野営
海辺に沿ってしばらく歩いていると、次第に日が傾き始めた。
「今日は、ここまでかしらね?」
フランネルが空を見上げ、太陽の位置を確認しながら言った。
「そうね。今日は、この辺りで休みましょうか」
グラッドもフランネルの意見に頷く。
「皆もいいわよね?」
振り返り、俺たちにも確認を取る。
「うん」
「ああ」
「そうしよう」
スピレア、俺、ルドベックが、それぞれ異論なく頷いた。
ふとナルシサスを見る。
ナルシサスだけが、肯定も否定もせず、こちらを眺めていたからだ。
「うん?」
視線が合うと、ナルシサスが不思議そうに首を傾げる。
「ああ、フランちゃんが言うことなら、俺様の意見も同じだぞ」
どうやら、俺の視線の意味を察したらしい。
何を当たり前のことを確認しているんだ、と言わんばかりの様子で答えた。
どうやら、異論はないようだ。
「じゃあ、野営の準備を始めよう!」
スピレアが嬉しそうに声を上げると、率先して準備を始めようと皆へ声をかける。
こうして俺たちは、六人で初めての野営の準備を始めた。
大人数になったことで大変かと思われた野営の準備は、拍子抜けするほどあっさりと終わった。
何より、ナルシサスがあまりにも器用だった。
そして、フランネルの指示も的確だった。
「ナルシサス、薪はある?」
「そう言われると思って、歩きながらちゃんと集めておいたよ!」
「ナルシサス、火を起こして」
「分かったよ、フランちゃん」
「ナルシサス、食材は?」
「一応、持ってきたけど…足りるかな?」
「私が持ってきている分も合わせて、食材を切ってちょうだい」
「任せてよ、フランちゃん。食材まで持ってくるなんて、本当に優しいんだね」
「…いいから手を動かす!」
「ごめんよ、フランちゃん。怒らないでよ」
…
二人のやり取りは、まさに阿吽の呼吸だった。
薪集めから火起こし、食材の下ごしらえ、料理、そして配膳まで、驚くほどスムーズに進んでいく。
もちろん俺たちも手伝った。
しかし、気がつけば作業の大半をナルシサスがこなしている。
「…凄いわね…」
その光景を眺めていたグラッドが、感心したように呟いた。
俺も同じ気持ちだった。
そんな野営準備だった。
食事を終え、皆で焚き火を囲んでくつろいでいた。
何気なく顔を上げると、スピレアと目が合った。
スピレアは嬉しそうに笑顔を向けてくる。
しかし、俺は慌てて視線を逸らした。
未だに、スピレアの目を見るのが怖かった。
「なあ、フランネル。どうして、アインシュ族と行動していたんだ?」
俺はスピレアの視線から逃げるように、フランネルへ話題を振った。
「あっ…」
スピレアが、小さく声を漏らす。
その切ない声が、胸をチクリと刺した。
「やっぱり気になるわよね…」
フランネルはそう呟くと、しばらく黙って考え込んだ。
そして、焚き火を見つめながら、真剣な表情で口を開く。
「仲間になったんだもの。フランちゃんとナルシサスの過去を教えてあげる」
唐突ですが、本日17時よりナルシサスの過去を描いた短編小説『僕の幸せな未来へ』を投稿いたします。
奴隷だったナルシサスが、フランネルと出会い、自分自身の未来を選択していく物語です。
もしナルシサスに興味を持っていただけましたら、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
また、フランネルの過去を描いた短編小説『私がフランちゃんになった日』も同時に投稿いたします。
こちらは、フランネルがナルシサスと再会し、新しい人生を歩んでいく物語です。
二人の過去を知ることで、本編でのナルシサスとフランネルの見え方も、少し変わるかもしれません。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
不定期ではありますが、これからも短編小説を書いていきたいと思います。
「このキャラクターの過去も読んでみたい!」というキャラクターがいましたら、ぜひ教えてください。




