第六十三話 デビル・サモナー Eパート
前回は危ないところで終わりでしたね。
あの場面から再開です。
◇◆◇ ここからカレラ視点です ◇◆◇
「逃げろ……」
「そんな――」
時折生じていた光と音とで、戦闘の様子はつかんでいたけれど、まさかクラウスがやられるだなんて――。
「ヌヒィ……イルム……」
魔物も立ち上がる事はできないのか、触手を伸ばしているようで、石造りの廊下の上で異質な音を立てていた。
「わたしを探している――」
このままでは魔物に捕捉されてしまい、クラウスのように身動きが取れなくなってしまえば、わたしたちは終わりだ――。
何か魔物を打ち払う方法はないものだろうか――。
『精霊を感じるのだ……どんなところにでも精霊は存在している』
わたしの頭の中に、水の精霊神の声がかすかに聞こえて来た――。
「地の精霊……水の精霊……火の精霊……風の精霊……光の精霊!」
精霊魔術では、この五つの精霊力が世界にあまねく存在していると言われている――。
精霊魔術は五つの精霊。元素魔術は闇の元素を理論上は含んでいるけれど、いまだ実用的なレベルではないし、人間は基本的に光属性だから、闇の聖杖でもないと使う事はできない――。
『精霊の魂にアクセスするのか、現象にアクセスするのかの違いでしかない――』
たしか、水の精霊神はそんな事を言っていた。だとしたら、これまで確認できなかっただけで、闇の精霊も存在するのかもしれないけれど――。
「ここは暗闇だけど、闇の精霊を感じる事も……」
わたしは、ストレージから闇の聖杖を取り出して、目の前の暗闇にかざしてみた。
だけど、そんなに簡単に感じ取る事ができるのなら、これまでに発見されているはずだ――。
(なら、闇の精霊はどこに……。もしや!)
わたしは、一つの仮説に行き当たった。それは人間の心の中の闇に棲まい、恐怖や怒りを生じさせているのかもしれないと――。
「ヌヒィ……サンタジア……」
魔物は移動する事ができないのか、最初の場所で倒れたまま、魔法を唱えるか、仲間を呼ぼうとしているようだ――。
「一度も試した事はないけれど……やるしかない――」
わたしは闇の聖杖をかまえて、自らの心の中の闇と対峙する事によって、闇の精霊を支配下に置くべく精神を集中させた。
闇の眷属は、召喚されるさいに物質化してはいるけれど、本質は精神体であり、精神体を消滅させる事により倒す事もできるという研究がされていた――。
「そは黄昏よりも暗き夜に眠る死者にあらねど、闇は闇に。影は影に返りしもの――。汝の名をもて、返りの風よいざ吹かん――。イア・イア・ハスター!」
わたしは、禁呪の中でも特に扱いがむずかしい、闇の属性も持つ、風の眷属を召喚して、眼前に迫る魔物に闇の聖杖を向けて解き放った。
「イァルクスム……ヴィル……」
伸ばした触手が風を切る音が聞こえていたが、闇の精霊魔術を放つ事により、魔物を消滅させる事に成功したようだ。
「くっ……。けふっ――」
星辰もさだかではなく、贄もない状態で、人の身では召喚する事は困難とされる精霊を解き放った事で、体力とスタミナを激しく消耗し、はって進む事すら困難な状態になっていた。
「クラウス……どこ……。クラウス……いた!」
闇の中を手探りで進んでいくと、まひしているクラウスのそばに、たどり着き、呼吸をしている事に安堵して、体中の力が抜けてしまい、倒れているクラウスによりそうようにして、意識を手放した。
◇◆◇ ここからクラウス視点です ◇◆◇
「むっ……ここは……」
どれだけの時間が経過したのだろうか……オレは真の暗闇の中で、目を覚ましてしまい、何度もまばたきをして確認をしてしまった。
「すぅ……すぅ……」
体の左側に人の体温と呼気を感じて、手探りでまさぐってみると、どうやらカレラが横で眠っているようだが……。
「んっ……はぁっ……」
「おっと……。いけないいけない……」
胸をまさぐってしまっていたようで、カレラがなまめかしい吐息をもらした。
「オレが死んでいないという事は……。カレラが倒してくれたんだろうな」
あと一歩というところで、まひさせられてしまった経緯は覚えているが、元素魔術が使えない区域で、精霊も存在しないこのような状態で、どうやって魔物を倒したのか、見当もつかなかった。
「クラウス……どこ……。クラウス……んっ……」
カレラはうなされながらも右手を突き出して、オレを探しているようだった。
「カレラ……オレはここにいるぞ……。もう大丈夫だ」
オレはカレラの手をそっと握りしめて、カレラを抱き寄せるようにして頭をなでてやっていると、迷宮に入ってからの疲労なのか、再び眠りに落ちていった。
「んっ……クラウス……クラウスなの?」
「目が覚めたんだな。カレラには危ないところを助けてもらったようたな」
目を覚ましたカレラがごそごそしているのを感じて、オレも目を覚ました。
「闇の聖杖がないと、きっとあの精霊魔術は使えなかった――」
「そうか……。じゃあ起き上がってみるぞ……おおっと!」
「ふぁっ……んっ――」
オレは足を滑らせてしまい、カレラの体に覆いかぶさるように、倒れてしまい、唇と右手には柔らかい物を感じてしまっていた。
「んっ……。クラウスなら……。わたしは、かまわない――」
「んむっ……んっ……カレラ……」
カレラに抱きしめられて、唇をむさぼり吸われてしまい、オレはすっかりスイッチが入ってしまっていた。
「落ち着け……。こんな真っ暗闇でなくても……」
手探りでもなんとかならない事もないが、カレラの事を思うと、このような形で既成事実を作る事はためらってしまっていた。
オレは上半身を起こして、カレラを落ち着かせようとしたのだが。
「以前なら言えなかった……いまでも恥ずかしいし、赤い顔を見せたくないけれど、闇の中なら恥ずかしくなんかない!」
闇の中だからこそ、きぬ擦れの音はなまめかしく響き、カレラが体を動かすたびに、心地よい肌と髪のにおいを感じてしまっていた。
「わたしを……クラウスのものにして欲しい――」
カレラのその言葉に、オレのなけなしの自制心は、はじけ飛んでしまい、お互いが求めるがままに、身体を重ねていった――。
「大丈夫か? カレラ」
「思っていたよりも、熱く激しかった――」
「無理をさせてなければいいんだが」
闇の中で互いの気持ちを確かめ合ったあと、オレたちは服装を整えていた。
「こっちの方から、風が吹いて来ている――」
オレたちは魔法が使えない暗闇の中で、手探りではっていると、カレラが先導して動きはじめた。
「おい……本当か?」
言われてみれば、カレラが向かう方向には、うっすらと光が差し込んで来ているようだった。
「精霊魔術師は暗闇でも、精霊の放つ精霊光を、見る事ができる――」
「そうなのか……」
カレラには根拠のある事だったようなので、オレたちは前進してみる事にした。
「まぶしい。この光はまさか――」
何度か角を曲がると、直接の光ではないのに、目が刺すように痛んでおり、闇の中にいた時間の長さを思い知った。
「目をならすしかないな……」
あえて光の方を直視せずに目を光にならす事にした。
「この先みたいだけど……進むしかない――」
オレたちは顔を見合わせてから、同時に角を曲がった。
「こんなところに地下空間があったとは!」
オレたちの眼下には、数キロ四方にわたる、巨大な地下空間が広がっており、中央には無数の魔法の光により、四角すい状の建築物がそそり立っていた。
・カレラの呪文
いろいろごちゃ混ぜにしています。全部わかった人は握手w
・闇チュン
誰得という気もしますが、こうでもないと既成事実がw




