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にくゑ【ある世界が終焉を迎えるまでの道程。そして――】終焉の探偵  作者: カクナノゾム
第一部 にくゑ

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断片資料|肉恵譚考(にくえたんこう)抜粋

 ― 廃刊『異邦民俗記』第七輯(著:安志観草)より ―


享保十七年の飢饉、筑後南部の一寒村にて、天を裂く火柱が目撃された。夜空に赤い閃光が走り、星が山あいに堕ちたとされる。


村の記録によれば、その直後より村の一人が「異なる声」で言葉を発するようになった。彼は理解できぬ言語を使い、時に意味をなさぬ歌を呟いた。村人はこれを神懸かりと信じ、祀りを始める。


不可解なことに、この人物の周囲では肉の塊が自然発生するようになった。牛も猪もいないのに、ぬめりを帯びた赤肉が湧くように現れ、それを口にした者は空腹を忘れ、やがて夢の中で“おかあさん”と囁く声を聞いたと証言した。


この現象は数年続いたが、やがて肉は黒く変色し、人の形に似た奇怪な塊を形成した。村人たちはそれを神体「■■(■■■)」と呼び、以後、毎年の祭祀が始まったという。


民俗的には異端とされるが、筆者はこれを地球外知性による干渉の痕跡と見なしている。異言・肉の増殖・信仰体系の生成という三段階は、かつて世界各地の“接触神話”にも共通するパターンである。


つまり「■■■」とは神ではなく、侵略過程における自律増殖型生体装置(バイオエンジン)であった――と仮定すれば、すべての辻褄が合うのである。


(編者注:本稿の年代比定は、他の資料――郷土誌に見える大旱魃の記述や、祠に刻まれた寛永三年の銘――とは一致しない。異なる土地の異なる災異を、同一の「最初の顕現」として取り違えているのか、それとも顕現そのものが一度きりではないのか。今となっては確かめる術がない。なお「地球外知性」の説は筆者・安志個人の異端の見立てであり、村に伝わる口碑・信仰とは相容れない)

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