仲間の紹介
「ふわぁ。」
スピレアに促される形で部屋の外に出る。
あくびをしながら歩いているとちらりと窓の外の風景が視界に入る。
一面の木々。
何もわからん。
昨夜の暗く、民家の明かりも少ない光景。
月明かりを頼って歩く土の道。
おそらく田舎だろうと考えつつ教会を出る。
教会の前には、
こちらに嬉しそうに手を振るスピレア
表情は読めないがやる気なさそうに手を振るギャル
大欠伸をするグラッド
腕を組み敵意むき出しといった様子で睨見つけてくるルドベック
昨日、会った4人が集合していた。
昨日は気が付かなかったがルドベックの頬にはあざがある。
腕力。
そんな事を考えていると昨日のグラッドとの会話の一部が蘇る。
あぁ、話術ではなく本当に腕力だったのだな。
察しが付いたので哀れみの視線をルドベックへ送りつつ4人の輪に入る。
「じゃあ、改めて自己紹介ね。私は、精霊術師のスピレア。うーん、五行の魔法全部使えるよ。」
スピレアが口を開いて自己紹介をしてくれる。
少し考え事をして自分ができることを教えてくれる。
ありがたい。
でも、五行?
あまり馴染みのない単語に眉をひそめる。
「そういう感じ?じゃあ、次は、あーし。ローレルって言うよ。魔法使いって奴であーしも五行使えるよ。」
何かを察したかのように独り言を呟いたギャルが手を挙げて自己紹介をする。
ローレルの紹介でも出てきた五行。
何かキーワードなのか?
と深まる疑問に首を傾げている。
「じゃあ、次はアタシ。知っていると思うのだけどアタシは、グラッド。モンクをやっているわ。魔法に関しては、ヒ・ミ・ツ。ちゅっ。」
流れのままグラッドが自己紹介をする。
自己紹介の終わり際、ウインクと投げキッスがこちらへ飛んでくる。
緊急事態だ。
慌てて身を翻し、投げキッスを避ける。
「傷つくわー。」
「何それ。ウケるー。」
「ふふふ。」
一連のやりとりにある者は傷つき、ある者は笑うそんな状況に陥った。
和気あいあいとした空気の中、ルドベックが手を挙げる。
「私は、ルドベック。元騎士だ。」
そして、こちらを睨んだまま短く自己紹介をした。
スピレアが、君は?と言いたげな視線を寄せてきた。
その視線に後押しされる形で手を挙げた。
「えっと、俺は、ア、アスター。その、とにかく、よろしく。」
ただの自己紹介。
しかし、話せることが名前くらいしかない。
そんな状況にテンパった。
「なんだ?それだけか?魔法は?体術は?剣技は?仲間になるというなら全部とは言わん。前衛か後衛か判断できる位のことは話してほしいものだが。それても、仲間になりたくないのか?」
ルドベックがこちらを睨んだままそう言った。
確かに彼の言うとおりだ。
得体のしれない人間を仲間にしたいとは思わない。
しかし、全部わからないのだ。
自分だけ自分のことを何も知らないそんな無力感に落ち込んだ。
「…分からないんだ。」
自身無く俯いて小声で答えた。
「何?分からない?隠したいの…」
「おーい、ルドベック。きちんと村の見張りをしてくれないと困るよ。」
ルドベックが怒声にも似た声で詰め寄ろうとした。
その威圧感に身体がビクリと震える。
その時、どこからともなくおっさんが走ってきた。
おっさんは、ルドベックの腕を掴むとどこかへ引っ張っていこうとする。
どうやらルドベックは村の見張りをサボっているようだ。
「見張り番?どういう事だ?」
ルドベックが鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして仲間たちの顔を見回して説明を求める。
グラッドは目をそらし口笛を吹き、
スピレアは忘れてたと言いたげな表情を浮かべ、
ローレルはこの場の空気を愉しんでいるようだ。
「どういう事も何も昨晩、そこのオカ…お姉様が大暴れして今日の見張り番が怪我をしちまったんだよ。だから、スピレア様に相談したところ、ルドベックお前がその番をやってくれるって言うから。こう迎えに来たのさ。」
おっさんが説明をした。
説明途中でオカマと言いそうになった時、グラッドが「あぁん?」と般若のような表情で睨みつけて訂正させた。
どうやら、グラッドは俺を解放するためにルドベック以外にもしばき回っていたようだ。
「そんな話、私は知らないぞ。だいたい、そのオカm…いや、お姉様が悪いんじゃないか。」
引っ張っていこうとするおっさんに抵抗しつつルドベックが抗議する。
途中でオカマと言いそうになった時、再びグラッドが「あぁん?」と般若のような表情で睨みつけて訂正させた。
ルドベックの言う事は正論でしかない。
暴れ回ったお姉様が立つべきでは?
などと考えていると
「ルドベック、お願い。貴方しか頼れる人居ないの。」
スピレアがルドベックの前に行き、拝むようなポーズをしてそう言った。
「うっ…。スピレアがそう言うなら…。場所を案内しろ。」
ルドベックが一瞬ひるむ。
そして、少し不満そうではあるがおっさんと共にこの場を去った。
こいつ、チョロい。
おそらく、グラッドとローレルも同じ事を思ったはずだ。
そして、スピレア、恐ろしい女だ。
「ルドベック、頑張ってー!!」
スピレアがルドベックの背中に手を振りながらエールを送る。
ルドベックの上機嫌そうな雰囲気が背中越しながらに伝わってくる。
あれは重症だ。
「さてと。何も分からないんだったらさ。魔法適性だけでも見てみない?」
ルドベックを見送ったスピレアが振り返ってそう提案してきた。




