着岸
「着いたけど、もう少し待ってね」
フランネルはそう言うと、崖の近くまで船を移動させた。
言われた通り大人しく待っていると、周囲に映し出されていた景色が、ゆっくりと下へ流れ始める。
「…え?」
どうやら、船そのものが空中へ浮かび上がっているらしい。
「なんでもありかよ…」
思わず苦笑しながら呟いた。
しばらくすると、船は静かに高度を下げ始めた。
そして、
「じゃあ、降りましょうか」
フランネルが操縦席から立ち上がる。
「そうだね」
ナルシサスが一言だけ返すと、立ち上がって出口へ向かって歩き始めた。
その後を追うように、フランネル、グラッド、スピレア、俺、そして疲れ切ったルドベックも続く。
こうして俺たちは、船内を後にした。
船を降り立つと、
プシュッ!
と小さな音がした。
「…?」
音のした方を振り返ると、先ほどまで伸びていた渡り板が、無音のまま船体へと収納されていく。
そして
ジジ…
という機械音と共に、船が徐々に透けていき、やがて完全に姿を消した。
「船はここに停めておくのか?」
何気なくフランネルに尋ねる。
「船なら勝手に帰るわよ」
フランネルは、さも当然のことのように答えた。
「勝手に…?」
「そうよ。自動操縦装置が付いているの」
フランネルは、それがどうしたと言わんばかりの態度で説明する。
「…」
そんなハイテク技術を、説明だけで納得することはできなかった。
そこで俺は、足元に落ちていた石を拾い上げると、船が消えた辺りへ向かって投げてみた。
石は何にもぶつかることなく、そのまま崖の下へと落ちていく。
「何しているのよ…」
その様子を見ていたフランネルが、呆れたように呟く。
「いや…確かめたくて。つい…」
まさか石を投げているところまで見られているとは思わず、少し恥ずかしくなって誤魔化した。
「まぁ、いいけど…」
フランネルは小さくため息をつく。
「ここからは、歩いてサカリウムに向かいましょう」
気を取り直したように、フランネルが皆へ声をかけた。
「サカリウムまで、どのくらいかかるのかしら?」
グラッドが尋ねる。
「うーん…半日くらいじゃない?」
フランネルは少し考え込んだ後、そう答えた。




