頂上
岩山の頂上には、街を見守るように一つの石積みの教会が建っていた。
灰白色の切石を幾重にも積み上げたその教会は、華美な装飾をほとんど持たず、長い年月を耐え抜いた風格だけを静かに漂わせている。
尖塔は空高く伸び、その先端には土の精霊を象徴する紋章が風を受けて輝いていた。
教会の正面には、大勢の人々が集まれるほど広い石畳の広場が広がっている。
その広場で戦いが繰り広げられていた。
「一体、何があったの?」
広場へ駆け込んだグラッドは、戦いを呆然と見つめたまま力なく座り込んでいる青年へ駆け寄る。
肩をそっと揺すると、青髪の筋肉質な男がゆっくりと顔を上げた。
カルタムの仲間、ベルベンだった。
「…姉御?」
焦点の定まらない瞳がグラッドを映す。
次の瞬間、震える手が戦場の中央を指差した。
「兄貴が…兄貴が…」
言葉にならない声だった。
グラッドは魔物へ視線を向け、苦しそうに目を伏せる。
「…魔物落ちしたのね?」
魔物落ち?
聞いたことのない言葉のはずなのに胸がざわつく。
ベルベンは何も答えられず、唇を噛んだまま何度も何度も頷くだけだった。
「大丈夫よ」
グラッドはベルベンの肩へそっと手を置き、優しく微笑む。
「ここからは、アタシたちに任せなさい」
そう言って、自分の胸を力強く叩いた。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
視線はすでに戦場へ向いていた。
「あの精霊術師たちに加勢するわよ!」
号令が飛ぶ。
ローレルと、遅れて追いついたルドベックが同時に武器を構えた。
その時、ふと気づく。
「スピレアは?」
振り返っても、石段の向こうに姿はまだない。
「待ってる時間なんてないわよ!」
グラッドは鋭く言い切った。
その横顔には、先ほどまでの穏やかさはない。
「…それに」
低く押し殺した声が続く。
「あの子が来る前に、倒さなきゃいけないのよ」




