第三十五話 ターニングポイント Fパート
本日は、朝六時。正午。午後六時の三回更新DAYです。
「話はあとだ! 下がるんだ、早く!」
「わ、わかったっス!」
エミルは、先ほど蘇生させた戦士の腕を引いて、後方に下がっていった。
「このグレーターがしぶといんです! クラウス殿!」
「わかった、すぐ行く! てぇーりゃぁ!」
オレは側面から、グレーターデーモンに殴りかかった。
「モルグフィ……エンドゥラァァ……」
側面から、聖剣扱いの鉄球メイスで二度三度振り下ろすが、このグレーターデーモンは、四本の腕を持っており、上の両腕で強力な魔法を練り上げているようだった。
「クラウス! どうやらそいつが、ここらのボスみたいよ! 油断しないで!」
情報を得たアデールが声をかけてくれたが、現状で使えるのは、神雷剣の一の太刀のみだが、聖気を流し続けると触媒が昇華し、減少してしまうのだ。
「くっ……やむを得んかっ!」
二の太刀と三の太刀は回復するのに多くの時間を必要とするが、触媒が減りにくいという特徴があった。
「たぁっ! やぁっ! 神雷剣、一の太刀!」
オレはガードをしようとする、グレーターデーモンの下の二本の腕を切り払い、肉薄するや、一の太刀を発動させて、強烈な一撃を加えた。
「ブムゥォルッ……フォォ……」
何とか、上の二本の腕で練り上げていた、強力な攻撃魔法をキャンセルさせる事はできたが、続けざまに二度三度と殴っても、倒れそうな気配はなかった。
「くっ……ちぃっ!」
魔法をあきらめたグレーターデーモンは、上の腕で振り下ろし攻撃をしかけて来るせいで、そのすべてをパリィする事は、できそうになかった。
「くっ……どこまで持つやら」
最初の一撃で、相当の触媒を使用しており、持続時間内にも、攻撃を続けているので、聖剣扱いの鉄球メイスは、いつ壊れても不思議ではなかった。
「ご主君!」
背後からイレーネの声が届き、オレは反射的に上体を伏せた。
「ミグゥルゥッ……エミテヤァァ……」
再びイレーネが得意とするらしい、右目への攻撃が成功し、圧力が弱まったのを感じた。
「みんなは無理をするな! 回りのレッサーを倒してくれ!」
すでに一の太刀の持続時間はすぎているので、オレは盾でパリィしながら、ダメージを与えていった。
「ぐっ……くぅっ……」
「クラウス、行くわよ!」
グレーターデーモンのスキル攻撃らしい、範囲攻撃を受け、オレは片ひざをついてしまうが、即座にアデールから回復魔法が飛んで来たので、立ち直れた。
「クラウス! ボスは自己治癒能力があるらしいの……火力が不足していると思うわ」
「だが、もうスキルはあまり使えそうにないが……」
鉄球メイスは重さが減っているのを感じるほどに、触媒が昇華しているようだ。
「魔術師隊は、攻撃魔法で一定期間支援して!」
さすがにオレも息切れをしていたので、アデールが指示を下してくれた。
「オレたちが盾で守るから、下がってスタミナを整えた方がいいですよ!」
「そうとも! 隊長一人に見せ場を奪われちゃ、セラエノの冒険者のこけんにかかわりまさあ!」
「じゃあ、頼んだぞ……。ふぅ……」
オレは、エミルとアデールがいる場所まで下がり、神官のスタミナ回復の祈りの効果の範囲に入った。
「アニキ、あのボスは頭が弱点みたいっすよ……刺さった矢を嫌がってるみたいっス}
攻撃に参加するのを禁じていたエミルが、ボスの様子を観察してくれたようだ。
「ふむ……だが、この武器では届かんし、手槍の攻撃力ではしれているからな」
「クラウス! あんたの聖剣の小剣を、エミルにかしてあげなさいよ!」
「そんなの、あるんスか? 小剣の二刀流も、いちおう習ってるっスよ?」
「エミルも攻撃に参加させるつもりなのか?」
「この状態が続く方が危険だし、万一やられても、すぐに救出できるわよ!」
「わかった……チャンスがあったら、攻撃に参加してもいい」
オレは懐にしまっていた、聖剣扱いの小剣をエミルに手渡した。
「あの、アニキ……。アニキの肩を、足場に使わせてもらっても、いいっスか?」
エミルは、破れた胸元を隠そうともせずに、オレに問いかけてくれた。
「ああ。それで高さを稼げるならやってくれ! オレはできるだけ、動かないようにする」
オレが抜けても、戦線は何とか支え続けているようだが、長引かせるわけにもいかない。
「クラウス殿! 弓隊も援護しまする!」
イレーネが、火矢隊は元の場所に残して、六人ほどの長弓使いを連れて来て、橋の左側に位置して、川の向こうの魔物を射り続けていた。
「よし、ボスを倒しに行く! レッサーに邪魔させないように、してくれ」
「右は任せておいてください!」
「隊長はボスにだけ、集中しててくださいや!」
「さすが聖騎士! オレたちゃ、尊敬してますぜ」
隊の戦士たちに声をかけると、即座にあちこちから、威勢のいい返事が返って来た。
「交代を……お願いします」
ボスの攻撃を受けつづけていた盾役が、ついにスタミナを切らしてしまったようで、オレを見るや後ろに下がっていった。
「アニキ……。ちょっとスキが少なすぎるっすよ」
「なら、上の腕を切断しておいた方が、いいようだな」
オレは背後で控えているエミルに声をかけた。
「ていっ……せやっ……神雷剣、一の太刀!」
オレはバクチではあるが、ボスの上の右手の中ほどに、部位攻撃をしかけた。
「プゥルゥグゥモゥ!」
フルスイングした鉄球メイスが、ひじの部分に部位攻撃で命中し、破壊できたのか、ボスは奇っ怪な悲鳴を上げており格好のチャンスが到来した。
「ていっ! せやぁっ!」
オレはエミルが突入するために、ボスの腕を体の中心から外に、払い続けた。
「そろそろ、いくっスよ? アニキ……」
エミルは数歩下がって、両手に小剣を逆手に持ち、突入の時をはかっていた。
「おうっ! もうすぐ……何とか、なりそうだ!」
これがメイスではなく、長剣なら使えるスキルもあるのだが、現状ではさまざまな補正により、マイナスがつかずに攻撃するだけで、精いっぱいだ。
「くっ……神雷剣、一の太刀!」
オレは、執拗に攻撃してくるボスの左腕を狙って、神雷剣を発動させた。
「はぁっ……たぁっ……」
ボスにスキができたのを見逃さず、エミルが背後で気迫とともに、ダッシュして、オレの背や肩を踏み台にして、ボスに飛びかかっていった。
「たぁっ! りゃぁっ!」
それでも高さが足らなかったが、エミルは両手に持った小剣を、ボスの胸に交互に突き刺して、よじ登っていった。
「アニキ、やるっスよ? せやぁっ!」
エミルは、ボスの残った上の左手をはねのけて、首に足を巻き付ける事に成功していた。
「おうっ! 神雷剣、一の太刀! たぁぁ!」
「せやっ! たぁっ! これでもぉっ、食らえっス!」
オレはメイスが壊れるのを覚悟した上で、ボスの腹を打ちすえ続け、エミルは両手に持った小剣で頭部をめった刺しにし、ついには、聖剣扱いの小剣を両手で握って、みけんに突き刺していた。
「フゥワンケッツル……ムゥワデ……グルルゥ……」
オレとエミルの同時攻撃に、さすがのボスも、ついには力尽きて、闇の中に散華していった。
「よっと……。やったっスね、アニキ!」
エミルはボスが実体を失う直前に、オレの横に降りたって、声をかけてくれた。
「ああ……。ここらは安全圏に戻ったようだな。深追いをする必要はない! 手分けをして救出するんだ!」
覚悟していたとはいえ、聖剣扱いのメイスは最後の一撃で、壊れていた。
「クラウス……貴様にだけは!」
倒れていた冒険者が運ばれて来たのだが、その中にレックスの姿もあった。
なんと、早速ボスを撃破しちゃいましたね。
さて、今後エミルとの関係はどう変化するのか。
こうご期待!




