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【にくゑ】ある田舎の村が焼失するまでの全記録。【禁断の因習村百合ホラー】  作者: カクナノゾム


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出会い 弐

「清音、新しか方じゃ。よう挨拶ばしてさしあげんさい」


 清一に呼ばれた娘の名は、清音。


 梓が最初に感じたのは、「静かさ」だった。陶器のように白い肌に、まっすぐに落ちた黒髪。姿勢も少しも崩れておらず、まるで時間の流れから切り離されたみたいにそこに立っている。


 お人形のように美しいけれど、ちゃんと生きている人。

 清音の目が梓をとらえた。深い黒色の瞳。その奥に冷たい水をたたえているようで、のぞきこんだら吸い込まれてしまいそう。思わず息をのむ。切れ長の目が梓を見てわずかに微笑んだ。


「清音はわしの娘じゃ。あんたさんと同じ年頃じゃけぇな、学校も同じとこに通うことになるじゃろう」


「……よろしくね?」


 澄んだ声で、清音が答えた。

 梓の心臓が跳ねた。母を亡くしてから動かなくなっていた心が、声一つで揺さぶられる。


「あんたの住む家ぁ、もう用意しとるけぇ。弓子さんが昔おられた家じゃとよ。あんたの面倒ぁ、村で見ちゃるけぇ、なんの心配もいらん。ここでゆっくり傷ば癒やすとええ」


 父親を知らない梓には、清一のその声だけで安心できた。


「ああそうじゃ……ひとついうておかんといかんことがある。田舎の村じゃけえ、少しだけ面倒なしきたりがあってな」


 村長は笑みを浮かべたまま、謳うように続けた。


「この村には古うからの決まりがある。

 ――夜道は中央を歩け。端に寄ってはならん。

 ――笑顔は三度、必ず交わすこと。

 ――そして、笑顔には笑顔を」


「しきたり?」

「うむ、これを守れば、怖いことは何ひとつ起こらん」

「……それはどういう?」

「まぁ古い村じゃけぇ色々あるんじゃ」


 いうと清一は振り返る。


「清音、この子の住む家に案内してあげんさい」

「はい」


 静かな声で清音が答えた。

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