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第四十話   セクス、キルクルス Cパート

戦闘は少なめですね。

「これは……もしかして!」

 オレは残っていた延べ棒五本と、四割の化合物で、片手半持ちの、俗にバスタードソードと呼ばれる長剣を作り上げたのだが――。

「固有名称が『聖騎士クラウスの神雷剣(デウス、トニトルス)』で、これはまさか――。耐久値がなしだと?」

 先日、店の前で耐久値のない聖剣なら、金貨五千枚出すと言っていた男がいたが……。

「これを使ってみるか……」

 鍛冶師スキルが十になった事で、自分だけの印章を打てるようになったのだが、それにより所有権などの設定も可能になる。

「約束していたしな」

 オレは生つばを飲みながら、戯れに作っていた印章器を取り出し、設定を自分のみ所持・使用可能にして、刻印した。

「触媒として使っても、三十分で自動回復するのか……。これなら、古代竜との戦いの勝率が、一割上がると言ってもいいな――」




「言われた通り、化合物は少なめで作ったんだが、いけそうか?」

 お札を貼って三十分後には、旅装をしたカミラとエミリーが、ドアをたたいて入って来た。

「三十分に一回使うのなら、大丈夫――」

 カミラは聖剣扱いの杖……聖杖を検分して、感想を述べた。

「ついでと言っちゃ何なんだが、こんな物もできたんだが」

「わっ……黒く光ってるっスね」

 オレが、『聖騎士が作りたる闇の聖杖』をテーブルの上に置くと、カミラは目をむいて驚き、エミリーは顔を近づけて、見ていた。

「どうやったら、こんなものが?」

「ん? 先日、闇の領域で『名前付き』のボスを倒したんだが、そいつが持ってた黒い宝石を埋め込んでみたんだ。

「聖属性を含む全元素の発動体となりつつも、闇属性を持たない人間……カミラのような人間でも、闇属性の魔法が使える杖――」

 どうやらカミラは自分の事を名前で呼んでいるようだ。

「これ、カミラにくれるの?」

「実は、オレ用の聖剣とエミリー用のも作ったんだが、それの所有をオレたちにしてくれるよう、セラエノ公を説得してくれるのなら、カミラしか所持と使用ができないようにしてもいい」

「そんな事でいいのなら――」

「そうか? じゃあ、刻印しておこう」

「アニキ……ボクにも、作ってくれたんスか?」

「これなんだが……装着してみてもいいぞ?」

 オレは、エミリーが両手に装着する事ができる、強化武装とでも言えるような物を取り出した。

「うわっ……何なんスか、これ……ぴったりっスけど! 当たったら痛そうっスね?」

 エミリーの拳を保護しつつも、必要のない時には突起部を収納できるようにした武装なんだが……。

「これ……杖の代わりに、魔法の発動体になるじゃないっスか! ボクの技も使えるみたいっスよ?」

 エミリーは強化武装に光の魔法を発現させていた。

「それも、エミリーしか使えないようにしておいてやるよ」

「なかなか覚えが早い。もう二日も修行していたら、魔導士になれていた――」

「そうなのか……。かなりの戦力アップじゃないか!」

「えへへ……。頑張ったかいがあったっス」

 エミリーは照れくさそうにほおをかきながら答えた。

「火の元素魔術はすでに、上位の炎に達している――」

「おかげで、秘拳の方も火力アップっスよ!」

「よし……じゃあ、刻印をすませて出発するか」




「世話になったな。そうそう、一番いい剣は約束通りもらったからな……」

 さやがないので、白布を巻いて荷台に載せている、神雷剣を指さして言った。

「あぁ、もう刻印自分でできるんでしたね……。あと、秘蔵していた延べ棒五本分のお代をくださいよ……」

 実は一度失敗していたため、棚の上にあった延べ棒を拝借したのだった。

「原価に色つけとくわ……四割にしたんだし、いいだろ?」

 オレは銀貨三千枚の証書を手渡した。

「わかりましたよ。じゃあ、気をつけて。その荷台にある分だけで、かなりの額になると思いますし」

「ああ……では、またな!」

 オレは、鍛冶師と別れを告げて、荷馬車で待つカミラとエミリーの元に戻っていった。



「いやー……なんかいいっスねぇ、アニキ……自分のためだけの武器ってものは」

 エミリーは上機嫌で、装備した強化武装をなで回していた。

「耐久力も相当あるが、無理しすぎて壊すなよ?」

「へへっ……気をつけるっすよ、アニキっ!」

「これで……カミラの唯一の弱点が消えた――」

 カミラも表情には出さないが、先ほどから闇の聖杖の光沢を眺めていた。



「このあたりは家もないし……注意した方がよさそうだな。二人とも、気を引き締めてくれ」

 オレは不穏な気配を感じて、手槍を背中から引き抜いて、あたりを見渡した。



「へっへっへ……たった三人で、大事なお宝を運ぼうだなんて、オレたちもなめられたもんですよね、親分」

「ここから先には通さねえ。通行料は身ぐるみ全部だ」

 今どき、このような山賊団がいるのがおかしくてならなかったが、五人ほどの盗賊が街道をふさいでいた。

「逮捕権を持つ、騎士相手に山賊とは、なめられたもんだな?」

 オレは騎士のクリスタルを提示して、記録を開始した。

「なあに、騎士とはいえ、毒を食らえば倒れるんだ! びびる事なんてないぞ!」

 またぞろ、まひ毒を塗った武器を持っているようだが、一度かわしてしまえば、こちらのものだ。

「全員でかかって来ていいぞ。オレが相手をしてやる」

 オレは手槍を戻し、盾をかまえて挑発した。


「ぬぁにをぉー! やっちまいな!」

 親分がそう言って合図すると、五人の山賊がオレに向かって、突っ込んで来た。

「よっ……はっ……たぁっ……せいっ……ふんっ!」

 オレは五人の攻撃をことごとく、パリィか体術でかわしてみせた。

「逮捕できるようになったら、支援してくれ! エミリーはカミラの護衛だ!」

「了解――」

「わかったっスよ、アニキ!」

 その後、逮捕要件を満たしたので、五人の山賊は三分とたたずに、拘置所行きとなった。



「ふぅ。なかなか的確な魔法だったぞ。オレの動きを予想しているかのようだな」

「できて当然――」

 そう言いつつも、若干うれしそうに見えるのは、オレの気のせいだろうか。




「おお、こんなにも……。これなら、何とかなりそうだ」

 一年半ぶりの親娘の対面を三十分ほどで済ませたあと、ようやくセラエノ公がカミラを連れて、第二宝物庫に現れた。

「ところで、オレたちの聖剣の所持ですが、問題ないですよね?」

「当然だとも。一人一個なら、最初から想定していたよ」

 こんな事なら、アデールとイレーネの分も作れば良かったかもな。

「なら、小剣二本を、不在の二人の分としてもらいます。あと、この大剣は、ラミールの特務少佐に渡す約束でして」

「では、こちらに納入する分に関しては、査定額を出すように言っておくよ」

「そういえば、最初の二十個は、もう前線に渡していますよね?」

「ああ……次男がケサナ渓谷に行くさいに持って行かせたよ。何本かは残しているがね」

「んー……残る決戦用の聖剣ですが、オレが預かってもいいですかね? 戦力になりそうな人に使って欲しいんで。何なら、その分は報酬から差し引いてもいいですし」

「その分は、すべてが終わってから精算という事にしようじゃないか。とりあえず、簡易的に作ったという六十本分……。教会だと金貨六枚なので、その五倍の金貨三十枚を、まず払っておこう」

「すべてを兵士か冒険者に使わせるのなら、それでいいでしょう」

 闇に流したら、ケタが上がるが、その心配はないだろう。

「丁寧に作った五十本分は、ばらつきもあるが、最低でも一本に金貨五十枚とみて、金貨二千五百枚。それに決戦用の分を含めて三千枚を仮払いしてもいいが」

 まぁ、セラエノ公爵家なら、それぐらいの金はすぐに出せるよな。鍛冶師に四割払うとしても、今回は材料費を考えなくてもいいからな。ざっと金貨千八百枚の儲けで、オレの手取りは七百枚弱か。

「もう一声……カミラがもらったこれだけで、金貨三千枚ぐらいの価値はある――」

「そうかね? カミラの言う事なら間違いないだろう。ここでケチだと思われてもだし、君たちの労に報いるためにも、金貨五千枚にしよう」

「それで手を打ちましょう。ただし、発効は五日後という事で」

 ざっと金貨千枚がオレの物になりそうだ。これなら、アデールも文句を言わないだろう。



「そのころには作戦も終わっているだろうな。では、手続きをしておくよ。これは君の目の下のくまの分だよ。取っておきたまえ」

 そう言って、セラエノ公爵は、銀貨三万枚の預金証書を、渡してくれた。

「ありがたく受け取っておきます」

 即座にアデールとイレーネに分配されて、一万二千枚分の預金証書が残った。実を言うと現物支給の方がうれしいんだよな。

「エミリー。欲しがっていたオーダーメイドの革よろいだが、これを足せば買えるだろ?」

 オレは、エミリーへの取り分として銀貨二千枚の証書を手渡した。

「いいんスか? アニキ……うれしいっスけど」

「いいんだよ。アデールとイレーネには、自動で取り分がいってるんだから」

 いつまでも軽装では、毒を使われた時に怖いからな。

「おまえにも、金貨三百枚は、聖剣の収入が入るんだ。それぐらい買っておいてもバチは当たらんさ」

 まぁ、オレはそれこそ、金貨五千枚にも相当するような武器を入手できたんだしな――。



「もう夕食の時間だな。部屋も用意するから、今晩は泊まっていきたまえ」

「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」

 ここ一週間の苦労を思えば、オレたちだけ豪華な飯を食べても、バチは当たるまい。



「ふぅ。ちょっと食い過ぎたかもな」

 夕食後、メイドが用意してくれた客用の風呂に交代で入り、オレは一人、部屋で天井を眺めていた。

 エミリーも女性だという事を明かしたので、同じような部屋をあてがってもらっている。



「まだ起きてますよね? ちょっと、お話しませんか?」

 ノックと同時に扉が開き、カミラが部屋に入って来たのだが、様子がおかしい。

「ああ。少しだけならな、カミラ」

「わたくしの事は、カレンと呼んでくださる?」

 カミラ……いや、カレンは天真らんまんな笑みを浮かべた。


いろいろ良い物を作れた上に、かなりの収入も見込めそうですが。

あまり黒字にしすぎるのも、タイトルと反していますしね(笑)

せめて手持ちの金が減るのだけで、勘弁してもらいたいなと。

収支を赤字にするとなると、かなり大胆な事しないといけないんでw

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