である筈の序列二十一位を殺したのかという事だけ。
どうして試合中に殺したのか、どうやって不死身にも近い回復力を無効化したのか、他にも聞きたい事がないわけではなかったが、これを聞かない事には何も始まらないからだ。
「理由は至極単純よ。 あの修道女が、ウルスラが──」
そんなスタークからの命令にも似た詰問に対し、ケイトリンは前世を看破されている事に驚きもせず、ただ舌を打ち。
「──〝裏切り者〟だったから。 二つの意味でね」
「二つ? そりゃどういう……」
とても元同胞に向けるものとは思えない──何ならもう死んでいる上に死体も灰となったのに──明確な敵意を乗せた妙な言い回しの罵倒を口にする眼前の美女に、スタークが首をかしげつつ追い討ちをかけるように質問しようとするも。
「それも教えてあげたいけれど時間がないし、これだけ言っておこうかしら。 私も貴女の、貴女たちの正体を知ってる」
「ンだと……?」
「この衆人環視の場で公にされたくなかったら──」
時間がない、と前打ってから反撃するかの如く告げられたのは、スタークとフェアトの正体を、つまりは勇者と聖女の娘である事を知っているという衝撃の──と言うにはもう随分な人数に知られてしまっている気もするが──事実を口にした彼女は、勢いそのままにもう一歩だけ少女に歩み寄り。
観客たちには聞こえないよう囁いた言葉に、スタークは。
ある意味、感心する事になる──。
「──私を、見逃しなさい」
「……あ"ぁ?」
『それでは二回戦第三試合、開始!!』
……当然、良い意味ではない方の感心だが。




