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にくゑ【ある世界が終焉を迎えるまでの道程。そして――】終焉の探偵  作者: カクナノゾム
第一部 にくゑ

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断片資料|失われた民俗学の周縁

 かつて、“■■■”に関心を寄せた民俗学者は数名存在する。その筆頭が鶴来 忍と安志 観草である。


 彼らが遺したフィールドワークの記録によれば、■■村には「音の階級」が存在していたという。

 村人の「笑い声」は単なる感情表現ではなく、外部からの侵入者や異物を排除するための一種の結界として機能していたのではないか、というのが安志の仮説である。


 安志は私家版の著書『■■■■』の中で、こう記している。

「彼らの笑顔は、肉が震える音に同調している。それは人の意志ではなく、肉体の底から湧き出すリズムである。笑えば笑うほど、彼らの肉体は人から離れ、神の構造へと組み込まれていく」


 また、鶴来 忍は村の少女たちが歌う「数え歌」に注目した。

 その歌詞には、肉の増殖や、依代となる器の選定プロセスが隠喩として含まれていたとされる。


 しかし、鶴来も安志も、最晩年は狂気に取り憑かれたように同じ言葉を繰り返すようになったという。


「笑え。笑わなければ、喰われる」


 現在、彼らの著作の多くは絶版となっており、公立図書館の棚からも姿を消している。

 今回発見された資料は、その失われた研究の断片を繋ぎ合わせるための貴重な手がかりとなるだろう。

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