決闘2
「あいにくだけど、俺はこっちのしきたりなんて知らないからな!」
木剣を強く握り締める。
そして、力いっぱい地面を蹴った。
身体が軽い。
まるで、自分の身体ではないようだった。
どれだけ力を込めても壊れない。
どれだけ速く動いても身体がついてくる。
そんな万能感に、一瞬だけ包まれる。
だが、力加減を間違えた…
「まずい」
そう思った時には、もう遅かった。
ルドベックに突っ込む。
そう思った瞬間。
ルドベックは、まるで最初から分かっていたかのように身体を横へ流した。
そして、俺はそのまま地面へ突っ込んだ。
「なんだ? 不審者。それがお前の世界のしきたりか?」
倒れた俺を見下ろしながら、ルドベックが小馬鹿にしたように笑う。
そんな世界のしきたりがあってたまるか。
俺は土を払いながら立ち上がる。
どうやら、この身体はかなり強化されているらしい。
転生ボーナス。
そう考えると納得できる。
ありがたいことだ。
しかし、身体の性能に頼るだけでは駄目らしい。
今度は少し力を抑える。
「そんなわけないだろ!」
再びルドベックへ向かう。
上から下への斬り下ろし。
右下から左上への斬り上げ。
横薙ぎ。
思いつく限りの攻撃を繰り出す。
しかし、届かない。
全て、ルドベックは涼しい顔で受け流していた。
「…ただの一般人だな」
ルドベックが呟く。
安心したような、少し残念そうな、そんな顔だった。
その言葉に少しだけ腹が立つ。
だが、同時に分かっていた。
こいつは手加減している。
そのおかげで、少しずつ身体の動かし方が分かってきた。
なら、少し試してみるか。
「じゃあ…こういうのはどうだ?」
攻撃の形を変える。
ただ斬るだけではない。
突き。
誘い。
フェイント。
相手の反応を見ながら、攻撃の組み立てを変えていく。
その瞬間、ルドベックの表情が変わった。
わずかに曇る。
いける!
そう思った。
「さっきまでの余裕はどうした?」
少し調子に乗って挑発する。
「ルドベックさんよ!」
「…」
ルドベックは答えない。
ただ、こちらを見ていた。
値踏みするような目。
何かを探しているような目。
何を見ている?
何を考えている?
だが、今は考える時間じゃない。
攻める。
その時だった。
分かった!
ここだ!
今なら届く!
この一瞬なら。
…剣は、ルドベックの首元まで届く。
理由は分からない。
ただ、身体が理解していた。
「もらった!」
軽くフェイントを入れる。
そして、確実に決めにいく。
そう思った瞬間。
カンッ。
木剣が弾き飛ばされた。
「え?」
次の瞬間。
顎に衝撃が走った。
視界が大きく揺れる。
空が見えた。
「ルドベック!」
スピレアの驚きと怒りが混じった声が聞こえる。
落ちる身体を誰かが受け止めた。
焦点が合わない。
しかし、その感覚には覚えがあった。
「大丈夫よ。安心しなさい」
グラッド。
やっぱり、お前か。
助かった。
そう思った。
だが、声が出ない。
そして、そこで意識が途切れた。




