494 思考
フィール視点です。
ミララにお風呂へ入ってもらい、出てきたところでリーナが持ってきた服を着てもらった。
乱れていたブロンドの髪も綺麗に整って、窓から注ぐ日の光に反射し、キラキラと輝いている。
髪質がアキナ様と似ているみたいだ。
本当に可愛らしい女の子だと思う。
「あの……ありがとう、ございます」
「気にしなくていいのよ。お昼ご飯は外で作ってるんだけど、部屋まで持ってきましょうか? それとも外へ行く?」
「あ……えっと、フェルルを起こしたく、ないので……外へ行きます」
「そう。じゃあモーネ、よろしくね」
「はい」
フェルルの事をモーネに託し、ミララと一緒に本邸から外へ出た。
外では皆でお昼ご飯を作ってくれている。
火を使わないようにというのを気にして、カイは≪ファイヤー≫の代わりに≪サンダー≫を使って食材に火を通しているみたいだ。
ただ、≪サンダー≫は生活魔法ではないので、威力の調整がかなり難しいと思う。
魔力の調整が得意なカイだからこそ出来る事だろう。
「おっ! こりゃまた可愛らしい子が来たな!」
「本当だ! ミララちゃん、だったか?」
「よろしくねー!」
「もう動いて大丈夫なの?」
「あ、あの……」
私とミララが出てきた事に気づいた皆が寄って来た。
でもいきなりすぎて、ミララが困惑してしまっている。
「大丈夫よ、ミララ。皆ミララが来てくれた事が嬉しいだけだから」
「急に驚かせてごめんね」
「まぁ、ゆっくり慣れていけばいいよ」
「はい……」
ミララが困っていると皆も察してくれたようで、離れていった。
ミララは戸惑いつつも辺りを見渡して、カイを見つけるとカイの方をずっと見ていた。
やっぱりカイの事が気になるんだろうか?
「さっきも少し紹介したけど、あの天喰種はカイよ。カイの事、何か気になるの?」
「あ、その……さっき、フェルルと喧嘩してて……その……」
「それを気にしていたのね。大丈夫よ、カイはもう怒ったりしていないわ。フェルルの気持ちもちゃんと理解しようとしているから」
「え……そうなん、ですか……」
さっきは、フェルルと言い合いになってしまっていたところを私が≪スリープ≫で寝かしてしまったから、それを気にしていたんだな……
「カイはね、アキナ様の事が大好きなの。まぁ、この島にいる人達は皆アキナ様の事が大好きなんだけど、カイはその……」
「恋愛、対象として……って、事ですか?」
「ふふっ、そうね。見ていて分かった?」
「はい……」
来たばかりのミララにも分かるほど、カイは分かりやすかったみたいだ。
「だからカイはね、いつもは優しくて穏和なんだけど、アキナ様の事になるとちょっと冷静さを失っちゃうのよ。さっきは本当にごめんね」
「いえ……あれは、フェルルが悪いので……」
「でもフェルルだって、いきなりあなた達を離れ離れにするなんて言われたんだもの。アキナ様を恨んでも仕方がないわ」
「……」
「ミララ?」
「え、あぁ……そうですね……」
ミララは少し俯いて、何かを考えているみたいだった。
2人を引き離すような発言をされたアキナ様に、フェルルが怒るのは当然の事だ。
それに対してミララはそんなに怒っているようには見えない……
離れ離れにされる事を"仕方のない事"だと、諦めてしまっているんだろうか……?
「あ、ミララさん。動いて大丈夫なんですか?」
「はい……あの、フェルルが……ごめんなさい……」
「え?」
「カイ、ミララはさっきの事を気にしているみたいなの」
「あれはその、俺も感情的になってしまいましたし……俺の方こそすみませんでした」
「……いえ」
私達に気づいたようで、カイが近寄ってきてくれた。
ミララの謝罪に対し、カイも謝罪しているので、これでカイがもう怒ってはいないと伝わっただろう。
「これが今日お昼ご飯、フッシュのトマー煮込みですよ」
「ありが、とうございます……」
カイがミララに渡した料理を、ミララは少しずつ食べていってくれている。
まだ震えながらだし、私達の事を警戒しているようだけど、それでも出した料理を食べてくれているのだから、少しは落ち着けたんだろう。
「おかわりもあるわよ」
「いえ、大丈夫……です」
「遠慮しなくていいのよ?」
「本当に、大丈夫ですから……」
あまり食事をもらえていなかった可能性もあるので、出来るだけ食べて欲しいと思ったけど、ミララが拒否する以上は無理強いは出来ない……
ちゃんとお腹が満たされているといいけど……
「あら? ミララ、起きていたのね」
「アキナ様! おかえりなさいませ!」
「うん、ただいま」
ミララを心配しながら食事をしていると、アキナ様が帰ってこられた。
相変わらず、いつ、どうやって帰ってこられたのかは分からない……
「……ア、キナ様……」
「何?」
「えっと、その……いえ、なんでも、ありません……」
ミララはアキナ様に何か言いたい事があったようだけど、言うのをやめてしまった。
アキナ様の雰囲気も少し冷たい感じがするし、怖かったのかもしれない。
「なんでもないのね?」
「はい……」
「ミララ? 何か言いたい事があるのなら、言っていいのよ? アキナ様はちゃんと聞いて下さるから」
「いえ……本当に、大丈夫です……」
「そう……」
アキナ様の事を怖がってしまっているようだし、もう言いたかった事は言ってくれないだろう。
食事も食べてくれたので、それなりに私達に慣れてくれたかと思ったけど、この様子ではまだ落ち着くまでは時間がかかりそうだ……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




