↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にくゑ【ある世界が終焉を迎えるまでの道程。そして――】終焉の探偵  作者: カクナノゾム
第一部 にくゑ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/186

根元あゆみ 聞こえた答え

 その後も二人の会話は続いたが、あゆみにはもう聞く気になれなかった。

 重要なことはわかった。

 梓は告白して、断られた。それでも、突き放されてはいない。


 やがて灯りが消え、二人が洞窟から出てくる気配がした。

 あゆみは急いで外に出て、木陰に身を隠す。


 清音と梓が現れた。

 梓の表情は沈んでいる。告白に失敗した顔。

 清音は……いつもより優しげに見えた。


 分かれ道の手前で、梓がふいに足を止めた。崩れかけた石組み。「危険・立入禁止」の札。


「……古い井戸?」

「だめ」


 清音が思わず腕を取るのが見えた。


「ただの古い井戸よ。もう使ってない」


 梓は唇を結び、やがてうなずいた。


 二人は川沿いを歩いて村へ戻っていく。

 あゆみは距離を置いて後をついた。


 分かれ道で、二人は短く目を合わせて別れた。

 清音は自分の家へ、梓は一人でとぼとぼと歩いていく。


 あゆみは立ち上がった。

 清音への想いで胸が満ちている。今夜、清音は梓を選ばなかった。それだけで十分。


 でも、梓には一言言っておかなければ。

 身の程を知らせてやらなければ。


 あゆみは梓の行く手に立ちはだかった。


 校舎へ続く道の角。

 月明かりに照らされ、梓が足を止める。


「……梓。こんな夜更けに、どこ行っとったん?」


 低い声。責めるでもなく、けれど逃がさない響き。

 梓の胸がぎゅっと縮んだ。言葉を探すが、喉がからからに乾いて出てこない。


「あ、あの……」


 答えを曖昧に濁すと、あゆみの視線が鋭くなった。

 その瞳は、月明かりの下で氷のように冷たい。


「清音と……一緒におったんじゃろ?」


 胸の奥が跳ね、呼吸が乱れる。

 図星を突かれても、梓は首を横に振ることしかできなかった。


「……なんも言えんのじゃね」


 あゆみは小さく吐き出すと、唇を噛みしめた。

 その横顔には怒りとも哀しみともつかない影が揺れ、梓はただ立ちすくむしかなかった。

 夜風が二人の間をすり抜ける。遠くで宴の名残がかすかに響いていた。


 あゆみは梓の震える姿を見つめながら、胸の奥で笑っていた。


 ――清音はあんたなんか選ばんよ。

 ――清音が選ぶのは、わたしじゃけん。


 きっとそうだ。

 今夜がその証拠。


 梓なんて所詮、よそ者。

 清音の心を理解できるのは、生まれた時からずっと見つめてきた自分だけ。


 二人は夜の中、ただお互いを見つめ合っていた。


 清音を誰にも渡すものか。

 あゆみの監視は続く。


 その時、角を曲がった先に月明かりの影が二つ浮かんだ。

 美穂と――健太。


「……美穂ちゃんと健太くん? こんな夜更けに、どこへ行くの」


 梓の声が静けさを破る。

 あゆみの瞳が、一瞬だけ興味深そうに光った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。