第六十四話 デビル・サモナー Fパート
ちょっと地味な谷間の回かもですね。
「ここからは降りられないよな」
オレたちがいるのは、地下空間内でもかなりの高所であり、階段やはしごのたぐいも見当たらなかった。
「わたしだけなら降りられるけど、戻る事はできない――」
わずかな差ではあるのだが、以前よりもオレに寄り添った状態で、カレラは口を開いた。
「そうか……最後の手段という事にしておくか」
「あの光の点ひとつひとつが、すべて永久的な光の魔法――」
地の底なのに異常な明るさを保っているのは、気が遠くなるほどの魔法を詠唱したからだったとは。
「小型のランタンがあるから、ここで火をつけておくか」
オレはバックパックからランタンと火口箱を取り出して、火をつけはじめた。
「火の精霊力が復活した――」
数分後……火を起こしたオレは、ランタンを点火した。
「そうか……元素魔術だけが使えない区域だったのかもな」
光源を確保できるだけでも、大きな違いだからな。もうあんな闇の中での戦いは勘弁してもらいたい。
「あれは何なんだろうな……見た事があるか?」
眼下にそびえ立つ、巨石を積んで作ったような四角すい状の構造物を指さして聞いた。
「見た事はないけど、書物でなら――。フォルスヴァイン神聖帝国の川沿いに、似たような特徴の遺跡がある――」
「そうか……。あそこが最終的な目的地って事なんだろうな」
「魔物がいたという事は、どこかに通路があるはず――」
そういえば、みんなとはぐれて結構な時間がたってしまっているからな。
「よし。じゃあ、戻って通路を探してみるか」
「クラウスと一緒なら大丈夫――」
カレラはそう言って、オレの腕に細い腕をからめて寄り添った。
◇◆◇ ここからエミリー視点で、時間が巻き戻ります ◇◆◇
「うぉっ!」
「きゃぁっ!」
「なっ! なんなんスかぁっ?」
先頭を進んでいたはずの、アニキとカレラさんが悲鳴を上げて、どこかに滑り落ちて行くような音が響いたんス。
ボクは最後尾なので、よく分からなかったんスけど、アニキの一大事だけど、暗闇の中を駆け出す勇気はなかったっス……。
「いったい、何が起こったの? わかる? オーリガさん」
アデールさんがリーダーシップを発揮してくれたっス。
「お二人はまっすぐに進んでいたはずなのに、左の方角から悲鳴と滑り落ちる音が……」
残る四人の中では先頭にいるオーリガさんが、状況を説明してくれたっスけど……。
「段差があるとか、ご主君が言っていましたが、調べてみてもらえますかな? オーリガ殿」
イレーネさんは、アニキの言葉を覚えていたみたいっス。
「承知――」
オーリガさんが少し後退し、ごそごそと床を手で探っているみたいっスけど……。
「これ……ですね。床の一部分が丸く切り抜かれているようで……。回転する仕組みになっているのかも」
「それにご主君とカレラ殿が乗ってしまい、知らずにトラップのある方に誘導されてしまったという事ですかな?」
「そうとしか考えようがないわね……この先はどうなっているのかしら。調べる方法は……」
「回転するところにさえ乗らなければ、手探りで調べる事はできますが、真っ暗闇では危険ですね」
この間から感じてはいたんスけど、なんだかオーリガさんの話し方が変わったみたいっスね。
「アデール殿……。時間はかかると思いますが、たいまつに火をつけた方がいいのでは」
「そうねぇ。お願いできるかしら?」
前方とか右にも別のトラップがある可能性もあるっスし、その方がいいっスよね。
わなを発動させてしまった事で、みんなに迷惑をかけてしまった事もあり、ボクは落ち込んでいたっス。
「エミリー殿、このたいまつを持っていてくだされ」
「わかったっスよ!」
そんな様子に気づいてくれたのか、イレーネさんがボクにたいまつを手渡してくれたっス。
「よっ……はっ……」
イレーネさんは苦労しながらも、弓引き式の火起こし道具を使っていると、きな臭いにおいとともに、かすかな火の粉が一瞬あたりを照らしたっス。
「いまですぞ、エミリー殿!」
「わかったっス!」
イレーネさんから指示があったので、ボクはたいまつの油のしみている布を火の粉が舞っているところに押しつけたっス。
「はぁ……。火の明るさって、ほっとするわよね」
ボクが手にしたたいまつは、煌々(こうこう)と、迷宮の中を照らし出したっス。
そのあと、念のためにアデールさんの小型ランタンにも火をともしたので、かなり明るくなったっス。
「アニキが落ちていった、左の方を見て来るっスよ!」
ボクはたいまつを手にしたまま、床の回転する部分を踏まないようにして、移動していったっス。
「そんなぁっ! 落とし穴なんて、ないっスよ?」
かなりの音とともに、転がり落ちていったはずなのに、石造りの床は穴のない状態になっていたっス……。
「どんな危険が待ち受けているのかもわからりませんし、やめておきましょう。。合流する事はできるはずですから……」
オーリガさんが、ボクの肩に手を置いて、慰めてくれたっス。
「右側は……アデール殿、ランタンを……」
右側を調べていたオーリガさんは足を止めて、アデールさんから、ランタンを借りていたっす。
「やはり……足元に小さな穴がありますし、ガスを噴出させるたぐいのわなですね」
オーリガさんは慎重に、右の行き止まりになっている通路の先を観察して、わなを見つけたっス。
「じゃあ、真ん中を進むしかないわけね」
真ん中の通路は、光が届かない範囲にまで広がっているみたいっス……。
「じゃあ、二人づつ並んで進んだ方がいいわね。後方への警戒が必要になったら、エミリーにしんがりをお願いするわね」
アニキが不在時の指揮をアデールさんが執る事が多いので、指示を下してくれたっス。
「階段っスね……敵はいないみたいっスけど」
ボクは左手にたいまつを持ち、右手には適度な長さにした、海神の槍を手にして、階段の中をのぞき込んだっス。
「わながあるかもしれないから、注意してね」
さすがに、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないので、ボクは足元や壁に注意しながら、階段を降りていったっス。
「結構降りて来たわよね……」
階段と踊り場が交互に続いていて、十階ぐらい下りたんスけど、まだまだ地下につながっているみたいっス。
「ここは……なんなんスかね?」
三十階ほど降りていくと、これまでとはうってかわって、古代の陵墓のような雰囲気の通路に出たんスけど……。
「これ、何て書いているんっスかね?」
通路のど真ん中に、読めない文字で掘られた石碑があるんスけど、なんだか不気味ッスよね。
「カレラさんがいたら分かったかもしれないけど、きっと警告のたぐいだと思う」
オーリガさんは碑文をランタンで確認してから、アデールさんに返して、背中のさやから大剣を取り出したっス。
「うぇぇ……なんだか怖いっスけど、アニキに合流しないといけないっスから!」
ボクは一瞬折れてしまいそうにいなった心に活を入れて、槍を手に背筋を伸ばしたっス
「じゅうぶん気をつけて進むしかないわね……」
アデールさんはそう言って、行軍を再開させたっス。
「これ……全部魔物なんスか?」
三十分ほど迷宮の中を探索して行くと、正面は城壁の上のような作りになっている場所に出たっス。
その左右には狭いスロープが左右対称にあって、途中で九十度曲がってるんスけど、その先の広場には闇の眷属の、屍食鬼と呼ばれる魔物が数十体ひしめいていたんスけど、一匹がこっちを向き、むきだしになった赤い眼球を光らせたんス!。
諸事情により、当面の間は毎日の更新が望めなくなりそうです。




