論功行賞
気分が乗ったので、本日はもう一本。
お楽しみ頂ければ幸いです。
春日山城に着くと、黒田秀忠を部屋に押し込め見張りを立てた。
牢屋に幽閉しても良かったと思うけれど、年寄りという事もあり、兄上が戻られる前に倒れられても困るからだ。
私の指示に素直に従ってくれた。
何せ、一族郎党の身柄を拘束されているのだから、それも仕方が無いのだろう。
そして、兵達はこの場にて解散とさせた。
何時までも軍を率いたままでは、皆にとっても私にとっても都合が悪い。
兵というものは、抱えているだけで食費がかかる。
この食費というものがバカに出来ないのだ。
とくに難しく考える事なく、その答えには簡単に行き着く。
一人が、1日にどれ程食べるだろうか。
そして、それを賄うのは恐ろしくも私だったりするわけだ。
間接的に見れば、本来は私の号令に従って兵を出した将達も出す事にはなるのだけど、税として納められるべき物が手元にはまだ来ていない。
収穫の時季を逸していたというのも、理由に上がるが。
因みに、黒滝城に納められていた兵糧に、多少ではあるが蓄財していたのか銭を幾らか拝借していたりする。
じゃないと破産よ!破綻よ!
いくら命令だとしても、食べるものがなくては人は動けない。
ということで仕方が無い事となる訳。
まぁ、普通に一年間細々と生活をしていく程度には残しておいたから、ご飯が食べられなくて餓死するような事は無いから大丈夫じゃないかしら。
その方が、返って反乱なんて考える余裕も無くなると思うし。
さて、戦が終ればかならずついて回る物がある。
戦後処理などもそうだが、論功行賞というものだ。
兄上の命令の元起こした行軍だったが、その辺についての承諾は城より出立する前にもらっていたりする。
兄上が言うには「古志郡の者達を飼い慣らす必要がある。その者らの手綱を持つのは景虎、お前なのだからその辺は任せるよ。」との事だった。
以前、中郡を落とした時には、土地があったからそれを報奨として出したり出来た。
しかし、今回は新たな領土を得る戦いというわけでは無かったので、あげられる物は決まってくるんだけど。
今私が渡せるといえば、そうお分かりの通り拝借してきた米と銭になる。
まあ、栃尾城の蔵にしまってある酒なんかも放出したりしてるんだけど。
後は栄誉とか名誉とか、その辺になっちゃうわよね。
しかし、この米というのが意外と人気が出たりするから分からないものよね。
越後は現代と違い、非常に貧しい。
米を採れるところも決まってくる。
私は幸いにも毎食のように米を食べられるけれど、動員された兵達はそうもいかない。
麦、稗、粟、蕎麦などの雑穀を粥として、水で嵩ましして食べたりと、腹を膨らませる為に色々なことをして誤魔化しているらしい。
さて、それでもより高い功を上げた者にはそれだけでは済まなかったりする。
その対象となるのが、黒川殿と鮎川殿の二人になるだろう。
精一杯攻めかけた黒川殿もそうだが、城の搦め手においての兵の運用をしてくれた鮎川殿にも配慮してあげないと。
じゃないと、次の戦があったとき私の命令に従わずに搦め手を全力で攻めかけてしまうかもしれない。
いや、いくらなんでもそんな阿呆な事は無いと思うが、結果的には武功を立てるチャンスを奪った形になる。
「というわけで、二人はどんな物を望みますか?そうは言っても無い袖は振れないわよ。いざとなれば兄上になんとかしてもらうつもりではいるけれど。」
「いや、儂らの望みは大した物ではございませぬよ。」
「それはどのような願いでも構いませぬか?」
「ええ。言ってみてちょうだい。」
「では。実は鮎川殿とも話おうたのですが、景虎様は旨いものをよくご存知と聞いております。」
「即ち、何か面白き物を食べてみたいのです。」
「え?それでいいの?」
「日々腹を満たす為、食事はします。が、だからといって贅沢は中々出来ませんからな。」
「以前、蕎麦を旨く食べる物をお考えになったとか。そこで、何か他にも知っているのであれば是非にも。」
他にも知っている料理ねぇ。
そりゃ、考えれば何か思い付くとは思うけど。
でも、それでいいの?
いや、私としてはそれで済むのならありがたいけど。
そうね・・・この時代は煮るとか焼くとか蒸すとかばかりで、他の調理法を見たことが無いわね。
炒め物なら簡単に出来るけど、さすがにそれじゃ納得出来ないわよね。
そうなると、揚物が良いかも。
うーん、でもフライを作るとなるとパン粉がほしいから、今回は天ぷらかしらね。
衣には玉子は無しだけど。
鶏、手に入れたいわね。
準備に少し時間がかかるというわけで、料理を振る舞うのは近々ということで納得してもらう事にした。
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今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。




