牢屋の中での話
「京都?京都って言った?今!!」
スピレアからの言葉に驚きはしたが、喜ばしい言葉であった。
京都に行けば何かわかるかもしれない。
そうだ、京都に行こう。
聞き間違いではないか確認を取った。
「何?変な子ね。」
グラッドが怪しい物を見るような視線をこちらに向けてそう言う。
違う。反応が欲しいのはお前じゃない。
「うん、でもさ。もう、人が住める場所ではないんだよ。」
スピレアが気まずそうに目を伏せつつ答えた。
「何何何?アタシだけハブらないでよ。」
グラッドが、おもちゃを見つけた子供のように目をキラキラとさせて会話に殴り込んできた。
「ちょっと。アスターは、…でね。…なの。だから、…」
スピレアがグラッドに耳打ちをする。
どうやら、俺の事を説明してくれているようである。
重要な部分だけ全く聞こえない。もどかしいものである。
「ふーん、なるほどね。で?スピレア、アナタはどうしたいの?」
何やら納得したらしくグラッドが神妙な面持ちでスピレアと俺を交互に見る。
そして、何かに気がついたかのようにニヤリと笑ってスピレアに尋ねた。
「私は、その…出来たら一緒にコンペートーに行きたいなって。いや、その。もしかしたら、道中アスターさんの知り合いに会ったり思い出すかもしれないし途中までになるかもしれないけど…」
もじもじと歯切れの悪い言葉でスピレアは話す。
その言葉は、何か言い訳をしているかのようだった。
「女は、度胸!!スピレア、アナタのパーティじゃない。どうしたいのか答えなさい!!」
グラッドが唐突に大声で怒鳴った。
男は度胸女は愛嬌の間違いではないか?
そう突っ込みたかったが場の空気を読んでぐっとこらえた。
「すぅ、ふぅ。私は、アスターさんと旅がしたい。」
スピレアは、一度深呼吸をすると決意を決めた顔でグラッドを真っ直ぐ見てはっきりとそう言った。
「そう。それなら、アタシが何とかしてあげるわ。」
スピレアの決意を聞き取るとグラッドは優しく女神のように微笑んだ。
その言葉には、何とも言えない頼もしさを感じた。
「それにしても、一緒に旅をしたいねぇ?他に言い方なかったのかしら?」
グラッドが、女神のような微笑みから一転悪魔のような笑いを浮かべてスピレアに尋ねる。
「いや、それは、グラッドさんが悪いんじゃない!!もう!!」
女の子が、耳まで赤く染めてグラッドに反論する。
恥ずかしさを誤魔化すためかグラッドの腕を軽く叩く。
「ごめんなさいね。でも、やっぱり、若いって良いわね。」
グラッドが全く誠意のこもっていない言葉で謝罪する。
そして、スピレアと俺を交互にジロジロと見ながら、薄気味悪い笑いを浮かべうんうんと頷きながら言う。
なんだか、自分だけ蚊帳の外のような気分だ。
現実は、一人牢の中であるが。
「それで、俺はどうしたら良いんですか?」
この空気感を壊すために、グラッドに尋ねる。
「あら、アスターちゃんだっけ?アナタは、何もしなくても大丈夫よ。アタシに全部任せなさい。そうねぇ、強いて言うなら、敬語を辞めることかしら?」
グラッドが、まだそこに居たの?と言いたげな口ぶりで答える。
ドンと、自分の胸板を力強く叩いて任せろという。
なんとも頼もしい。
そして、顎に手を当ててしばらく考え込んだ後、良いことを思いついたと言いたげな勝ち誇った顔で敬語をやめるように言ってきた。
目上の方に対しては、敬語で話したい、日本人の性である。
いや、俺の方が年上か?なんだかそんな気がしてきた。
「そうか。分かった。頼んだよ。グラッド。」
グラッドの提案に乗ることにした。
ついでに敬称も外してみる。
「うん。と言うわけで、スピレア、行くわよ。」
「待ってよ。それに、任せろってこれからどうするつもり?」
敬語のない語りかけにグラッドは満足そうに笑みを浮かべ頷いた。
そして、牢の前を立ち去りつつスピレアに声をかけた。
スピレアがパタパタと走ってオカマの後を追う。
何やら、今後の作戦を練ろうとしているようだが遠くに行ってしまったので聞こえない。
ぐぅ~。
腹が音を立てた。
今はとりあえず食事を取りつつ2人を待つしかない。




