目覚めの朝
「アスターちゃん! スピレア! 早く起きなさい!」
グラッドの声と、朝食のいい匂いに意識を引っ張られる。
昨日は遅くまで話し込んでいたせいで、まだ眠気が残っていた。
大きな欠伸をして、寝ぼけた目を擦る。
その時だった。
「ねぇ、アスちゃん」
耳元で、突然声が響いた。
「昨晩は、スピちゃんと何してたの?」
「っ!?」
心臓が飛び出るかと思った。
振り返ると、そこにはニヤニヤと笑うローレルがいた。
誰にも気づかれていないと思っていたのに。
「な、何もしてない!」
「な、何もしてないよ!」
偶然にも、スピレアと同時に声を上げる。
しまった。
これでは、逆に何かあったと言っているようなものではないか。
ちらりと見ると、スピレアはグラッドに同じことを聞かれていたらしい。
「で?」
低い声が響いた。
「何をしていたんだ? 不審者」
ルドベックが満面の笑みを浮かべて立っている。
ただし、目はまったく笑っていない。
まずい。
このままでは昨日に続いて誤解される。
「スピレア!」
助けを求めるように声をかける。
「昨夜は、本当に少し話をしていただけだよね!?」
本当に、それだけだった。
だから、スピレアが「うん」と言ってくれれば終わる。
しかし。
「えー…」
スピレアは少し考えるように首を傾げる。
そして、頬を赤く染めながら。
「秘密…かな?」
そう言った。
「…」
空気が止まった。
「ほう」
ルドベックの笑顔が深くなる。
「ずいぶんと楽しい夜を過ごしたようだね」
次の瞬間。
首根っこを掴まれた。
「ちょっと待て!」
この展開、昨日も見た気がする。
「ルドベック! 本当に何もしていないんだ!」
必死に訴える。
「スピレア! 頼むから誤解を解いてくれ!」
しかし。
「…何もなかったなんて、ひどい」
スピレアは頬を膨らませ、そっぽを向いた。
「もう、知らない」
なぜか怒られた。
「頼むから誤解を解いてくれ!」
声を上げても、スピレアは振り向いてくれない。
「旅に浮かれた貴様には、まだ覚悟が足りないようだな」
ルドベックが笑顔で言う。
「今から、教えてやる」
「待て! 待ってくれ!」
そのまま人目につかない場所へ拉致される。
「行ってらー」
ローレルはあくびをしながらひらひらと手を振った。
「あーしは、もう一眠りしておくね」




