第四十四話 セクス、キルクルス Gパート
ボスとの戦闘です。お楽しみに。
「オーリガ! いったん引くんだ!」
オレは、ボスとの戦闘に入ってしまったオーリガに叫んだが、家族のきずなによる敵補正があるせいか、まるで耳に入っていないようだ。
「くっ……。支援を受けられないが、やむを得ないな。近づけば、正気に戻す事ができる」
オレは、アデールが兄の敵を取ろうとした時の事を、思い出していた。
「聖属性の強力なのを撃ったら、一度下がる――」
「わかった。何なら後詰めのところまで戻ってくれ」
ボスとの戦いだけに、後詰めも二十歩ほど後ろで、いざという時の救援ができる体勢を整えている。
「我は、破邪顕正(はじゃけんしょう)の使命を背負う者! いま、魔を祓(はら)うため、聖霊の力をここに顕現する……」
カミラは、杖をゆっくりと振りながら、何かを唱えて、聖属性の力を集め、頭にはうっすらと、光輪すらも浮かんでいた。
「プリフィケーション!」
カミラが杖を向けると、白い光がボスに向かって飛んでいき、奇妙な文字のような白い光を浮かび上がらせながら、巻き付いているようだった。
「破られるまでは、ダメージを与え続ける――」
かなり魔力を使ったのか、カミラは全身を震わせながら、後詰めのところに走っていった。
「たぁっ! せぇいっ!」
魔法で攻撃の圧力が緩んだせいもあるのか、オーリガは大剣をふるって、ボスを圧倒しようとしていたが、まだ有効打を与えてはいなかった。
「まずは、こっちに注意を向けさせないとな」
再び盾をストレージに戻し、バスタードソードを両手で握って、ボスに向かって突進していった。
「くらえ! 神雷剣、二の太刀!」
「ンッファー……ンヴルッスコッ」
オレは、大量の触手を持つボスの背後から、スキルを使用して、けさ懸けにして、多大なダメージを与えた。
「これで終わりじゃないぜ、神雷剣、三の太刀! てぇりゃあ!」
オレは深々とバスタードソードをボスの中に埋め込んだ瞬間に、スキルを発動させて、スタン効果を与えた。
「神雷剣、一の太刀! てぇいっ! せやぁっ! 」
オレはバスタードソードを刺したまま、宝物殿に一本残っていた長剣を抜いて、スキルを発動させて剣を乱舞させた。
「オーリガ! 鎮まれっ!」
オレはオーリガの近くに寄っていき、空いた左手で状態異常を治すスキルを発動させた。
「はっ……こ、これは……クラウス殿!」
オーリガは正気に返り、オレとボスを見て、動揺していた。
「川岸まで下がるぞ! 支援もなしで倒せる相手じゃない!」
「りょ、了解した――」
オーリガは、山の側から、オレの方に近づきながら、ボスの攻撃を防いでいた。
「クラウス! 弓隊が、敵の増援に襲われている――」
後詰めと行動をともにしていたカミラが、あわてて飛んで来たかと思うと、衝撃の言葉を放った。
「なにっ? 一掃したんじゃなかったのか……」
「川の下流から、大量の海の眷属が接近中――このボスを倒さないと、制限地域で大量の犠牲が――」
「くっ……伏兵がいたという事か。なら、支援を頼むぜ、カミラ」
エミリーを護衛に残しておいたのは、正解だったようだ。でないと、すぐに踏みにじられたかもしれない。
「了解した――」
「事情が変わって倒さないといけないが、支援は受けられない。あまりムチャをするなよ?」
「わちきの手で、こいつを倒せるのなら、クラウス殿の命に従いまする!」
「交互に攻撃を加えろ! 背中を向けたら全力で攻撃だ!」
オレはストレージから盾を戻して、左手に装備させた。バスタードソードは依然ボスの腹に突き刺さったままだ。
「邪を祓|うため、聖雷の矢を、いま放たん! トゥニトルス!
カミラは、聖属性の攻撃魔法を、長いためのあとに放った。
「ヌゥワデェテェェェェッ」
聖属性の雷は、オレが突き刺したバスタードソードの刀身に命中し、ボスの体の奥深くまで威力を浸透させ、大きいスタン効果を得られたようだ。
「よし、無理はするなよ? オレが攻撃を受けている時だけ、攻撃するようにしろ!」
「承知した! てぇいっ! せやぁっ!」
「くっ……ダメージが抜けやがる……」
耐久値はないとはいえ、魔法や特殊攻撃のすべてを遮断できるわけでもないので、オレはじりじりと体力とスタミナを減らしていたが、後詰めの部隊は川から侵攻して来た眷属に対処するので、忙しそうだ。
「トゥニトルス! はぁ……くっ……」
カミラは三発目の聖雷魔法を使い、さすがに魔力が枯渇したのか、肩で息をしていた。
「神雷剣、一の太刀!」
ついにボスがカミラをターゲットにしてしまったので、オレは、あわててスキルを発動させて長剣を振るった。
「くっ……もう限界か!」
二度三度と一の太刀を使ったせいで、聖剣扱いの長剣は、ついに壊れてしまう。
「くっ……もう少し……バスタードソードを抜きたいから、協力してくれ!」
すぐそばにオーリガがいたのなら、予備の大剣か長剣を借りるのだが、ボスを挟んで反対側なので、それは無理だ。
「だめ……もう、元素魔術は使えない」
最初にかけておいた魔法が破られてしまったので、それをかけ直したのだが、それで魔力を使い切ったようだ。
「後ろに下がってくれ……とはいえ、そっちも安全とは言えないんだよな」
後詰め部隊は相当苦戦しているようで、このまま戦闘が長引くと、総崩れになりかねなかった。
「おねがい……カレン――」
カミラは片ひざをついて、必死に息を整えながら、カレンの名を呼んだ。
「大丈夫よ、わたくしの精霊魔法は、魔力なんか使わないから!」
その直後、カレンに切り替わり、笑みを浮かべて言い放った。
「だが、聖属性しか効かないボスに、通用するのか?」
「普通なら無理ね。だけど、刺さっているバスタードソードを通してなら、聖霊の力を喚起できるわ!」
「あれが使い道あるのか……なら、頼む!」
「我らを見守る聖霊よ……いま、その力を借ります……スピリタス、サンクトゥス!」
たしか、聖霊導師の二つ名を持っているんだったな。
「ルゥ……ムォンテ……※◆ッ!」
オーリガにツメを振りかぶっていたのだが、魔法の直撃を受けて、ボスは言葉にならない悲鳴を上げて、硬直してしまう。
「いよっし! これで……うぉっと……」
オレは、ボスが硬直している間に、バスタードソードを引き抜いたのだが、電気にも似た何かがパチパチしているのを、感じた。
「よし、一気にたたみかけるぞ!」
「承知! この剣は我が剣にあらず、常世にいます剣の神、スクナヒコナの魔剣なり、魔剣をもってすれば、いかなる悪魔も断てぬことなし! せいやぁぁっ!」
「くっ。オレの方を向きやがれっ! 神雷剣、一の太刀!」
オーリガは、剣の舞を舞って行くうちに、剣に何らかの気をまとわせていき、オレの攻撃を食らってボスが振り向いた直後に、聖光をまとわせながら、ボスを頭部からけさ懸けにして一刀両断してしまった。
「おお……やったか!」
ボスが消滅する事により、一帯にうっすらとかかっていた、黒いもやのような瘴気が薄れていき、闇から、通常の領域へと復帰した。
「これは、オーリガ……君のものだ」
オレは、ボスが落とした黒い宝石のような物を拾い上げた。
「いえ、あちきが持っていても、仕方ありやせん。クラウス殿の武器作りの足しにしてくだされ」
「そうか。では、預かっておく。魔物が消えたわけではないから、支援しに行くぞ!」
「承知!」
「了解ですわ――」
オーリガとカレンを率いて、後詰めが戦っている、魔物へと攻撃を仕掛けた。
事情で、執筆に割ける時間が減って来たので、、
明日からは、一日一話ベースに戻ります。




