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奴隷の国  作者: 猫人鳥
4章

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496 大樽

フィール視点です。

 テーラフェ国の入り口付近、周りの家より高さのある教会のような建物の屋根の上に≪テレポート≫してきた。

 同じテーラフェ国内でもさっき少し歩いた王都の方とは違い、道行く人は質素な服を着ている。

 大体どこの国も、門の入り口付近のような魔物に襲われる可能性の高い場所というのは、お金にゆとりのない人達が生活しているものだから。

 リクシス様の統治がいいお蔭で、ファウス国は例外のようだけど……


 屋根の上から人目につかないように降り、街中を歩く。

 身分の低い人達が歩いている中を、明らかに身分の高いアキナ様と、その使用人のような私が歩いているので、かなり目立ってしまっている。

 いつもの事ながらアキナ様は全く気にされていないので、私もそこまでは気にしないけど、襲ってくる人がいるかもしれないので、そこは気をつけていないといけない。


 アキナ様は街を見渡しながら目的のお店を探されている。

 すれ違う人達は皆、アキナ様の視界に入らないようにと必死だ。

 貴族の邪魔なんて事をして、不敬罪に問われる事を恐れているんだろうけど、少し怯えすぎのような気もする……


「いらっしゃいま……えっ、あっ、あの……」


 アキナ様がお店に入られたので私も続いて入ると、私達に気付いた店員さんはかなり困惑し始めた。


「た、大変失礼ながらお嬢様、当店ではお嬢様のお求めのお品物はご用意出来ないと思うのですが……」

「私は野菜の種を買いにきたの。だからお店は間違えていないわ」

「種……ですか?」

「えぇ」


 このお店は農具や、土、肥料というような、畑で使うものを扱っているお店だ。

 貴族や王族が自分達で畑を管理するなんて事はあり得ないので、一見貴族風のアキナ様に無縁のお店だと思われるのも分かる。


「何の種をご所望でしょうか?」

「色んな種類の野菜が欲しいの。このお店で用意出来る種類全てを揃えてくれる?」

「か、かしこまりました!」


 店員さんは大慌てで用意してくれている。

 余程アキナ様が怖いのだろうか?


「お待たせ致しました。こちらです」

「うん、いいわね。じゃあこれ、全部買うわ」

「あ、ありがとうございます、ありがとうございますっ!」


 店員さんの態度を少し疑問には思いつつも、お金を支払った。

 アキナ様が種を買われるという事に異常に感動しているみたいだけど、そんなに売れていないものだったんだろうか?


 目的の種も買い終わったのでもう帰るのかと思っていると、アキナ様はまた街中を歩き始められた。

 そして今度は、酒場の方に入って行かれた。


「い、いらっしゃいませ……」


 さっきのお店同様、酒場の店員さんもかなり困っているように見える。

 こんな国の端の街に貴族が来るという事はそうそうないだろうけど、貴族が護衛を引き連れて旅をしているのは珍しくないし、護衛達用の酒を大量買いしたりもしているはずなので、そんなに驚く事もないだろうに……

 よっぽど普段から貴族の来ない街なんだろうか?


「オラジールジュースを頂戴。大樽で、2つくらい」

「かしこまりました……」


 店員さんはお店の奥へと入っていった。


「アキナ様? ジュースを買われるのですか?」

「えぇ。皆いつも水ばかりを飲んでいるでしょ? たまには違うものも飲まないとね」


 アキナ様は私達が淹れた紅茶を飲んでおられるし、私やカイはたまに紅茶をアキナ様と一緒に飲んだりはさせてもらっているけれど、他の皆は水しか飲んでいない。

 その事をアキナ様は気にされていたみたいだ。


「このテーラフェ国のオラジールは、とても甘くて美味しいのよ」

「それでテーラフェ国に来られたのですね」


 種を買うだけならドット国でよかったのに、どうしてテーラフェ国にされたのかと思っていたけど、こういう事だったのか。

 不可解なアキナ様の言動が目立っていたので、こういう変わらない優しさには安心できる……


「お待たせ致しました。軽減魔法の持続時間はどうされますか?」

「このまま送るから、軽減魔法は必要ないわ」

「かしこまりました」


 店員さんが、お店の奥からかなり大きな樽を2つ持ってきてくれたので、お金を払い、その樽を≪アスポーツ≫で拠点へと送っておく。

 私の転移魔法に驚いているみたいだったので、やっぱり護衛騎士や冒険者のような強い人はあまり来ない街なんだろう。


 酒場から出たところで、


「フィー、これからの買い物はもう、フィーにおまかせしようと思うんだけど、大丈夫よね?」


と、アキナ様は仰った……


「え、はい。それは構いませんが……」

「服や武器が必要なら、前にも行ったドット国のお店でね。売る時もドット国の冒険者ギルドがいいと思うわ」

「はい……」

「農耕に必要なものはさっきのお店、オラジールジュースの追加もあの酒場でしてくれればいいから」

「かしこまりました」

「結界の強度も増したし、何かあればちゃんと行くから安心してね」

「ありがとうございます」


 今後は一緒に買い物をして下さらないという事なんだろうけど、何故急に……?


「さて、じゃあ帰りましょうか。そろそろフェルルが起きてしまうかもしれないし……」


 少し悩んでいると、アキナ様は呟くようにそう仰られた。

 だから分かった……


 ここでフェルルを気にしておられるという事はおそらく、今こうして買い物に来られたのも、これからは一緒に買い物をして下さらないというのも、フェルルの事を見ておきたいからなんだろう。

 種を買うのは初めてだし、オラジールジュースも買いたかったのなら、今の買い物はアキナ様がご一緒の方がいい。

 でも明日ではフェルルが起きてしまっている。

 アキナ様はフェルルが寝ている間に買い物を終わらせたかったんだ……


 確かにフェルルの態度は悪かったけど、あれはアキナ様にも非がある事くらい、アキナ様なら分かっておられるだろうに……

 アキナ様は何故、こんなにもフェルルの事を気にされているんだろう?


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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