第六十七話 デビル・サモナー Jパート
時間は不定期ですが、水曜と土曜日公開を目安にしたいです。
◇◆◇ ここからカレラ視点です ◇◆◇
「はぁっ……はぁっ……結構な距離を進んで来たよな」
後ろでクラウスが荒い息をはきながら下着姿のわたしに、にじり寄って来ている状態を客観的に見ると、ひどい絵面よね――。
「十五分ぐらい――。小休止してもいいけど、どうする?」
「いや……まだ大丈夫だが……。カレラ、少しペースを落としてくれないか?」
「わかった――」
わたしより体が大きいから、ひじやひざが壁にぶつかりそうで、苦労しているみたいね。
「なぁ……まだ進まないといけないのか? こんなところを、あの魔物が通って来たとは思えないんだがなぁ」
さらに十五分ぐらい進んだ時点で、再びクラウスが弱音を上げた。ランタンを持っているせいもあって大変なのかも――。
「見える範囲にはなにもない……。ちょっと待って……光よ!」
もう魔法が使えない範囲から脱しているのではないかと思い、わたしは長期間照らし続ける事ができる、浮遊する光の球を創出する事に成功した。
「おお、もう魔法が使える場所になっていたのか……。これで一安心だな……」
クラウスはそう言って、ランタンをストレージに収納させた。
「ちょっと探ってみる――」
わたしは浮遊する光の球に意念を送り、ゆっくりと前方へと飛ばしていった。
「真下に落ちる穴があった――気をつければ進む事ができる」
「カレラのおかげで助かったよ……」
クラウスがわたしを頼りにしてくれている――。その快感のような感覚にひたっていたかったが、そうもいかない。
「なにか妙……床にも周囲にも継ぎ目がある――」
「どうした? 行き止まりなのか?」
光の球を二メートルほど先に先行させていたのだけれど、行き止まりになっている部分に何らかの仕掛けがある事に気づけた。
「妙な装置もある――。わなの可能性も高い――」
継ぎ目から向こう側には触れないように顔を近づけると、壁面に奇妙なハンドルのような物がついた装置を発見できた。
「むぅ……だが、さっきの縦穴を降りるのはさすがに無理だと思うんだがな」
「わたしもそう思う――。もしかしたら、何らかの移動装置かもしれない」
よく見ると、全体的に材質が違っているようだし、下に降りる事ができるのかも――。
「ふむ……このまま、後ろに下がるのもしゃくだし、作動してみるべきかもな」
「後ろの方でなにか音がしている――早くこっちに来て!」
「え? 大丈夫なのか?」
わたしは、光の球を通路の後ろの方に飛ばしながら、クラウスを呼び寄せた。
「どうなるか分からないから、継ぎ目のこっち側に来て!」
「狭いな……入りきるかな……よっと」
わたしは嫌な予感がしたので、クラウスの手を引いたけど、はみだしそうだった。
「早く来て――わたしが上に乗るから!」
「重ならないと無理って事か? わ、わかった……」
「んっ……早くきて……わたしは大丈夫だから――」
「くっ……もう少しなんだが……ふっ……うぅっ……」
わたしは、行き止まりのところで体を反転させて、はい進んでくるクラウスの体と密着する事によって、どうにかスペースに収める事ができた。
「やはり魔物がいた――内部に入り込んだ物を消化してしまう、粘着性のある魔物よ!」
縦穴を登って来たのか、目前まで迫っており、このままだと二人して骨しか残らず消化されてしまいそうだった。
「始原の炎よ……ここに顕現せよ……。オストラトテイク!」
杖はストレージに収めているので、手で印を作る方法で集中力を高めて、迫り来る魔物に火球を放った――。
「ュヒュ……イルフィ……」
粘着性のある魔物は火球をくらい、全身を焼き焦がしながらも、奇妙な音を立ててこちらに前進しようとしていた――。
「クラウス! 装置を作動させて――」
「わかった! んっ……下に降ろすみたいだな……よっと!」
装置を作動させると、どこからともなく、鎖のような物が巻き上げられるような音と振動が伝わってきた――。
「うぉっ!」
「きゃぁっ!」
次の瞬間、わたしたちが乗っている部分が激しい音と振動とともに、下降し始めた。
◇◆◇ ここからエミリー視点です ◇◆◇
「はぁ……さすがにここからは降りられないっスよね」
アニキが通ったのと同じわなで下の階層に無事たどり着き、暗闇の中で、用意していた油をしみこませた紙を使ってイレーネさんがあっさりと火をつけてくれたので、地下空間までたどり着けたんスけど、どうすればいいんスかね?
「そうねぇ……時間をかけて探せば、分かれ道があるのかもしれないけど」
アデールさんも、アニキたちの事を心配しているのか、憂いのある表情を浮かべているっス。
「エミリー殿……あの槍を下まで伸ばすのは無理でござるかな?」
イレーネさんがポンと手を打って提案してくれたんスけど……。
「さすがに無理っスよ。あの石を止めた時だけで、魔力を半分ぐらい消費したっスから」
「それに、海神が持っていた時のサイズより大きくなるとは思えませんね」
オーリガさんは下を眺め続けながら、口を開いたっス。
「ところで、なにか妙な音と振動がしないっスか?」
「そう? わたしは感じないけど……」
「エミリー殿は耳がいいですから、気をつけた方がいいですな」
アデールさんとイレーネさんは、それぞれ武器を構えて下方に目をやったっス。
「なにかが、せり上がって来ているみたいですね……」
ずっと下を見ていたオーリガさんが、指をさしてくれたっス。
「たしかに……何なんでしょうか? 昇降機のたぐいですかな……って、魔物が一匹乗っていますぞ!」
イレーネさんはそう言って、矢筒から矢を取り出して、長弓につがえ始めたっス。
「闇の眷属……デーモン種のようですが、グレーターとも違いますね。もしや……」
オーリガさんも目をこらして、せりあがって来る昇降機に乗っている魔物を観察していたっス。
「せやっ!」
イレーネさんは狙いを定めて矢を放ち、魔物の頭頂部に突き立てる事に成功したんスけど……。
「うわっ! なんなんすかアレ! ヘビみたいなのが上を向いたっスよ!」
しっぽだと思っていた触手が上に持ち上がり、口を開くと巨大な眼球が赤く光っていて、ボクは総毛だってしまったっス。
「おそらくあれは、レックス殿のパーティーを全滅させたのと、同じ種類ですぞ」
「グレーターより上……。神学校で聞いた事があるわ。アークデーモンと呼ばれる魔物だけど、出現頻度は非常にまれなはずよ。魔法も使って来るから、気をつけた方がいいわ!」
アデールさんも恐怖を感じてはいるみたいっスけど、冷静に観察し続けていたっス。
「聖剣を持つわちきが、一定の距離に達したら飛び降ります! みなさんは援護をお願いします」
「わかったわ……わたしは少し下がっておくわね」
「拙者は、一定の距離まで登って来たら、後ろに下がりまする」
アデールさんとイレーネさんは、取るべきポジションを自己申告したんスけど……。
「ボクは魔法がいいんスかね? 小剣二本で攻撃する事もできるんスけど……」
一人で悩んでも仕方ないので、オーリガさんに聞いてみる事にしたっス。
「そうですね。魔法の衝撃波で昇降機から落とせるような機会があるなら魔法で……わたしの持久力が切れそうになったら、小剣でお願いします」
オーリガさんは大剣の切っ先を下にして、革ひもで手と剣のつかを固定しようとしているみたいっス。
「もしかして、上から体当たりする気なんスか? はじかれたら、落ちてしまうっスよ?」
オーリガさんの意図に気づき、あわてて制止したっス。
今回は引きが弱いですね(笑)




