船旅
それからしばらく馬車に揺られた後、一行は港町へ到着した。
そこからエヒメア行きの時に乗った船によく似た船に乗った。
港を離れた船は、穏やかな碧い海をゆっくりと進んでいく。
大小さまざまな島々が浮かぶ航路を船は進む。
切り立った岩肌を見せる島もあれば、深い森に覆われた島もある。
時折、木々の隙間から白い石造りの塔や、小さな集落の屋根が顔を覗かせる。
そんな穏やかな航路だった。
一行は甲板へ出て、心地よい潮風を浴びながら談笑していた。
その時、それまで黙っていたローレルがぽつりと呟く。
「…やっぱ、あーし、船苦手だわ」
真っ白な顔でそう漏らしたかと思うと、口を押さえ、人目につかない船尾の方へと駆け出していった。
「大丈夫かな? 私、見てくるね」
心配そうな表情を浮かべ、スピレアがローレルを追いかけようとする。
「ちょっと待って。もう少しだけ時間をおいてあげて」
慌ててスピレアの腕を掴み、引き止めた。
おそらく今頃、ローレルは盛大に口から撒き餌をしているはずだ。
「でも…」
スピレアは不安そうに、ローレルが走り去った方へ視線を向ける。
「なあ、グラッドも少し時間をおいた方がいいと思うよね?」
一人では説得できそうになかったので、助けを求めてグラッドへ視線を向けた。
「…」
しかし、グラッドはどこか遠くを見つめたまま、考え込んでいるようだった。
「…グラッドさん?」
その様子に気づいたスピレアが、不安そうに声を掛ける。
「…あら、ごめんなさいね。少しぼーっとしていたわ」
呼び掛けられて我に返ったグラッドは、小さく苦笑した。
「疲れているの?」
「ちょっと考え事をしていただけよ。アタシは元気」
そう言って胸を軽く叩き、いつもの調子で笑ってみせる。
「なら良いけど…」
スピレアはどこか安心しきれない様子で小さく呟いた。
その時、船がゆっくりと速度を落とし始める。
どうやら、目的地が近づいてきたようだ。




