野営準備
ひどい目にあった…。
よく言えば、五行の魔法を身体で学ばされた。
地獄のような時間を生き抜き、ローレルと二人で戻ってきた。
「おっ待たせー。スッキリしたし、出発しよー」
爽快感マックスと言わんばかりの表情で、ローレルが軽快にスピレア達の元へ戻ってくる。
鬼、悪魔、クソギャル。
怖くて口には出せないので、心の中で罵る。
「きゅ、休憩を…」
膝が大爆笑している。
剣を杖代わりにしなければ、立っていることすらできない。
それでも何とかスピレア達の元まで戻り、そのまま地面へ倒れ込んだ。
「だ、大丈夫…?」
心配そうに声をかけてくれるスピレア。
「何をしているんだ。この愚か者」
ルドベックが呆れたように見下ろしてくる。
「アスちゃん、だらしなくなーい?」
スッキリした様子で、ローレルが笑いながら挑発してくる。
「はぁ…派手にやられたわね」
グラッドが呆れたようにため息をつく。
「仕方ないわ。少し早いけれど、今日はここで野営にしましょう。初日から無理をするのは危険よ」
やれやれと言った様子で、グラッドが気を遣ってくれる。
「はーい」
「あーい」
「分かった」
「…助かる」
グラッドの指示に、全員が従う。
「じゃあ、スピレアとローレルは薪の確保を。ルドベックちゃんと…アスターちゃんは…」
グラッドはこちらを見る。
そして、深いため息をついた。
「…はぁ。厳しそうね。ルドベックちゃんはアタシと食料調達に行きましょう」
どうやら、俺は戦力外らしい。
グラッドは気を遣って、当番から外してくれた。
「そうそう、ローレルは薪を集めたら火も頼んだわよ。」
「えー、あーしだけ多くなーい?」
そんなやりとりを聞きながら意識が途切れた。
太陽が沈み始め、辺りが茜色に染まる頃。
何とか復活できた。
何だか、以前にもこんなことがあった気がする。
少し頭が痛む。
だが、動くことにした。
「グラッド、すまなかった。手伝えることはあるか?」
何もしなかったことへの罪悪感はある。
だから、今からでも何か役に立ちたいと思った。
串に刺した肉を焼きながら、汁物の準備をしているグラッドへ声をかける。
「うーん? アタシを癒やすことくらいかしら?」
どうやら、何もないらしい。
気は重いが、ルドベックなら何か仕事を与えてくれるだろう。
そう思い、グラッドに背を向けてルドベックの姿を探す。
「ちょっと、無視しないでよ。失礼しちゃうわね」
グラッドが何か言っている。
当然、無視だ。
「起きたのか。不審者」
ちょうどいいところに、ルドベックが戻ってきた。
意外にも怒ってはいない。
「怒っていないのか? それとも、具合でも悪いのか?」
いつものルドベックなら怒鳴り散らす場面だ。
それなのに、怒る気配すらない。
そのことに違和感を覚える。
そして同時に、ルドベックを心配した。
「貴様は、私をなんだと思っているんだ。手伝いもしない穀潰しが!」
よかった。
いつものルドベックだ。
「遊んでないで食事にするわよ」
グラッドから声がかかる。
何もしていなくても腹は減る。
怒れるルドベックを無視して、焚き火の前へ向かう。
「不審者! まだ話は終わっていないだろう!」
ルドベックが何か叫んでいる。
当然、無視だ。
「だいたい、貴様というものは…」
ブツブツと小言を並べながら、ルドベックも焚き火のそばへやってくる。
とても面倒だ。
だから、小言を遮るために話題を提供した。
「そういえばさ。ルドベックは、どうやってスピレアが旅立つことを知ったんだ?」




