筋肉
「むむっ! 姉さん、良い筋肉をしているな! ふんっ!」
男は目を輝かせると、グラッドの前でダブルバイセップスを決め、隆々とした腕を見せつけた。
この世界の人間は、なぜこのオカマを迷いなく女性として認識できるんだ?
世界の理の違いに、思わず首を傾げる。
「あら。そういうアナタだって、良い身体してるじゃない。ふんっ!」
グラッドも負けじとサイドトライセップスを決める。
互いの筋肉を見比べる二人の間に、妙な緊張感が走った。
「俺は、カルタムだ。」
「アタシは、グラッドよ。」
ガシッ。
固く握手を交わした瞬間、二人は満足そうに笑みを浮かべる。
まるで、長年会えなかった戦友と再会したかのような、どこか通じ合った表情だった。
「行こうか! 姉御!」
「そうしましょう。姉弟!」
意気投合した二人は肩を並べ、そのまま街の奥へと消えていく。
「…はっはーん。いただきー。」
背後から聞こえたローレルの声に振り返る。
いつの間にか、ローレルがルドベックの腰から剣をすらりと抜き取っていた。
「何をする、貴様!」
ルドベックが慌てて手を伸ばす。
しかし、ローレルはひらりと身をかわし、剣を抱えたまま楽しそうに笑った。
「いやー。あーし、ルドちゃんの武器、一回見てみたかったんだよねー。」
猫じゃらしを振るように剣を揺らし、そのたびにルドベックが右へ左へと振り回される。
「貴様!剣は騎士の魂だぞ!早く返さんか!」
「やだよー。返してほしかったら、ここまでおいでー。」
軽やかに笑いながら駆け出すローレル。
「待たんか!」
ルドベックもすぐさま追い掛け、二人は賑やかな人混みの中へ消えていった。
「じゃあ、私たちも行こうか。ね?」
スピレアが自然と俺の手を取る。
返事をする間もなく引っ張られ、思わず苦笑する。
「…そうだな。」
祭りの熱気に包まれた街へ、一歩足を踏み入れた。




