駄々
祭りの翌日。
集合時間よりもかなり早く目が覚めた。
「ふわぁ…」
大きくあくびをしながら身支度を整える。
まだ集合時間までは三十分以上ある。だが、宿でじっとしていてもすることはない。
そう思い、先に集合場所へ向かうことにした。
すると、そこにはすでにローレルの姿があった。
近くの木にもたれかかり、暇そうに空を眺めている。
「アスちゃん、おはよう。今日は早いじゃん」
こちらに気づくと、ローレルはひらひらと手を振りながら歩み寄ってきた。
「おはよう。…こんなに早いなんて珍しいな。熱でもあるのか?」
思わずそう尋ねる。
「アスちゃんは、あーしのこと何だと思ってるわけ?」
口元をひくつかせながら拳を握る。
「恨むなら日頃の行いを恨め」
「はぁ…」
ローレルは大きくため息をつくと、気持ちを切り替えるように肩をすくめた。
「まぁ、いいや。それよりさ、アスちゃん。やっぱりパウロへ行くの、やめにしない?」
突然の言葉に思わず眉をひそめる。
「急にどうした? なんでそんなにパウロを嫌がるんだ?」
「嫌がってるわけじゃないんだけど…なんていうか、危ないっていうか…」
ローレルは珍しく自信なさげに視線を落とした。
「危ない? パウロの何がだ?」
普段の歯切れの良さはどこへ行ったのか。言葉を濁すローレルの様子に、かえって違和感を覚える。
「いや、その…」
何か言おうとしては口を閉じ、考え込む。
「…?」
首を傾げながら見つめていると、ローレルは何かを思いついたように勢いよく顔を上げた。
「そう! スラム街! パウロにはスラム街があるんだよ! 財布どころか身ぐるみ剥がされて、最後には臓器まで全部持っていかれちゃうんだから!」
「そんな取ってつけたような話、誰が信じるんだよ…」
あまりにも苦しい作り話に、思わず呆れ笑いが漏れる。
「うっ…」
図星だったのか、ローレルは一歩後ずさった。
「もういいし。アスちゃんのわからず屋。そんなんだから、乙女心が分かんないんだよ」
拗ねたように言い捨てると、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
…なんでそこで乙女心が出てくるんだ?
理不尽さと疑問を覚えていると、
「あら? 二人とも早いわね」
グラッドが姿を現した。
それをきっかけに仲間たちも次々と集合場所へ集まり始める。




