男?女?との邂逅
「おーい、スピレア、そろそろ戻っておいで。じゃないとルドベックが大変なんだから。」
遠くの方から彼女を呼ぶ声がする。
口調は、女性のようだ。
しかし、声は太く低く男性のものだ。
そんな声の持ち主がため息交じりに独り言をこぼしながら現れた。
その女装した男性は、身長186cm。
金剛力士像を現代風に描いたような筋肉質。
髪の色は、ピンクっぽい紫色でソフトモヒカン。
彫りの深い濃い顔をしていて青ひげも目立つ。
服装は、花柄のぴっちりなタイツにぴっちりの黒のタンクトップ。
その上から鎖帷子のような女性用の服を着ていた。
いわゆる、おねえという存在なのだろうか。
「あら、目覚めたのね。」
その者は、こちらの存在に気づいた。
「あらあら、思っていたよりも良い男じゃない。」
肉食動物が獲物を狩る時のような鋭い眼光をこちらに向けた。
ベロっと下唇を舐めてオカマはそう言い放った。
ゾクゾクっと背筋に悪寒が走る。
イノシシの化物と出会ったときとは別だが、似たような感覚。
危険信号だ。
野生の本能が、このオカマは危険だと叫ぶ。
「誰?」
本能的に身構え中腰の姿勢になって少女に助けを求めるように尋ねる。
「こちらは、グラッドさん。君、えっとアスターさんを運んできてくれた人だよ。」
スピレアはニコニコと笑いながら自慢するようにオカマの名を告げる。
どうやら、このオカマは命の恩人だったようだ。
「命を助けて頂き、ありがとうございます。」
グラッドに対する警戒は一切解かない。
しかし、救われた事には本心から感謝している。
頭は下げられないがしっかりとお礼を述べた。
「あら?良いのよ。気にしないで。それよりその熱い視線。アタシに惚れちゃった?」
グラッドはこちらの態度を気にしていないようだった。
それどころかこちらの睨みを勘違いしている。
ぽっと頬を赤らめたグラッドは恥ずかしそうに腰をくねらせながら続けた。
少し殺意が湧く。
「ところで精霊術師ってどんな事をやっているの?」
グラッドのことは無視して殺意を収めるためにもスピレアの方へ無理矢理話題を振る。
「あら?精霊術師の事も忘れちゃっているの?」
話題をスピレアへ振ったはずなのにグラッドが奪い答えた。
このオカマ強欲である。
「精霊術師は、コンペートーに居る魔王を封印する為に居るんじゃない。」
頭が割れるように痛い。
「うぅ」
その場にうずくまって痛みが去るのを待った。
「ちょっと、どうしちゃったの?」
「大丈夫?」
二人が心配そうにこちらに声をかけてくるがそれどころではない。
しばらく、痛みと闘う。
痛みが止んだ。
そして、ふと疑問が湧く。
金平糖?
このオカマ、急にお菓子の話をし始めてどうした?
腹でも空いたのか?
そう考えながら尋ねる。
「金平糖?」
短く聞いた。
すると、スピレアは少し言いにくそうにこう言った。
「アスターさんの時代では、京都って呼ばれていたところだよ。」
ーーー京都
その言葉を聞いたとき、きゅっと胸を締め上げられるような苦しみに襲われた。




