第六十二話 デビル・サモナー Dパート
今回は戦闘があります。
「なっ……真っ暗っスよ?」
「みんな、落ち着くんだ……。カレラとエミリー……。杖を持っているなら、光の魔法をかけてくれ」
光源も見当たらない真の暗闇に閉ざされてしまい、さすがにオレも心臓の鼓動を高鳴らせてしまっていた。
「杖なら持ってるっスけど……。さっきの槍で魔力を使いすぎてしまったみたいっス」
数分しか持たない明かりなら、無詠唱でも発生させられるので、そうとしか考えにくいな。
「そうか……カレラはどうだ?」
「だめ……魔力は残っているはずなのに」
すぐ近くにいたようで、カレラの声が耳元で響いた。
「そういえば、オレの盾は……ストレージにしまったんだが、ストレージに入れると、付与された魔法は無効化されてしまうよな?」
「そう――。かけなおさないといけないけど、なぜか無理――」
カレラのその言葉に、オレは内心では強い衝撃を受けていた。
「じゃあ、精霊魔術ではどうなんだ? あれなら仮に魔力が尽きていても使えるはずだよな?」
「試してみる……ちょっと待って――」
カレラは、小声で精霊にたいする呼びかけを唱えているようだったが、いつまでたっても光も炎も出現しなかった。
たしか、精霊魔術を使うには、対応する精霊がその場にいないといけないはずなので、苦労しているのかもしれない。
「だめみたいね。ここには何の精霊も存在していないわ――」
精霊魔法を使ったせいか、かつてのカレンのような口調だった。
「よし……。みんな落ち着こう。まずはすべての装備をストレージに回収するんだ。それなら、暗闇でもできる!」
オレが皆にそう指示すると、音声入力を使ってストレージに収め始めた。
「むう……。一人はたいまつなり、ランタンなりを持っておくべきだったな」
面倒だという事もあり、魔法の光にのみ頼ってしまっていたが、次からは一人はたいまつかランタンに火をともしておく必要があるだろう。ならばカレラも火の精霊を喚起できた可能性もあるしな。
「たいまつは荷物にあますが、この暗闇では火をつけるのは無理ですぞ、ご主君!」
「あいたっ! こっちが壁だったっスか……」
自分のいる位置と方角を把握できていなかったのか、エミリーが頭をぶつけていた。
「魔法が使えないのであれば、戦える者と後衛が組むようにするか。カレラはすぐそこにいるから、オレと組もう」
「では、わちきはアデール殿をお守り申す」
「えと、この足はイレーネさんだよね?」
「ええ……よろしくお願いしますぞ」
オレとカレラ・オーリガとアデール・エミリーとイレーネという、三つの組に再編成をする事になった。
「よし。オレの左足首を握っていてくれ、カレラ」
「わかった――」
自分が向いていた方角と、通路のある方角は暗闇でも分かるので、オレたちが先行する事になった。
「ではその次を、わちきとアデール殿が……」
「ボクがしんがりを勤めるっスよ」
みな、突然の事に不安を感じていたが、何とか勇気を振り絞り、暗闇の中を、壁に手をつけて進んでいった。
「むっ? 地震か?」
めまいなのか地震なのかは分からないが、オレは体勢を少し崩してしまっていた。
「そう? わたしは感じなかった」
すぐ後ろをついて来ているカレラが気がつかないのなら、めまいだったのかもな。
「ん? 段差があるようだ。気をつけた方がいい」
はっている最中に、手のひらに妙な溝のようなものを感じた。
「わかった――」
カレラは、オレの左足首をつかみ、移動する時はいっしょに動いていた。
「ん? なにやら、きしみ音がするが……」
「聞こえたけど、わからない――」
どこからともかく、木材がきしむような音がしたが、ここは石造りだしな。
「気のせいか……うぉっ!」
次の瞬間、さきほどまで手と足をつけていた床がかたむき、オレたちは急なシュートを滑り落ちてしまう。
「きゃぁっ!」
「カレラ!」
オレは、近くを落ちているらしいカレラを、落下しながら自分の方へと引き寄せていったのだが……。
「逆……そっちは下半身――」
回転しているうちに上下が逆になってしまったようで、オレの顔は、カレラの足の間に挟まってしまっていた。
「いいから、丸くなってろ!」
オレはストレージから長剣を取り出して振り回し、床の位置を確認して突き立てて、減速を試みた。
「くおぉっ! 離されるなよ!」
そう言うとカレラはオレの下半身に顔をうずめる姿勢でしがみついた。
「くっ……ふぅっ!」
長剣は時折火花を立てており、わずかなりとも減速に成功しているようだった。
「はぁ……はぁ……。何とか助かったようだな」
ようやく水平な場所で止まる事ができたので、オレは荒い息を吐いたあと、長剣をストレージに戻した。
「もう……大丈夫なの? きゃぁっ!」
立ち上がろうとしたカレラが、悲鳴を上げたので、オレはあわてて引き寄せた。
「あっち……槍が突きでていた――」
「下手をしたら、ここで終わっていたな……」
そのままの勢いだと、二人してわなで命を落とす事になっていたようだ。
「さっき、火花で確認した。こっちが壁で、こっちに通路がある。わかるか?」
「わかった――」
オレたちは、壁に手をつきながら、唯一の通路を進んでいった。
「くそっ……次から次へとトラップが……」
「黙って――」
オレは四つんばいになって移動して行くうちに、つい弱音を吐いてしまったが、カレラに制止されてしまう。
「向こうから足音がする――。人間の足音じゃない」
「なっ……こんな暗闇で魔物か……」
真の暗闇の中での戦闘の経験はあまりなく、オレはこめかみに汗をかいてしまっていた。
「じゅうぶん距離は取っておくが、できるだけ低い姿勢でいてくれ」
オレは前進した後、ストレージから長剣を音声入力で取り出して、片ひざを立てて耳を澄ました。
相手は闇の眷属だから、夜目が効かないという事もないだろう。オレの耳にも奇妙な足音が響き始めていた。
「グルッ……ツァサァデェル……」
魔物は、オレを発見したのなら、直進して来てくれると思っていたのだが、どうやら呪文を唱えるか、仲間を呼ぼうとしているようで、オレは事態の危うさに心臓を握りしめられたような恐怖を感じた。
「くっ……やるしかない! うおぉぉー!」
オレは腹の底から勇気を絞り出すために、大声を上げながら、長剣を腰だめにして突進していった。
「プルギィィッ!」
右の壁を剣の先で探り、火花を散らしながら、十歩ほど進んだオレは、魔物にぶつかっていったが、長剣の剣先はそれてしまっていたようだ。
「神雷剣、三の太刀! てぇりゃぁ!」
だが、正面に魔物がいる事は確認できたので、オレは素早くスキルを発動させ、長剣に聖光を放たせながら、二度三度と切りつけていった。
「グギルッ……エミシィルギィッ……」
「くっ。しぶとい! 神雷剣、二の太刀!」
聖光が闇から照らし出す魔物の姿は、デーモン種のようではあったが、グレーターよりも体格が大きく、複数の動物や魔物を組み合わせたかのような姿だった。
「グギャルヴァッ……エミチ……」
「倒したのか?」
二の太刀で腹から右肩にかけて切り上げたので、通路の向こう側に倒れる音はしたが、目視する事はできずにいた。
「ぬぁっ! なんだ!」
何かに足をつかまれたと思ったのだが、次の瞬間に全身に強力なまひ毒が回って来るのを感じて、通路に背中から倒れてしまう。
「逃げ……るんだ……」
即効性でもあるらしく、まともにしゃべる事もできない状態で、背後にいるはずのカレラに警告して、意識を失った。
ダークゾーン+魔法無効化+ターンテーブル+シュートと、
鬼設定なわなが続いていますね(笑)




