グラッドの過去(グラッド視点)
アタシは、後悔と向き合うために、エヒメアにあるツチガルド山で修行をしていたわ。
そんなある日。
派手なネイルに、お洒落な服装の少女と出会ったわ。
「あー、もしもーし。この辺で、グラちゃん……じゃなかった。グラッドさんっていう寡黙な男性がいるって聞いたんだけど、何か知らない?」
その不思議な少女は、あまり期待していない様子で尋ねてきた。
どうやら、アタシを探しているらしい。
こんな子、知り合いにいないはずだけど…。
不審に思いながらも答える。
「グラッドなら、アタシよ」
自分を指差して答えた。
「あーうん。やっぱし、知らないかー。ありがとね」
そう言って、彼女は立ち去ろうとする。
「だから、アンタが探してるグラッドはアタシよ!」
思わず大きな声で呼び止めた。
「…えっと、ごめんごめん。聞き間違いかもしれないから、もう一回お願い」
少女はぴたりと足を止める。
信じられないという顔で、ゆっくり振り返った。
失礼しちゃうわね。
「アタシが、グラッドよ」
親指で自分を指し、堂々と言い切る。
「あ…えっ…?」
少女は口をぱくぱくさせながら、まるで化け物でも見るような目でアタシを見てきた。
「何よ。文句ある?」
流石のアタシも、少しムッとして言い返した。
「…ふぅ。ごめんごめん」
少女は一度深呼吸すると、気持ちを切り替えるように話し始めた。
「ルドちゃんにも伝えたんだけど、スピちゃんが精霊術師の旅に出るってよ」
ルドちゃんって、おそらくルドベックちゃんのことよね。
それに、スピちゃんって…スピレア?
アタシのことも探していたみたいだし、この子は何者なのかしら。
そう思ったけれど、今は細かいことを聞いている場合じゃない。
「いつ出発するの?」
今は情報が欲しかった。
「あー、約一週間後だよ。ルドちゃんも向かってるよ」
少女は飄々とした口調で答えた。
まるで、少しずつ情報を小出しにして、反応を楽しんでいるみたいだった。
スピレアの出発まで、あまり時間がない。
動揺を悟られないように、落ち着いて尋ねる。
「ルドベックちゃんが向かっているっていう根拠は何かしら?」
「昨日、会ったからだよ」
少女はニヤリと笑った。
昨日?
ルドベックちゃんがいるのはパウロのはず。
どれだけ距離があると思っているの?
ますます怪しい。
でも、スピレアが旅立つことも。
その日付も。
きっと、この子は嘘をついていない。
そんな気がした。
乙女の勘、ってやつかしらね。
詳しく問いただしてみたけれど、スピレアの旅立ちまで時間がない。
だから、自分の直感を信じてこの子が言う事を信じることにしたの。
「分かったわ。アタシはバルダックへ帰るわ。アナタ、名前は?」
スピレアは、また一人で抱え込もうとしている。
だったら、アタシが支えてあげないといけないわ。
もう二度と、同じ後悔はしたくないもの。
「あーし? あーしはローレル。あーしも同行するから、これからよろしくね」
そう言って、ローレルは右手を差し出してきた。
五行の魔石を使ったネイル。
やっぱり、この子はただ者じゃない。
「綺麗なネイルね。アタシはグラッド。よろしくお願いするわ」
そう言って握手を交わし、アタシは一人、バルダックへの帰路についた。




