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奴隷の国  作者: 猫人鳥
4章

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501/1455

501 指導

フィール視点です。

 アキナ様が本邸の方へ行かれたとの事だったので、また戻ってきた。

 私とはすれ違いになってしまったみたいだ。


 まだ暮らせるようになったというだけで、完全に完成した訳ではないけど、それでもこの邸宅はかなり広い。

 アキナ様がどの部屋に行かれたのかが分からないので、探すのも大変だ。

 カイがいる倉庫の部屋か、フェルルがお風呂に入っているであろう個人部屋の方か……執務室の可能性もあるな。


 どこから探そうかと考えていると、


「わぁ、わぁ! フェルル君! 落ち着いてーっ!」


という、キースの声が聞こえてきた。

 声の雰囲気からして、キースはフェルルを止めているのであって、襲われている訳ではないだろう。

 つまり、フェルルから落ち着きを奪ったのは、キースではないという事になる。

 となれば、何があったのかは大方予想できてしまう……と、思いながら個人部屋の方へと急いで来ると、案の定アキナ様にフェルルが襲いかかっていた。

 いや、でも襲いかかってはいるけど、アキナ様は踊るかのように避けておられるので、見方を変えれば楽しそうに遊んでいるようにも見える……


「あ、フィールさんっ! 僕、これ、どうしたら?」

「……どうしましょうか?」


 私が止めに入るというのでは、フェルルに敵が増えただけになってしまうし、フェルルを余計に興奮させてしまうだろう。

 かといって見ているだけというのも……


「ふふっ。そんな振りじゃ、私に剣は届かないわよ?」

「くそっ! すばしっこい奴だな」

「まずは体幹を鍛えないと。力任せに剣を振るだけでは、自分にも負荷がかかってしまうからね」

「うるさいっ!」

「ほら、肩に力が入り過ぎ。もっとリラックスして」

「は、離れろっ!」


 アキナ様はフェルルの剣撃を避け、フェルルの背後にまわったところで、フェルルの肩に触れられた。

 フェルルがそのアキナ様を振り払うようにとまた剣を振ったけど、それも楽しそうに笑いながら避けておられる……

 笑って欲しいとは思っていたけど、これはちょっと違うかな……?


「フィールさん!」

「あ、カイ君!」

「これは、えっと……」

「カイ、大丈夫よ」

「はい……」


 カイも駆けつけてきてアキナ様を襲うフェルルを見てしまったけど、アキナ様が楽しそうなので、カイもちゃんと平静を保てている。

 でも、ずっとこのままという訳にはいかないので、そろそろ止めないと。

 ついでに、フェルルの勘違いも正しておこう。


「アキナ様、フェルルに剣術指導ですか?」

「あー、うん。そんな感じ」

「そんな感じじゃない!」

「よかったわね、フェルル。私もカイも、アキナ様に戦い方を教えていただいたからこそ、強くなれたのよ」

「……は?」

「アキナ様が教えて下さるのは、本当に分かりやすいですからね」

「そうね。アキナ様は本当にお強いし、分かりやすく教えて下さるし、私達にとって最高の先生ね」

「もう、2人してどうしたの? フィーもカイも、あなた達が頑張ったから強くなったのよ」


 私の言葉に驚いて、フェルルは攻撃をやめてくれた。

 私とカイがそれなりに戦える事は、格好からしてもすぐに分かるはずだ。

 さっき舌打ちをしていたし、私をそう簡単に倒せる相手ではないとフェルルが思っている事も間違いない。

 その上で私とカイを強くしたのがアキナ様だと知り、さっきからアキナ様が遊んでいる様子である事を踏まえれば、アキナ様がかなり強いお方だということは分かるだろう。

 これで"アキナ様を倒せる"という勘違いは正せただろう。


「あら、準備運動は終わりにするの?」

「……」

「まぁいいわ。じゃあダンジョンに行きましょうか」

「あ、アキナ様。その事なのですが、アキナ様と私とカイだけでは、フェルルは緊張してしまうと思うんです。誰かもう1人一緒に行った方がよくありませんか?」

「んー、そうねぇ……」

「ちょっと待て! お前らも一緒に行くのか?」

「当たり前でしょ? 初めてのフェルル1人じゃ危ないし」

「なっ……」


 これで魔物狩りに行くというのが、貴族の娯楽としてではないという事も分かってくれただろう。

 アキナ様が優しいお方だという事までは、すぐには無理だろうけど、こうして少しづつでも分かっていってもらわないと。


「でも、ハイクラスの方に行く予定だから……行くとなるとドヴィしかいないわ」

「あ、ハイクラスと戦う予定だったんですね……」


 それは確かにリーナ達ですら危ない事になる。

 ドヴィルなら大丈夫だろうけど、ドヴィルは作業中だから……


「フェルル、私達とだと、そんなに緊張しちゃう?」

「き、緊張なんかするわけないだろ!」

「そう、ならいいわね。フィー、フェルルは大丈夫だって」

「そうですね。それなら、私も特に問題はないかと」


 今のアキナ様の雰囲気は、さっき楽しそうだった事もあってか、いつもの少しふざけ気味の優しいアキナ様と変わらない。

 この様子なら、ダンジョンでもそう心配する必要はないように思える。

 それに、フェルル自身がこのメンバーで問題ないという発言をしてしまっている以上は、フェルルの敵ではない人を増やす事の方が、フェルルのプライドを傷つけてしまうだろう。


 少し心配ではあるけど、もうこのメンバーで行くしかない。

 出来るだけフェルルを刺激しないように、常に気をつけておこう。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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