第四十三話 セクス、キルクルス Fパート
ようやく戦闘に入ります。
「盟友登録も取り消されているな」
そうでないと、単身で制限地域には入れないとしても、背信行為と言っても差し支えない行為である。
「準備は整ったっスよ、アニキ!」
予定より一時間半ほど早い出発になったが、冒険者たちも対応をしてくれた。
「ラミールのオーリガ特佐ですか? ラミールからの、矢文を受け取るとか言っていましたが……もう、三十分以上前になると、思うのですが」
前線基地にたどり着き、番をしていた冒険者に尋ねてみたのだが、やはり状況は変わらないようだ。
「このあたりに詳しい……部族の人間なら、直接ボスのところに殴り込む、その可能性はあるか?」
ラミール大橋のあたりを見下ろしても、闇の眷属が減っているようには見えない。
「そうですね。多少の段差を乗り越えるのなら、じゅうぶんあり得ますね。ただし、退路は断たれると思いますが」
「そうか……」
「ご主君……どうなされるのですか?」
「当初の予定通り、ラミール大橋の魔物を排除し、その後弓隊と支援部隊は、川向こうからの支援だ。後詰めにそう伝えてくれ」
後詰めには、例の冒険者ギルドの幹部が率いる、神官と魔術師を含む編成のパーティーが控えていた。
イレーネが指揮する弓隊と、アデールが指揮する支援隊は遅れて、ついて来ているはずだ。
「あんたとカミラだけじゃ、いくらなんでも危ないんじゃないの? エミリーをつけたらどう?」
たしかに、当初の予定では、オーリガをアテにしていただけに、直接戦闘ができる人間が不足していた。
「もし、ラミールの防衛隊と連絡がつくなら、そうしてもいいな。とりあえずは弓隊と支援隊の護衛を頼む」
「わかったっスよ、アニキ」
「二人でも平気――。むしろ、カミラの護衛をクラウスがすればいい――」
「そうか? ボスの前に魔力を使い果たされても困るんだが」
「昼間のレッサーぐらいなら、その心配はない――」
「じゃあ、橋の近くのレッサーを一匹、始末してもらうか」
「了解――」
カミラは臆することなく、すたすたと、ラミール大橋の方に、坂を下っていった。
「始原の光よ、我の願いに応え、ここに顕現せよ……」
カミラはよどみなく呪文を唱えながら、杖の先に光を凝縮しているようだった。
「アストラム!」
カミラが、レッサーデーモン三匹が寝ているあたりに、光の攻撃魔法を範囲指定でかけたようだが、それだと、三匹全部がアクティブに……。
「…………」
レッサーデーモン三匹は、悲鳴を上げる事もできずに、消滅していった。
「す……すごいな。それが、聖属性の魔法なのか?」
「違う。いまのはただの光属性の攻撃魔法。この程度なら、五分に一回使っても回復が追いつく」
カミラはオレの方をちらりと振り向き、少し誇らしげに言った。
「聖杖の補正もある。普通なら一撃では消えてくれない――」
闇の聖杖という、相反する属性の杖なのだが、カミラにとっては、鬼に金棒らしい。
「こんなに簡単に、ラミール大橋の眷属を、一掃できるとは……。カミラ殿の魔術はものすごいですな」
「魔法に関しては、ボクのお師匠だからね!」
二度の休憩をはさみ、ほぼカミラの魔法のみによって、ラミールとの陸路は開かれた。
「あっ、向こうでも気づいたみたいね。すぐに連携が取れると思うわ……」
ラミール側も安全な地帯に前線基地を置いていたようで、のろしを上げてどこかと連絡を取っていた。
「あっ、ラミールの部隊も出て来たっスね。ボクはどうした方が、いいっスか? アニキ」
20分ほどしてラミール側からも、二十人ほどの部隊が進出して来て、合流を果たそうとしていた。
「そうだな。何があるか分からないから、アデールたちの護衛を頼む。いちおう、エミリーの武装も聖剣ではあるが、決してムチャはするなよ?」
「わかったっスよ、アニキ!」
「ご主君。弓部隊も追いついて来たので、指揮をして、川の北岸を掃討しまする」
「ああ。アデールの支援部隊は、ここに、砦(とりで)をきづいてくれ」
組み立てるだけで、魔物の足止めができるようになっているので、すぐに準備ができるだろう。
「川の北岸の掃討を手伝ってくる――」
弓部隊だけでは不安があったので、カミラのその提案を承諾し、オレは後詰めの部隊と打ち合わせをする事にした。
「オーリガ特佐が突出しているとか……どういった経緯なのでしょうか?」
ラミール側の指揮官が、おずおずとオレに問いかけてきた。
「聖剣さえあれば、倒せると思い込んだんだろうな。指揮系統的には、命令違反というわけではないが……」
聖剣を盗み出した事は、とりあえず伏せておく事にした。
「オーリガ特佐は、今回の闇の眷属の侵攻で、ボスとの戦いで、父上を亡くされておりますので……」
「そういう事だったのか……」
すぐにはボスを倒さない方針も、オーリガの心をさいなんだのだろうか。
「では、弓部隊と支援部隊は、そちらと共同で戦う事になる。それぞれの指揮官を紹介しておこう」
オレは暗たんたる思いを抱き、アデールとイレーネの元に、案内していった。
「よし。では、オーリガが無事なら回収するが、ボスを倒す事は、主目的とはしない」
準備が整い、各部隊の指揮官が集まって来たので、オレは作戦の方針を伝えた。
川の北岸の眷属は一掃したので、遠隔攻撃能力を持つ者と支援部隊が、川の北岸から支援し、ラミールの剣士は砦を守るという事になっていた。まだ制限地域である事には変わりないので、油断はできない。
「あそこの五匹を狙うけど、一匹は範囲に入らず、向かって来るかもしれない――」
「了解した。常に魔力を最大限に満たした状態を維持するように、してくれ」
オレはもっぱら、カミラの護衛と化していた。敵が接近しない限り、わざわざイレーネも支援しないように言ってあるので、かなり戦場は静かである。
「アストラム!」
カミラは、五匹が集まっている場所の、グレーターデーモンを中心として、魔法を発動させた。
「ンモゥグスラッ!」
さすがにグレーターデーモンは一撃では消えてくれず、一匹残ったレッサーとともに、こっちに向かって来る。
「後詰めのところまで戻ってくれ!」
後詰めは、三十歩ほど後ろにいるので、そう指示を下し、オレは左手に盾を、右手には例のバスタードソードを構えた。
「くっ……せぇりゃ!」
左にいるグレーターのツメの一撃を盾で受けて、右にいるレッサーに、バスタードソードの切っ先を突き出した。
「ンムゥラスィマッ……」
バスタードソードはレッサーデーモンの心臓をあっさりと貫き、悲鳴を上げながら消滅していった。
「これなら、いけそうだな……」
片手でバスタードソードを使うには、相当の筋力と、それに増して訓練が必要になるのだが、何とか使いこなせていた。
「よっ……はっ……。てぇりゃぁ!」
オレは盾を素早くストレージに戻し、両手でバスタードソードを握って、上段からグレーターデーモンに振り下ろした。
「ミィルゥ……ツゥゲスタ……」
「せいっ!」
かすかに体力が残っており、仲間を呼ぼうとしていたが、オレは腹にバスタードソードを突きこんで、とどめを刺した。
「ふむ……。ここから先は、弓隊の支援も届きそうにないな」
川沿いに進んでいたが、どうやらボスは南の、山の方にいるようだ。ここまで後退すれば、支援を受けられるだろう。
「くらえ、父の敵(かたき)! ていっ!」
眷属を排除しながら進んでいくと、小高いがけの上から、いままさに、オーリガがボスに挑んでいるところだった。
引きの強いところで終わらせるのが、オレのジャスティス!(キリッw
本日も、もう一話公開しますので、短いですがご容赦を。




