表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/95

魔獣

精霊教会から逃げ出してくる人々の流れに逆らいながら、その場所へと辿り着いた。

目の前に広がっていたのは、初めて訪れた時の活気に満ちた街ではなかった。

あちこちで火の手が上がり、夜空を赤く染めている。

軒を連ねていた屋台は無残に破壊され、燃え盛る炎が残骸を照らしていた。

家々の壁は崩れ落ち、道には瓦礫が散乱している。

そして、この街の象徴である精霊教会までもが変わり果てていた。

屋根は大きく崩れ、かつて荘厳だった建物は、無惨な傷跡を晒している。


先に着いたカルタムが化物と対峙していた。

「カルタム! 加勢するぞ!」

カルタムの隣へ駆け寄り、化物と向き合う。

その化物は、巨大なゴリラのような姿をしていた。

だが、普通の獣とは明らかに違う。

黒く焼け焦げた岩のような皮膚。

その隙間からは赤く揺らめく炎が漏れ出し、まるで全身に灼熱の炉を抱えているようだった。

異様なまでに発達した両腕は、拳を握るたび熱気で空気を歪ませる。

背中には炎のたてがみが燃え上がり、陽炎のようにゆらゆらと揺れていた。

顔立ちはゴリラそのものの獰猛さを残している。

だが、その瞳だけは違った。

燃え盛る炎を閉じ込めたような真紅の双眸が、こちらを鋭く見据えている。

「あれ…何なんだよ?」

あまりにも異様な姿に、思わず足がすくんだ。

「魔獣さ。あいつが、この街を滅茶苦茶にしちまった。」

カルタムが奥歯をぎりりと噛み締める。

「それに、あいつは昔、俺を襲った魔獣なんだ。」

拳を強く握り締める。

「だから、ここは俺に任せてくれ。俺の手で決着をつけたい!」

カルタムの瞳には、揺るがない決意が宿っていた。

だが、どう見ても一人で勝てる相手には思えない。

「いや…あれを一人で相手するのは無理だろ?」

思わず否定する。

「昔、俺を救ってくれた精霊術師は、一人であいつに勝ったんだ!」

カルタムは力強く叫ぶ。

「俺は、その人を超えることを目標にしてきた! だから頼む! 俺一人で戦わせてくれ!」

その言葉からは、長年抱き続けてきた憧れと覚悟が痛いほど伝わってきた。

それでも、不安しかない。

「それによ。」

カルタムはニヤリと笑う。

胸元の五芒星のネックレスを親指で弾いた。

「俺は、御業を授かっているんだぜ?」

その笑みには、確かな自信があった。

そして、こちらの返事を待つことなく、足元で爆炎を弾けさせ、その反動で魔獣へと飛び掛かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ