第六十八話 デビル・サモナー Kパート
この第九章は何パートまで続くんでしょうか。
◇◆◇ ここからオーリガ視点です ◇◆◇
『この剣は我が剣にあらず、常世にいます剣の神、スクナヒコナの魔剣なり、魔剣をもってすれば、いかなる悪魔も断てぬことなし!』
横からエミリーが何かを言っていたけれど、わたしは変性意識状態で自己暗示の喚起により、両手に握った大剣が自分自身であるような錯覚を生じるまで精神を集中させていった。
「くっ……」
体の奥底……仙骨から背骨をよじ登るようにして、気と魔力の帯が交互に巻き上がってくるのを内観した――。
「はぁっ……」
剣の舞による喚起より、はるかに大量の気と魔力が手にした大剣に流れ込んでいき、聖光を放ち始めていた。
「たぁっ!」
昇降機に乗っているアークデーモンとの距離が、三メートルに達しようとした瞬間に、わたしは魔斬のスキルを発動させながら飛び降りた。
「グルィゥワァッ――」
落下による追加ダメージがあるせいか、クラウスが鍛えた聖剣は、アークデーモンの体を半ばまで斬ち割る事に成功した。
「たぁっ! りゃぁっ!」
わたしはアークデーモンの胴体に足をかけて、聖剣を引き抜きながら、体勢を崩す事に成功したが、まだ攻撃の意志と能力は残っているようで、体内から奇妙な音を立てて大量のヘビが飛び出して来た。
「くっ! せやぁっ!」
迫り来るヘビを大剣の切っ先でなぎ払おうとするが、昇降機の床は硬い素材であるため、半分ほどしか撃退できずにいた。
「オーリガさん! こっちに下がるっスよ!」
いつの間にか、昇降機は頂上まで登りかけていたようで、エミリーが短杖を手にして叫んでくれた。
「わかった!」
わたしは大剣をストレージにしまい、エミリーたちのいる場所へよじ登った。
「マグナ・フラマ・エクスプローシブっス!」
エミリーは、アークデーモンの下腹部と、はい出ている蛇を範囲に入れて、爆炎を生じさせる高度な魔法を発動させた。
「ヌムゥォッ……メサゥナ……」
わたしが両断した部分から内部にも火が回り、消し炭のようになろうとしているのに、いまだ動きを止めず、仲間を呼ぼうとしているようだった。
「せやぁっ!」
イレーネさんも準備していたのか、矢継ぎ早に矢を放ち、アークデーモンの目や蛇の部分を射抜いていた。
「鎮魂の祈りに切り替えるわ! 多少は効果があるはずよ!」
そう言ってアデールさんは、片ひざをついて祈り始めた。
「ならば、もう一撃!」
若干スタミナが回復して来たので、わたしは大剣をストレージから取り出して構えた。
「オーリガさん! 一人じゃ無理っスよ。ボクも手伝うっスから、下にたたき落としてやるっスよ!」
「承知! では、いちにのさんで行きましょう」
「わかったっス!」
エミリーは両手に小剣を構えて、応えてくれた。
「一・二のさんっ!」
「せやぁっ!」
エミリーがアークデーモンの左側へと果敢に襲いかかったので、わたしは右下から、すりあげるような斬撃を与えた後、左足で蹴りつけた。
「やぁっ! たぁっ!」
エミリーはわたしの大剣の範囲に入らないようにしながら、両手の小剣でアークデーモンの足元へと執拗な攻撃を加えていた。
「ヒギュゥィッ……エルムィッ……」
二人がかりで昇降機の足場の外へと押し出していったんだけど、なかなか姿勢を崩さなかった。
「せやぁっ!」
わたしは、仲間を呼ぶか魔法をかけようとしていた、アークデーモンの左腕を切り飛ばす事に成功した。
「フラマ・バグナスっス!」
一瞬のすきが産まれたので、エミリーが左手の小剣をストレージの短杖に取り替えて、高速詠唱で炎の攻撃魔法を浴びせた。
「ムゥワゥォ……ミリキィ……」
さすがのアークデーモンも断末魔の声を漏らしていた。
「いくっスよ? オーリガさん!」
「一・二のさんっ!」
わたしはエミリーと視線を合わせて、意図をつかみ、バックステップで二歩ほど下がってから、二人が同時に助走をつけてアークデーモンに跳びげりを食らわした。
「ミシゥェールッ!」
アークデーモンは奇妙な悲鳴を上げながら昇降機からはじき飛ばされて、地面へと落下していった。
「動かないみたいっスね……」
「お、消滅したようですな……」
エミリーとイレーネさんがアークデーモンが絶命した事を確認してくれた。
「どうなるかと思ったわよ。こっちにも、あんな強敵がいるだなんて思わなかったわ」
アデールさんも緊張の糸が切れたのか、両ひざをついて休んでいた。
「もしかしたら、高い治癒能力を持っていたのかもしれませんな。もしくは、複数の命を持っていたとか……」
わたしは、アークデーモンが複数の動物を組み合わせたような存在である事から推論してみた。
「そうですなぁ……あんな魔物と広間で出会ったりしたら、倒し切れたかどうか……」
イレーネさんも先ほどの戦いを振り返り、分析した結果に背筋を震わせていました。
「ちょっと一休みしますかね……」
わたしもまだスタミナが回復していない事もあり、片ひざをついて休む事にしました。
◇◆◇ ここからカレラ視点です ◇◆◇
「なぁ、なにかが衝突するような音が聞こえなかったか?」
「別の機械音も聞こえていた――。衝突音らしき物も――」
非常に狭いエレベーターでかなり奥底まで降りきったあと、わたしとクラウスは、狭い通路を進んでいた。
「おっ……この向こうは明るくなっているようだな……装備を調えておこう」
「わかった――」
さすがに下着姿ではないけれど、臨戦態勢とはいえない状態だったので、わたしたちは装備を調えた。
「うぉっ! ここは上から見た場所じゃないか!」
「そうみたいね――」
戦闘態勢で曲がり角を曲がると、まぶしいほどの魔法の光が注がれた地下空間へと迷い出てしまった。
「血の染み……ここで、魔物が死んだばかりのようね」
わたしは、少し離れた場所の血痕に気づいて指さした。
『カレラさん、聞こえるっスか?』
『……いまどこにいるの?』
エミリーがわたしの固有の波動へのアクセスに成功したのか、脳内に語りかけてきた。
「ん? どうかしたのか?」
わたしはクラウスにハンドサインで待機を命令し、エミリーとの会話に集中した。
『アニキたちが落ちたスロープから降りて来たんスよね。魔法の光がいっぱいある空間にいるんスけど、なぜか昇降機が上がって来たんスよ』
『わたしたちは、そこの下にいるかもしれないわ。見えるところまで移動してみるわ――』
『本当っスか? わかったっス!』
「クラウス……エミリーと連絡が取れたわ。ここの上にいるみたいだから、移動しましょう」
「おっ、そうなのか……みんな無事でよかったな……」
口や態度には出さないけど、仲間の安否をひとときも忘れていられる人じゃないから――。
「おっ! もしかして、あれか?」
「魔物がいるかもしれないから、声は上げないで――」
クラウスが思わず手を上げようとしているのを見て、わたしは制止した――。
「すまん……」
『エミリー……こっちからは見えたわよ? 昇降機が見えるけど、作動させる事はできるの?』
『あ、カレラさん。妙なスイッチがあるのは確認したっスけど、大丈夫っスかねぇ?』
『そう。わたしたちが降りて来た昇降機と対になっていたのかもしれないわね。きっと大丈夫よ――』
『わかったっス!』
『じゃあ、昇降機の下で待っているわね。魔物には注意してちょうだいね』
わたしはエミリーとの念話をやめて、クラウスに昇降機の方に移動するように伝えた。
「アニキぃっ!」
我慢できなかったのか、エミリーが昇降機から飛び降りて、クラウスの胸に飛び込んだ。
ようやく合流できたので、ここからは進展が早くなると思います。




