期待外れ
「グラッドさんの家に行くの、久しぶりだなぁ。何年ぶりかな?」
スピレアが楽しそうにグラッドへ話しかける。
どうやら二人は、かなり昔からの知り合いらしい。
「着いたー!」
スピレアが、じゃーんと言いたげに両手を広げる。
その先にあったのは…
テント。
いや、正確には移住民族が使うゲルのような建物だった。
…どういうことだ?
辺りを見回す。
ショッキングピンクの壁。
大量の花柄。
謎の乙女グッズ。
そんなものはどこにもない。
「グラッドの家はどこ?」
「グラちゃんの家は?」
偶然にもローレルと声が重なった。
どうやら、考えていることは同じらしい。
ローレルも不思議そうに辺りを見回している。
「はぁ…」
グラッドが大きなため息をついた。
「アンタ達、アタシのことを何だと思っているのよ。この白い建物がアタシの家」
呆れたように言いながら、ゲルのような建物を指差す。
「えー…」
「えー…」
またしてもローレルと声が重なった。
仕方ないだろう。
寡黙な遊牧民が住んでいるなら分かる。
しかし、筋骨隆々のオカマが住んでいる家には到底見えない。
きっとローレルも同じ気持ちのはずだ。
正直に言えば…少し期待外れだった。
「アンタ達、本当に仲良いのね。まぁいいわ。中に入ってらっしゃい」
呆れ顔のグラッドが先に中へ入っていく。
「お邪魔しまーす」
スピレアが楽しそうについていく。
「邪魔するぞ」
ルドベックも続いた。
…まだ諦めるな。
きっと問題は中身だ。
外見が普通でも、内部はきっと…
期待を込めてローレルを見る。
ローレルもこちらを見る。
そして、二人で無言のまま頷いた。
まだ、希望は捨てていない。
意を決して中へ入る。
そこに広がっていた光景は…
想像の真逆だった。
家具らしい家具はほとんどない。
あるのは、タンス。
ちゃぶ台。
そしてベッド。
それだけだった。
「なんで…」
「なんで…」
ローレルと二人、膝から崩れ落ちる。
「何をやっているのよ。馬鹿なことしてないで座ってなさい。すぐ準備するから」
そう言ったグラッドは、大きなくまさんの描かれたエプロンを身につけていた。
…エプロン。
しかも女性物らしい。
グラッドの体格には少し小さく見える。
そこだけは期待を裏切らなかった。
「おぉ…」
「おぉ…」
思わずローレルと顔を見合わせる。
そして、二人で無言のハイタッチをした。
「はぁ…変な子達ね」
グラッドは呆れたように笑いながら、炊事場へ向かう。
どうやら料理を作ってくれるらしい。
少し不安ではある。
だが、ここは任せよう。
「そういえばさ」
ちゃぶ台の前に座り、ふと気になったことを聞く。
「四人って、どういう関係なの?」




