剣の名前
ひどい目に遭った……。
よく言えば、剣術とは何なのか、身をもって学ばされた。
地獄のような時間を、今回もギリギリのところで耐え抜いた。
これで、ある程度の魔法と剣を使った戦い方は学べたと思う。
ルドベックとローレル。
あの二人の辞書には、手心という言葉はないのか?
満身創痍の身体で、剣を杖代わりにしながらスピレアの元へ戻る。
「おい、不審者。貴様、何を学んだんだ?」
戻って早々、ルドベックがイラッとした問いかけてきた。
なんだ?
授業内容の復習でもするつもりか?
「剣の使い方を学ばせていただきました」
ここで余計なことを言えば、また地獄が始まる。
直感がそう告げる。
だから、素直に答えることにした。
少し嫌味を込めて。
「だったら、なぜ剣を杖にするんだ! 愚か者!」
突然、ルドベックが怒鳴った。
「剣は相棒だぞ! もっと愛を持って接しないか!」
ああ。
剣を杖にしていたことに怒っていたのか。
確かに、この剣は貰い物だ。
雑に扱っていたのは悪かったかもしれない。
愛を持って接する、か。
無機物に愛情を注ぐ趣味はないが……名前でも付ければ、多少は愛着が湧くかもしれない。
「悪かったよ。シロード」
ルドベックに言われたことを反省し、剣を杖の役目から解放する。
先端についた土を払い落としながら、剣へ向けて謝罪した。
「シロード? なんだそれは?」
ルドベックが眉をひそめる。
「剣の名前だが?」
疑問に答えると、ルドベックの表情がさらに険しくなった。
「何だ、そのこの世の終わりみたいなネーミングセンスは!」
ルドベックが再び怒鳴った。
「…じゃない。愛を持てとは、そういう意味ではないんだ!」
自分が言いたいこととズレていることに気がついたのか頭を振る。
そして、いつも通り激怒する。
「白い剣だからシロードだ! 分かりやすくて、かっこいいだろ!」
我ながら悪くない名前だと思っている。
ゆえに、馬鹿にされると腹が立つ。
ドヤ顔で解説してやった。
「そんなことは分かっている!」
ルドベックが即座に返す。
「承知した上で、ネーミングセンスが終わっていると言っているんだ!」
怒りがさらに増している。
何だ?
怒ることが趣味なのか?
そう思っていると、スピレアが慌てて間に入ってきた。
「まぁまぁ、アスターも悪気があったわけじゃないんだから。ね? お昼ご飯にしよう?」
スピレアがルドベックを宥めてくれる。
ルドベックの相手はスピレアに任せるとしよう。
それにしても、アグニスまでは、まだ遠そうだ。




