根元あゆみ 密告
清音に知らせたあと、石碑を越え、橋を渡って追いかけた。清音のそばに行きたい一心で、足は止まらなかった。
追いついた時、美穂と健太は地にのたうち、血を吐きながら苦しんでいた。
二人の身体のあちこちが、不意に裂け、血と肉が、噴水のように吹き上がり清音に降りかかる。
月光に照らされた姿は、おそろしいほど惨かった。だがあゆみの目はそこに向かない。
清音――。
赤黒い血に頬を濡らしながらも、祈りの言葉を口にするその横顔。
月光に浮かんだ睫毛の影まで、美しくて仕方がなかった。
(やっぱり、わたしは清音のこと、だいすきなんじゃ)
胸が甘く震えた。清音の姿が尊かった。
「清音……やっぱり、きれい……」
小さく呟く。唇の端が自然と緩んだ。
美穂と健太がこうなったのは、自分が清音に知らせに走ったからだ。二人の逃亡を止める役目を果たしたのだ。
そう思うと、胸がいっぱいになり、誇らしくすらあった。
(わたし、清音のために役に立ったんよ。えらい子じゃろ……?)
血の匂いも、呻き声も、夜風に消えていく。
祈りを紡ぐ清音の美しい姿だけが残った。
§ § §
【筆者後書き】
美穂と健太の物語。
長い章でしたが、一気に読んでいただきたく、この形に。
二人の物語は、ここで終わります。
頭痛が毎日していて辛いです。
書いていると、手が震えました。




