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連携

最初に動いたのは剣士だった。

木の根を軽く蹴り、一瞬で魔物の懐へ潜り込む。

銀色の軌跡が閃く。

浅く一太刀を浴びせると、そのまま木の根から木の根へ飛び移り、縦横無尽に駆け回った。

魔物の視線は完全に剣士へ釘付けになる。

「今よ!」

その隙を逃さず、グラッドとルドベックが左右から一気に距離を詰めた。

魔物は咄嗟にグラッドへ向き直る。

直後、二本の右腕のうち、一本が弾け飛び、無数の岩片となって襲いかかった。

しかし、地面を突き破った木の根が何重もの壁となり、その猛攻を受け止める。

岩片が木へ激しく突き刺さり、乾いた衝撃音が広場に響き渡った。

魔物の意識は完全にグラッドへ向いている。

その時、魔物の背後へルドベックが音もなく滑り込んだ。

「はぁっ!」

水色に輝く刃が一閃する。

狙ったのは首でも胴でもない。

両足首。

二本の斬撃がほぼ同時に刻まれた。

岩の装甲に弾かれたように見え、傷らしい傷はついていない。

失敗か?

そう思った次の瞬間だった。

魔物がルドベックを迎え撃とうと振り向く。

一歩踏み出した、その巨体が大きく傾いた。

バランスを失った魔物は、鈍い地響きを立てながら片膝を石畳へつく。

「アスちゃん! 合わせるから!」

後方からローレルの声が飛ぶ。

その一言を合図に、地面を力強く蹴った。

片膝をついた魔物との距離を一気に詰める。

その時、後方のローレルから水色に輝く光弾が一直線に飛来した。

避ける間もなく、その光は剣へ吸い込まれるようにぶつかり、音もなく溶けて消える。

刹那。

木行を宿していた刀身が、さらに強く輝いた。

剣に宿る魔力が強くなっている。

水生木。

ローレルが言っていた相生の力か。

相生の関係を肌で実感した時、全身へ高揚感が駆け巡った。

そのまま高揚感を剣に乗せ、魔物へ一直線に突っ込む。

しかし、相手も黙ってはいない。

片膝をついたまま巨体を無理やりこちらへ向ける。

砕けた岩が軋む音を響かせながら、残った腕を構え、迎え撃つ姿勢を取った。

互いの距離が、一瞬でゼロへ縮まる。

「はぁっ!」

魔物が振り下ろしてきた右拳へ、真正面から剣を振り抜く。

一閃。

岩の腕は抵抗する間もなく切断され、宙を舞った。

その勢いを殺さず、返す刃で斬り上げる。

狙うのは残った左腕。

だが、魔物は咄嗟にその腕を自らの首へ巻きつけ、防御の姿勢を取った。

「っ!」

まるで人間のような判断だった。

一瞬、その知性に息をのむ。

それでも迷わない。

剣を握る手へさらに力を込め、そのまま腕ごと首を断ち切ろうと振り抜いた。

ギギギッ

刃は岩を削りながら食い込んでいく。

しかし、首の半ばまで達したところで、ぴたりと止まった。

「しまっ」

慌てて剣を引き抜こうとする。

だが、深く食い込んだ刀身はびくともしない。

その時だった。

魔物の口元が、にやりと笑ったように見えた。

視線を落とす。

切り落としたはずの右腕が、いつの間にか再生している。

しかも、その腕は風船のようにみるみる膨れ上がっていた。

まずい。

この距離じゃ避けられない。

剣を捨てて飛び退くべきか

そう判断しかけた、その瞬間。

「アスターちゃんって、本当にいい仕事するわね!」

聞き慣れた声が左から響く。

次の瞬間だった。

グラッドが砲弾のような勢いで横合いから飛び込んでくる。

「アスちゃんにだけ、いいと持っていかれるのって、なんか癪なんだよね」

その言葉とほぼ同時。

後方にいたローレルが指先を弾く。

赤と黄色、二つの光弾が一直線にグラッドへ飛び、拳へ吸い込まれるように溶け込んだ。

土行の光がさらに眩しく膨れ上がる。

「ふんっ!」

裂帛の気合いとともに、強化された拳が魔物の側頭部へ炸裂した。

ゴォンッ!

鈍い衝撃音が広場に響く。

次の瞬間、魔物の首が耐えきれず吹き飛んだ。

岩の頭部は宙を舞い、石畳を何度も跳ねながら転がっていく。

その拍子に、首元へ掛けられていた五芒星のネックレスが静かに地面へ落ちた。

それを最後に、魔物の巨体から力が抜ける。

ゆっくりと膝が崩れ、やがて轟音とともに石畳へ倒れ伏した。

魔物が倒れると同時に、広場一面を覆っていた木の根が役目を終えたようにゆっくりと地中へ沈んでいく。

静けさが戻った広場で、石畳に転がる五芒星のネックレスへ歩み寄る。

そっと拾い上げると、やはり見覚えのある半分の五芒星のキーホルダーが揺れた。

間違いない。

アグニスでカルタムに渡したものだ。

「…グラッド。これは、どういうことだ?」

静かな声で問いかけながら、ネックレスをグラッドへ見せ付けるように突き出した。

グラッドは答えようと口を開きかけた、その時だった。

「ご、ごめん! 遅くなっちゃった!」

息を切らしたスピレアが広場へ駆け込んでくる。

肩で大きく息をしながら、それでも皆の無事を確かめるように視線を巡らせていた。

その姿を見た瞬間、反射的にネックレスを背中へ隠す。

理由は自分でもわからない。

けれど、これはスピレアに見せてはいけない。

そんな気がしたんだ。

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