表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/102

エヒメア

馬車の荷台でルドベックの説教を聞かされ続けること、丸一日。

翌日の昼前、ようやく目的地であるエヒメアの街が見えてきた。

エヒメアは、ツチガルド山の麓に築かれた岩の街だった。

目の前に広がるのは、巨大な岩山をそのまま削り出して造られた街並み。

石を積み上げた家はほとんど見当たらない。

山肌には無数の窓や扉が穿たれ、崖に沿って段々畑のように石造りの住居が連なっている。

まるで、一つの巨大な岩山そのものが街へと姿を変えたかのようだった。

さらに視線を上げる。

街の背後には、岩肌をむき出しにした雄大な山々が連なっている。

その中央でひときわ大きくそびえ立つのが、この地の象徴。

ツチガルド山だった。


街へ近づくにつれ、人々のざわめきが風に乗って聞こえ始めた。

何かあったのだろうか。

また祭りだといいな。

そんな楽観的な期待を胸に抱いていると、不意に馬車が止まる。

ガタンッ、と荷台が揺れた。

御者が街の門番らしき人物と二言三言言葉を交わしたあと、申し訳なさそうな表情で荷台の後ろへやって来た。

「旅の方々。街に魔獣が現れたそうです。この先は危険ですので、入らないほうがよろしいかと…。いかがなさいますか?」

その言葉を聞いた瞬間、スピレアが静かに立ち上がる。

胸元のネックレスが陽の光を受けてきらりと輝いた。

「私たちは精霊術師です」

穏やかな声だった。

だが、その瞳には揺るぎない覚悟が宿っている。

「魔獣が現れたのなら、討伐するのが私たちの役目です。どこにいるのか教えていただけますか?」

その言葉に、御者は目を丸くする。

やがてネックレスへ視線を落とすと、慌てて深々と頭を下げた。

「精霊術師様でしたか。これは大変失礼いたしました」

頭を上げた御者は、街の中心にそびえる巨大な岩山を指差す。

「あの頂上の広場で、すでに別の精霊術師様が魔獣と交戦しているそうです」

互いに顔を見合わせ、小さく頷いた。

次の瞬間、一斉に荷台から飛び降りる。

目指すは、岩山の頂上。

街中の喧騒をかき分けながら、広場へ向かって駆け出した。


息を切らしながら、長い石段を駆け上がる。

一段、また一段。

頂上が近づくにつれ、金属がぶつかる音と轟音が鮮明になっていく。

やがて視界が開け、広場が姿を現した。

その中央では、巨大な魔物と二人組が激しく交戦している。

魔物は人型だった。

しかし、その全身は岩の鎧のような硬質な外殻に覆われ、人とは思えない威圧感を放っている。

よく目を凝らす。

岩の隙間には、白と黒の衣服だったと思われる布切れが、上半身と下半身にかろうじて引っ掛かっていた。

まるで、人の内部から岩が出てきたような、不気味な姿だった。

その時だった。

魔獣の首元で、何かが陽の光を受けてきらりと光る。

赤色の魔石が一つ埋め込まれた五芒星のネックレスだ。

その先には、半分に割れた五芒星のキーホルダーが揺れている。

あれは…

胸がざわつく。

カルタムへ渡したはずのキーホルダーによく似ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ