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共闘

「おい、不審者。貴様、なめられていないか?」

剣を構えたルドベックが、こちらを見つめるクロマルを横目に言った。

「騎士様が思ったよりも弱いからじゃございやせんか?」

「やっぱり、貴様から叩き斬ってやる!」

互いに安い挑発に乗り、一瞬だけクロマルから視線を外す。

その隙に火球が一直線に飛来する。

「またそれか」

所詮は獣だ。

芸のない攻撃だと思い、水球を放って難なくかき消す。

しかし、それこそが狙いだった。

立ち上る蒸気の向こうから、黒い影が弾丸のように飛び出す。

「っ!?」

気づいた時には遅かった。

クロマルの体当たりが胸を捉え、俺の身体は宙へと弾き飛ばされる。

地面を一度、二度と転がり、ようやく勢いが止まった。

追撃の気配が迫る。

だが、その瞬間、銀色の剣閃が横から割って入り、ルドベックがクロマルを弾き返した。

「…なんで俺ばっか狙うんだよ」

理不尽な標的選びに心の声が思わず漏れる。

そして、土を払って立ち上がった。

「獣以下の知能だな」

「うるせぇ!」

無数の水の刃を放つ。

地面を抉りながら飛ぶ斬撃を、クロマルは楽しげに跳び回り、紙一重でかわしていく。

「無闇に魔法を使うな! 頭を使え!」

「使っている! 水生木だ!」

水の流れを操り、周囲に風を生み出す。

ゴウッ、と風が渦を巻き、クロマルの身体を包み込んでいく。

空中へ浮かせれば、動きは封じられるはず!

と思った時だった。

「…愚か者。木生火だぞ?」

ルドベックの呆れた声が耳に届く。

次の瞬間。

轟音とともに、炎が風を喰らった。

風の渦は一瞬で火炎の竜巻へと姿を変え、灼熱の牙を剥いて暴れ始める。

さらに、竜巻の中から火球が次々と撃ち出された。

「敵に力を貸してどうする、この愚か者!」

「初めての実戦なんだから仕方ないだろ!」

飛来する火球を避けながら、ルドベックと並んで後退する。

熱風が肌を焼き、背後では火炎の竜巻が地面を舐めるように迫ってくる。

「このままではジリ貧だ。この先の手も考えているんだろうな?」

「…ごめん。」

「何の謝罪だ!」

答えられなかった。

作戦など何一つ思い浮かばない。

火球を避け、火炎の竜巻から逃げる。

ただ、その場しのぎを繰り返すしかなかった。

横目に映るルドベックの表情にも、焦りの色が浮かび始めていた。

「このままでは、まとめてやられるだけだ。散るぞ!」

ルドベックと一瞬だけ視線を交わし、互いに頷く。

次の瞬間、左右へ弾かれるように駆け出した。

案の定、クロマルは迷うことなくこちらを狙ってくる。

火球が一直線に迫る。

俺は咄嗟に水の壁を展開し、正面から受け止めた。

轟音とともに蒸気が立ち込める。

ルドベック…何か策があるんだよな…

そう願った、その時だった。

水の壁を越えるように、小さな火球がふわりと頭上へ浮かぶ。

「え…?」

違和感に気づいた瞬間

ドォンッ!

爆発が視界を真っ白に染め、衝撃により吹き飛ばされた。

「かはっ!」

背中から何かに激突し、肺の空気が一気に押し出される。

「アスターちゃん、大丈夫?」

聞き慣れた声。

グラッドが受け止めてくれていた。

「…すまない」

すぐに体勢を立て直し、再びクロマルへ向かおうとする。

だが、グラッドが肩に手を置いて制した。

「待って。ちょっとだけ交代できないかしら?」

グラッドは燃え盛る火炎の竜巻へ目を向ける。

その口元が、獰猛な笑みを浮かべた。

「アタシ、熱い戦い…大好きなの」

その表情を見たら分かった。

何か策がある。

「任せた!」

背中合わせに立ったまま、互いに反対方向へ踏み出す。

身体を反転させて、そのままナルシサスのもとへ駆け出した。

「はーい、アスちゃん。邪魔になるからストップ、ストップ。ちょいちょい。」

ローレルが人差し指をくいっと曲げ、こちらを呼ぶ。

足を止め、その隣へ駆け寄った。

「アスちゃんさー。先のこと考えて戦ってるわけ?」

ローレルは軽い口調のまま、地面から次々と水の槍を生やし、ナルシサスを牽制していく。

「水生木って発想は悪くないんだけどさー。それだけじゃ足りなくなーい?」

ニヤリと笑う。

次の瞬間、水流が渦を巻き、風を生み出す。

ゴウッ!

竜巻がナルシサスを包み込んだ。

「俺様のパワーアップに感謝する。」

ナルシサスは笑いながら火炎の竜巻をその身に纏う。

「ローレルも俺と同じじゃないか!」

「チッチッチッ。」

ローレルは余裕たっぷりに左手の人差し指を振る。

その指先には、いつも付けているはずのネイルがなかった。

「アスちゃんは甘いなぁ。激甘。」

勝ち誇ったように笑いながら、種明かしをする。

「火生土。あーし、ネイルが武器だって言ったっしょ?だからさー。さっき竜巻の中に投げ込んどいたんだよねー。」

言葉が終わるのと同時に、火炎の竜巻が轟音を立てて土へと変質する。

渦巻く土砂がナルシサスを飲み込み、圧縮されるように丸まり、一瞬で巨大な土の球体となった。

「アスちゃんさー、もっと頭使って戦わないと。」

ローレルが自身のこめかみを人差し指でちょんちょんと突き、いたずらっぽく笑う。

このギャル、賢い!?

賢さでギャルに負けてしまって悔しさもあった。

気を取り直して、視線をクロマルへ向ける。

いつの間にか火炎の竜巻は消え、グラッドとルドベックが左右から挟み込むようにクロマルを翻弄していた。

♪♪

突然、電子音が戦場に響く。

「ナルシサス、電話よ! 早く出なさい! ナルシサス、電話よ! 早く出なさい!」

土の球体の中から、フランネルの声を無理やり録音したような荒々しい着信音が鳴り響く。

場違いな音に、一瞬だけ空気が止まる。

数秒後。

ズバッ!

土の球体が両手剣で真っ二つに裂かれ、ナルシサスが悠々と姿を現した。

「クロマル!フランちゃんが撤退だって。帰るよ。」

それだけ言うと、ナルシサスは戦場に未練もなく背を向ける。

クロマルも嬉しそうに尻尾を振りながら、その後をとことこと追い掛けていった。

「追わないでおこうよ。面倒だし。」

俺が一歩踏み出したところで、ローレルが肩を掴み、あっさりと制止した。

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