495 詮索
フィール視点です。
ミララは結局、最初に渡した分だけしか食べてくれなかった。
それも、食べる手つきも恐る恐るという様子で、本当に少しずつしか口に運んでいなかった。
勧めても遠慮して食べないタイプだろうし、無理に食べさせるというのも可哀想に思えてしまう……
やっぱり私達の事がまだ怖いままなんだろうか?
いつもなら食べる量や調味料等を気にかけて下さるアキナ様も、ミララの食事に対しては特に何も仰らなかった。
ただミララの食べる様子は見ておられたので、何か考えがおありなのかもしれない。
食事が終わり、皆で片付けをしていると、
「野菜の種を買いに行かないといけないわね」
と、アキナ様は仰られた。
「野菜の種ですか?」
「えぇ、これからはこの島の畑で野菜が採れるようにしたいからね。あ、畑は完成した?」
「いえ、もう少しかかります。今のペースだと明日には完成すると思いますが、急いだ方がよろしいでしょうか?」
「ううん。ドヴィ達のやり易いようにやってくれればいいわ」
アキナ様がドヴィルと畑について話されているのを、ミララはずっと見つめていた。
自分達妖精種が野菜を育てる事になるのだと、分かっているんだろう。
きっと今までも無理矢理命令をされたりして、人類種の嫌な貴族達の為の野菜を育てさせられてきたんだろうから……
そんなミララの方へアキナ様は近づいていかれ、
「ミララ、眠い?」
と、質問された。
その雰囲気や口調からは、冷たさを感じてしまう……
「いえ……」
「それなら、あの辺りにいるといいわ」
「……よろしいの、ですか?」
「えぇ。まだ特に仕事もないから、ゆっくりしていて」
「ありがとう、ございます……」
アキナ様はミララに、特に何もない場所へ行くようにと指示を出された。
その指示に、ミララは少し驚いた様子があったけど、お礼を言ってから移動していく……
「あの、アキナ様? あの辺りには、何かあるのですか?」
「え? あぁ、あそこは日当たりがいいでしょ? 日光浴にもってこいの場所だと思ってね。妖精種は日光浴が好きな種族だから」
「そうなんですね」
いつもより少し冷たい感じがするとはいえ、やっぱりアキナ様はお優しい。
ミララのためを思って、日光浴をさせてあげようとされていたみたいだ。
ミララもそれが分かったから、お礼を言っていたんだろう。
「ドヴィ、あの辺りに椅子か何かを用意してあげてね」
「はい、かしこまりました」
「1人分でいいから……」
「……かしこまりました」
アキナ様の発言に、自分の耳を疑いたくなった。
妖精種は2人いるというのに、椅子が1人分でいいだなんて……
ミララには許可した日光浴を、フェルルにはさせないおつもりなんだろうか?
そんな差別のような事、絶対にアキナ様は嫌いなはずなのに……
ドヴィルも少し戸惑いながら返事をしている。
アキナ様には何かお考えがあるのだと分かっているとはいえ、こんな事を仰るアキナ様に納得が出来ないんだろう。
でも、妖精種達の事情を考慮しての事なのかと思うと、指示を無視して2人分の椅子を用意するなんて事は出来ない……
「フィー、角が隠れるように着替えて来てくれる?」
「あ、種を買いに行かれるのですね。今すぐに行かれますか?」
「えぇ、早い方がいいわ」
「そうなんですか? 畑が完成するのが明日ですし、明日食材を買うついでに行けばいいのではありませんか?」
「……」
「アキナ様?」
アキナ様は少し俯かれて、悩んでおられる……
効率を優先されるアキナ様らしくないと思って、少し疑問に思った事を言っただけのつもりだったんだけど、そんなに悩むような事だったとは……
何を言えば私が納得するかを考えておられるのだろうか?
もしそうだとすると、買い物は今日の方が都合がいいけど、その理由は言えないという事になる……
これも妖精種達の事情絡みだろうか?
「あ、ほら、明日畑が完成してすぐに種を蒔けた方がいいでしょ? すぐに育てられるから」
「そうですね。では、すぐに用意してきます。奴隷印も隠した方がいいですか?」
「そうね。面倒事は避けたいし」
「かしこまりました、失礼致します。≪テレポート≫」
下手に詮索するという事はせず、私の部屋と決まった場所に移動して、急いで着替える。
角も奴隷印も隠しての買い物となると、ドット国に行かれるおつもりなのだろうか?
ドット国でならまだ、私が魔神種だという事が知られていないし……と、考えながら戻ってくると、
「あら、早かったわね。じゃあ、さっき行ったテーラフェ国に行きましょうか」
と、アキナ様は仰った。
「え、テーラフェ国ですか? あそこはさっき、魔神種として歩いてしまいましたけど?」
「うん、王都はね。だから、国の入り口付近の街に行きましょう。覚えてる?」
「もちろんです! ずっと景色を見ていましたから」
「流石ね! じゃあよろしく」
「はい、≪テレポート≫!」
少し太めの丸太を切り出しただけというような簡易的な椅子に座り、悲しそうな表情で日光浴をしているミララを目に映しながら、私はアキナ様と2人でテーラフェ国の入り口の街へと向かった。
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