第五十九話 デビル・サモナー Aパート
ようやく、新章突入です。
オレサマ オマエ マルカジリ的なタイトルですね(笑)
ラテン語にしようかとも思ったんですが、この方がわかりやすいので。
「ふぅ……九時すぎというところだな」
昨夜は、オレたち六人はオーリガの実家の族長の家の客間に分散して泊まり、レックスたちはすぐ近くの家に泊まっていた。
行動を開始するのは、昼を食べてからと伝えているので、朝飯も食べずに、皆眠りこけているようだ。
「顔でも洗うか……」
オレは裏手にある井戸のそばまで歩いていった。
「あ、アニキ! おはようございます!」
「そう早くもないけどな……。朝から演武か?」
井戸のそばに行くと、エミリーが拳法の型を取ったまま、息を整えていた。
「毎日やってるわけじゃないっスけど、気持ちのいい朝だったっスから……。はっ!」
エミリーは静止した状態から、上段蹴りの体勢に移行し、そのままの体勢を維持していた。
「ふぅ……じゃあな」
オレは井戸水で顔を洗ってから、エミリーに別れを告げて、室内に戻った。
「ご主君……起きていたのですか。朝食を食べまするか?」
「そうだな。軽い物でいいんだが……」
台所ではイレーネが起き出しており、何かを料理していた。
「では、腸詰めを湯で戻した物がありますので、召し上がってくだされ」
そう言ってイレーネは、木のわんに入った豚の腸詰めを手渡してくれた。
「うまそうだな……んむ……うまいぞ」
乾燥した状態でもそれなりに食える保存食が、腸詰めではあるのだが、やはり温かいと格段に味が増すようだ。
「さて……。話しておく必要があるだろうな」
オレはイレーネに礼を言って台所を離れ、アデールとイレーネに割り当てられた客間へと歩いていった。
「あら、早いのね。どうかしたの?」
「ああ……。ちょっと話しておかないといけない事があってな」
アデールは布団から上半身を起こして、髪を整えているようだった。
「オーリガさんの事なんでしょ? あんたへの態度が変わっているからわかるわよ」
アデールはオレの事など、お見通しとばかりの表情を浮かべて、言った
「ん……その通りだ。そのつもりは正直なかったんだが、成り行きでな……」
昨日は求められた事もあり、二度目をするさいに、二世の契りを結んでしまったのだ。
「まぁ、わたしに断らなくてもいいわよ。そういう風に縛るような、つもりはないから……」
妙に聞き分けがいいような気もするが、気配りさえしておけば、大丈夫なようだ。
「カレラはまだ寝ているようだな……」
カレラとエミリーに割り当てられた部屋の前を通ったが、昨夜は魔力を枯渇させてしまった事もあり、熟睡しているようなのでそっとしておく事にした。
「あ、クラウス殿……。おはようございます……」
「ああ、おはよう……」
自分の部屋から出て来たオーリガと、ばったり出会ってしまう。何やら、オーリガは照れているようだが、昨日の事を思い出してしまったのだろうか。
「アデールには一応伝えておいた……。別に妻ってわけでもないんだが、調整役をしているからな」
「そうなのですか……。わたしは、いまになって実感がわいて来てしまいまして……」
オーリガはうっすらとほおを染めてしまっていた。
「少し話をしておこうか……」
「では、わたしの部屋にどうぞ……」
オレは、オーリガのあとをついていった。
「ふむ……何というか、普通の部屋だな」
「あまり見ないでください……恥ずかしいですから」
最初に現れた時に、名乗りを上げた女性と同一人物だと言われても、信じるヤツはあまりいないだろうな。
「今さらだが、いまおまえさんは、ラミールの冒険者ギルド……。軍と言った方が早いか。そこに所属しているのか?」
「いえ、必要な時にだけ呼ばれて、任務に参加していましたし、この任務のあとは、少し自由になりたいと思っていたので、報告さえ済ませたら大丈夫です……」
「そうか。じゃあ、今後もオレたちのパーティーに加わってくれるという事だな」
「わたしも……それを願っています」
つい先日までは、オーリガの事をあまり信用をしていなかったのだが、いまとなってはパーティーには欠かせない存在になりつつあったし、オレも頼ってしまっていた。
「避難していた村人が戻って来られるように、オレもできる限りの事をやるつもりだ……」
まぁ、オレとオーリガの間の子どもが、いずれ産まれて来る事だしな。
「ありがとうございます……クラウス殿」
オレはオーリガの肩を抱いて、背中をなでてやると、瞳を潤ませていた。
「じゃああとでな……」
オーリガは雰囲気を出し始めていたが、さすがにこの状況では、ちとしゃれにならない。
オレは、自分に割り当てられた部屋へと歩いていった。
「うん……なかなかうまいな、これは……」
「そうですか? このあたりでは普通に食べられている物なんですけど……」
昼になり、オレたちは皆そろって昼飯を食べていた。
「クラウス殿! お食事中、失礼します!」
「ん? 魔物でも来たのか?」
「いえ、ラミール軍とセラエノの冒険者ギルドの一隊が、ここまで到着しました!」
「わかった。すぐに行くから、名簿を作っておいてくれ」
オレはそう答えて、残っていた料理をかきこんだ。
「クラウス将軍! こんなに早く、ボスを倒してくださるとは!」
以前聖剣を渡した、冒険者ギルドの幹部の剣士が、オレを見つけて、駆け寄って来た。
「その将軍ってのはやめてくれないか……。留守中に叙任されても、困るんだがな」
「はぁ……。補給物品を用意しています。これが目録となります」
「ふむ……。ポーション各種と消耗品か。助かるよ」
かなり高価なポーションも含まれており、セラエノ側のオレへの期待がうかがわれた。
「ところで、火の眷属にはかなり手こずっていたんだが、よく倒せたな……」
「一時はラミール大橋も危なかったのですが、クラウス殿がボスを倒されたころだと思うのですが、急に弱体化しましたので、ここまで来る事ができました」
「そうなのか……それは大変だったな」
制限地域ではなかったとはいえ、一度開通させたラミール大橋を、失陥させないがために奮起したのだろう。
「オーリガ特佐! よくぞ、ご無事で!」
横の方では、オーリガがラミール軍の誰かと話しているようだ。
「セラエノ公爵から、手紙を預かっております……」
「そうか……さっそく目を通しておくよ。あ、アデール! 補給品が届いたから、受け取っておいてくれ」
外に出て来たアデールに目録を渡して、オレはオーリガの家の中に戻っていった。
「内容は想像できる気もするが……どれどれ」
『まずは、すまないと言っておこう。君がこのような手法を望んでいない事は承知しているが、セラエノとしてもラミールや諸侯にたいしての面目が必要であり、将軍を派遣したという形を取らざるを得なかったのだ』
「やっぱりか……普通は将軍に任命すると言われて、怒る人は少ないだろうしな」
だが、手紙にはまだ続きがあるようだった。
『君たちが、迷宮の謎の敵を撃破した暁には、望む者全員を騎士に叙任し、緊急時の即応体制を整えておきたいのだ』
『その任務終了後は、領主会議を行い、その後はセラエノ自治州としての、名誉将軍に叙する事になるのだが、君たちの実績や人柄を知らない諸侯が多いため、すでに娘のむこ候補である事を、漏らしてしまっている事をおわびしたい』
「そもそもそんな事を望んでないんだがなぁ」
だが、まだ手紙には続きがあるようだ。
『すでに、既成事実があるという情報を漏らしたので、君たちさえ異存がなければ、そうして欲しい。これはわたしにとっても、苦渋の決断だ』
オレは、手紙の内容に仰天してしまった。
カレラとの朝チュンフラグを強引に立てに来ました。
というか、何らかのサプライズが欲しかったので、
そういう事にしました(笑)




