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好事魔多し

修学旅行と称しての、上洛の準備が進む。

上洛といえば、その国にとっては一大プロジェクトになるのは間違い無い。

それをあえて、修学旅行と言って緊張を和らげるように配慮したつもりだ。

完全な後付けなのは言うまでもない。

でも、楽しい方がいいでしょ?


さて、上洛と簡単に一言で言っても難しいのは、言い方を変えた程度では代わらない。

力無き大名では、行くことも叶わない。

自らが本拠地から離れて、京へと上る訳だから。

その為、力があっても部下の統率が取れない者も、この条件から排除される。

まことこの世は下克上。

自分の居ぬ間に、領土を取って変わられる可能性だってあるのだ。

だが、猜疑心の塊となってしまえば、やはり上洛は叶わない。

そこのバランスが上手く取れないといけない。

また、隣国との友好関係も条件に入ってくる。

良好であれば、そこそこの対価を払えば通行も可能だろう。

上洛となれば、その武将の面子もある。

それなりの兵を従えて行軍せねばならない。

それの通行を許さなくてはならないのだ。

良好な関係を築けていなければ、間違いなく敵対行為と見なされる。


幸い、長尾家は東にある蘆名辺りを除けば、それなりに友好な関係を築けているはずだ。

名門である朝倉家を始め、様々な勢力と揉めるような事はしていない。

どころか、朝倉は越前。

海上貿易を行う上で重要な敦賀がある。

港の構築に力を入れる長尾家にとって、良好な関係を築け無い方がおかしい。

それに伴い、朝倉と仲の良い浅井家もまた大丈夫だろう。

将軍家を庇護する六角家は言うに及ばない。

障害らしい障害は存在しないのだ。

十中八九、上洛は成功するだろう。

そう思っていた時期もありました。


「信濃に武田が攻め入りました!」

「あ、そうなの?」

「それに、小笠原様がやって来ております。」

「小笠原?誰だっけ?」

「信濃の豪族です。その方が、目通りしたいとやって来ております。」


こんな報を聞くまでは。

何が何だか。

そこまで仲良くしていた訳では無いけど、頼られてしまえば仕方ない・・・のかな?

信濃に武田家が攻め寄せたらしい。

いや、私としては凄い迷惑なんですけど。

勝手にやったら良いじゃない。

そんな本音も出てしまいそうになる。


何故、私を頼ってくるのか。

それはひとえに、上杉憲政の存在ではないだろうか?

弱った者が助けを求めたら、それに応えてくれると思われたのだろう。

それに、叔父である高梨政頼の存在がある。

どうやら、叔父上の紹介という形でやって来たようだ。

叔父上にとっても他人事ではない。

武田家の伸長は著しく、また戦も強い。

まだ村上義清がいるものの、これも武田家に破れてしまうと、次の標的になるのは間違いなく叔父上になるはず。

信濃の統一に、本気になって挑んでいるのが分かる。


それというのも、武田家には後方を意識しなくても良い理由がある。

今川家と北条家とで結ばれた同盟があるのだ。

俗に言う甲駿相三国同盟である。

それぞれの娘をそれぞれの息子に嫁がせる事により、三つの家は親族となる。

これにより、それぞれがそれぞれの動きを気にする事無く、軍事行動に出れるというものだ。


さて、それはそうと小笠原殿である。

ほっとく訳にもいかない為、待たせてある部屋に向かう。

後ろには定満を引き連れて行く。

迷惑だとしても、顔くらいは出さないといけないだろうから。


「始めまして、小笠原殿。」

「いえ、急な来訪であるにもかかわらず、迎えて頂き有り難く。」

「まあ、それはいいわ。それで今日は?」

「いや、お恥ずかしい話なのですが、武田家に攻められまして。」

「それは大変な事でしたね。」

「今は村上義清殿がしのいでいます。が、それもいつまでもつか。相手の勢いがどうにも収まりませんで。」


まあ、あの武田だもんね。

えっと武田信玄よね。

今は晴信だっけ。

そのくらいは私も知ってるわよ。

有名人だものね。

何したかはよく知らないけど。


「それで、ご用は?」

「信濃の奪還に力を貸して頂きたく。」

「信濃の奪還ということは、兵を出せと?」

「平たく言ってしまえば、そうなります。」


あー、やっぱり。

そうなるわよね。

でも、私は京へと行きたいのよ。

それはきっと許されないだろうけど。


「景虎様、顔に出てます。」

「んえっ?」

「援兵は叶いませんか。」

「あ、いや、そんなことは無いわよ。アハハハハ・・・」

「おお、では!」

「小笠原殿は、信濃守護のお家。信濃奪還の為に兵を挙げるのは問題ありませんな。」

「いや、ちょっと待って。まだ、すぐという訳にはいかないわ。準備もあるし。」


やんわりと断ろうとしてみる。

とはいえ、もう口から出てしまった言葉は取り消せはしない。

そんなことは無いと、言ってしまった時点で援軍を送るのは決まってしまったようなものだ。

しかし、そうなるとどうしたものかしらね。

今現在、上野国に出兵しているしね。

まずは、彼らを国本に呼び戻さないと。

統治は、どちらかと言うと私に対してよく思っていない連中と、旧上杉家の家臣達に任せようかしら。

少々予定と変わっちゃうけど、あんまり関係無いわよね。

攻めるとすれば、その軍勢が戻ってきてからというとこかしらね。

まあ、その辺は定満に任せようかしら。

私は旅行のしおりを作るのに忙しいからね。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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