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目覚めと看病

ここは…どこだ?

辺りはぼんやりとしていて、景色がはっきりしない。

見覚えがあるようで、まったく知らない場所だった。

足音が聞こえる。

一人…いや、二人か。

「誰だ?」

警戒しながら声をかける。

「えっ…嘘? どうして、ここに居るの?」

檸檬色の長い髪に、黄緑色の瞳をした女性が目を丸くしていた。

…どこかで見たことがある。

そうだ。

昼間に出会ったフランネルによく似ている。

そう思った瞬間、意識が浮かび上がった。


「ここは…?」

ゆっくりと目を開ける。

ルドベックと決闘をしていたところまでは覚えている。

そこから先の記憶がない。

辺りを見回すと、どうやら教会の一室らしい。

不思議な夢を見たせいか、少し頭を冷やしたくなった。

気分転換に散歩でもしよう。

そう思ってベッドを降り、部屋の扉を開ける。

その瞬間だった。

「ひぃっ!」

扉の前にいたスピレアが、小さく悲鳴を上げる。

頭を守るように身を丸め、肩を震わせていた。

急に扉が開いて驚かせてしまったらしい。

恐る恐る目を開けたスピレアが、こちらを見る。

「あれ…? アスター?」

次の瞬間。

「アスター!! 元気になったの!?」

勢いよく抱きついてきた。

情けないことに受け止めきれず、そのまま二人そろって尻もちをつく。

「いてて…。ああ、元気になったよ」

胸に顔を埋めるスピレアへ短く答える。

「あっ…ご、ごめんなさい!!」

慌てて顔を上げたスピレアと目が合う。

みるみるうちに頬が赤く染まっていく。

…あっ。

この流れ、どこかで見たことがある。

覚悟を決め、ぎゅっと目を閉じた。

歯を食いしばる。

しかし。

いつまで経ってもビンタは飛んでこない。

恐る恐る目を開けると、スピレアは少し距離を取り、おろおろとしていた。

気まずい沈黙が流れる。

「えっと…アスター、何してるの?」

不思議そうにスピレアが尋ねてくる。

「ビンタに備えてる」

端的に答えた。

「もう…意地悪なんだから」

スピレアは恥ずかしそうに頬を膨らませる。

「温泉の時は、ごめんなさい」

少し怒ったような、それでいて申し訳なさそうな声だった。

どうやら今回は大丈夫らしい。

ほっと胸をなで下ろす。

「気にしてないよ。それより、スピレアはこんな時間にどうしたの?」

立ち上がって服についた埃を払う。

「えっと…その…アスターのお見舞い?と言うか、看病…かな?」

スピレアは俯き、指先をもじもじと動かしながら答えた。

お見舞い。

看病。

…そうか。

ルドベックに負けたんだな。

しかも、かなり派手にやられたらしい。

気絶した瞬間の記憶がないのは、不幸中の幸いか。

普段は記憶がなくて困るのに。

そんなことを思い、苦笑する。

「もう元気だから大丈夫だよ。ありがとう」

素直に礼を言う。

「それより、少し外に出ない?」

「うん! 行く!!」

スピレアはぱっと表情を明るくし、元気よく頷いた。

こうして二人で、夜の教会を後にした。

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